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2020年5月22日(金)

“表現”への決意 行定勲監督に聞く

4月24日からインターネット上で公開されている映像作品「きょうのできごと a day in the home」。家から出ないで、我慢して自粛生活を送る若者たちのいまの様子が描かれています。出演しているのは、柄本佑さん、高良健吾さん、有村架純さんなど第一線で活躍する俳優たち。撮影は顔を合わさずにリモートで行われました。

製作したのは、ヒット作品を数多く手がけてきた映画監督の行定勲さんです。行定さんは5月17日にも同じ手法による作品「いまだったら言える気がする」を発表。映画界が新型コロナウイルスで大きな影響を受ける中、模索を続けています。行定さんは、4月と6月に公開する予定だった新作映画2作品がいずれも延期。さらに、熊本出身の行定さんが毎年ディレクターを務める「くまもと復興映画祭」も延期が決まりました。映画監督として行定さんはいま何を考えているのか、高瀬耕造キャスターが聞きました。

行定勲監督に聞く 自粛続く中での“表現”

Q:行定さんは新作映画の公開が延期されるという中で、リモートで作品を作られました。これはどういった思いからだったんでしょうか?

行定監督:
私自身の映画の新作の公開が延期になったり、私がディレクターを務めている『くまもと復興映画祭』がこれも延期になったりして、やっぱりちょっと落ち込んでいたと思うんですよね。そのままでいるのは不健全だなというふうに思って、いま映画監督としてできることは何かというふうに思って、企画を立ち上げました。外出自粛を頑張っている人たちを楽しませるような、応援できるようなものができないかなと思っているところで、よくみなさんがインターネットでリモート飲み会をしているということを聞いて、それを舞台にした作品なら自粛している方たちが共感できるような面白い作品が作れるのではないかと思って制作しました。

“リモート制作”で発見したこと

Q:作品を見ると、固定された映像なのですが、展開する会話にどんどん引き込まれていきました。実際に制作してみてどんな発見があったでしょうか?

行定監督:
ふだん作っている映画とはやっぱり違って 簡易的な方法だったんですけど、少人数で作っていることは、スピード感がすごくあったんですね。なので、企画立案から約2週間で公開できました。本来ならば、映画は撮影、照明、録音、美術と、そういうエキスパートが集まって作られるわけで、それぞれがこだわった形になるのが映画なんですけど、今回はリモートなので俳優自身がそれを全部担っているんですね。俳優の自主性で作られるというところも面白くて。あと不完全ではあるんだけども、映画をやってきたわれわれの底力を自粛している人たちに届けることで、みなさんに映画を忘れないでほしいという気持ちを感じていただければいいなというふうに思って作品を制作しました。

産業としての映画界 現状と見通しは

Q:いま映画界は厳しい現実が突きつけられています。去年(2019年)4月とことし(2020年)4月の映画の興行収入を比較すると、去年に比べ96.3パーセントも減って危機的な状況にあります。各地のミニシアターも休業が続いて経営が非常に厳しくなっています。行定さん、各地で少しずつ再開の動きは出てきていますけれども、現状や先行きに対する映画界の危機感といったものはどういったものですか?

行定監督:
世の中の方たちの多くが困窮しているのと同じように、映画界もまったく起動できない状態、かなり疲弊していると思うんですね。まずはじめに、自粛を余儀なくされたのが映画館であって、特にミニシアターはかなり大変なことになっています。次におそらく配給。そして製作するわれわれの現場、というのもフリーランスのスタッフが多いのでこの数か月まったく収入がないと。生活が困窮している状態になっていて、やがて、多分、製作現場、資金が集まらないとか、そういう状態に影響が出てくると、映画自体作ることがものすごく慎重になってくるんですね。このまま続くと、スタッフは職を失って映画文化が淘汰されてしまうんじゃないかという危機感すら、すごく感じております。

演劇界でも広がるリモート作品公開

実は演劇界でもリモートで作った作品をネットで発表する動きが出ています。制作したのは、劇団を主宰する劇作家で俳優としても活躍する根本宗子さん。公演の中止が相次ぐ中、演劇の臨場感を忘れてほしくないという思いを込めました。

劇団主宰・劇作家・俳優 根本宗子さん
「一発撮りというかワンカットで撮っていて、演劇を見てるときの臨場感やワクワク感を感じてくださって、早く生で演劇を見たいなと思っていただくきっかけになったらいいなと。」

ネットでの配信は意外な効果もありました。演劇をなかなか見ることができない人たちに作品を届けることができ、劇場が再開したあとの活動にもつなげていきたいといいます。

根本宗子さん
「演劇っていきなり行くのにはどうしようかなと思われる方もいると思うので、こんなにラフに見ていいものなんだということを、演劇を見ない方にも届けられたらいいのかなと思います。」

映画・演劇 どうなる“表現活動”

Q:行定さん、映画界それから演劇界もコロナ後の世界に向けて表現の仕方や表現そのものがもしかしたら変わっていくかもしれないという気もするんですが、行定さんはどのようにお考えでしょうか?

行定監督:
これから、きっと、コロナの前に戻るというふうに考える、考えたいところなんですけども、やっぱりこれからがどういう映画の作り方になるかというのはまだすごく模索していかなければいけない状態かなと思いますね。映画自体が変わってしまうことはないと思うんですけども、いまのこの状況に即した映画作りというのは多分必要になってくるかなというふうには思っています。

“表現”への決意

Q:最後に、行定さんご自身、映画監督として今後どんな表現をしていくのか決意を聞かせてください。

行定監督:
映画というのはやっぱりこういうすごく大変な、人が大変なときにこそすごく役立つ、文化というのはすごくみんなの支えになっていくものだというふうに思いますので、この文化の“ともし火”みたいなものを絶やさないようにしてふんばっていくので、やはり映画は映画館で見て、そこで映画体験というものをしてもらいたいという思いで僕らは作っているので、またかつての映画がみなさんの心に届くように製作していきたいなというふうに思っております。

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