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2020年5月22日(金)

「感染者を発症前に見つける努力徹底を」ノーベル賞受賞者・京都大学山中伸弥教授

新型コロナウイルスをめぐる状況が刻々と変化する中、社会に求められることを医学研究者の立場からわかりやすく提言している京都大学・山中伸弥教授へのインタビュー。4回目のインタビューでは、感染の再拡大を防ぐためには、感染の確認が減っている中でこそ、感染者を発症前に見つける努力を徹底していくことが大切だと語りました。聞き手は桑子キャスターです。

今は“3月に戻った状態”ウイルスは消えていない

Q:緊急事態宣言が解除されて休業要請等の緩和も進んでいます。この状況を山中さんどういうふうに、ご覧になっていますか?

山中さん:
やはり多くの方が外出の自粛等、努力した成果が表れてきていると思います。

Q:新しい感染者の数を見ますと最近ガクンと減ってますよね。ピークはもう過ぎたのかなというふうにも見えるわけですけれども、実際はどんなものか、山中さんはどういうふうにお考えですか?

確実にピークは過ぎていると思いますが、ウイルスが消えてしまったわけではなくて、言ってみれば3月の中頃、もしくは3月下旬くらいの状態に戻ったということですから、油断すると、またすぐに増える可能性はあると思っています。

Q:私たちは3月の連休の失敗がありますからね。

そうですね。もしかすると、これから夏を迎えて、このウイルスが、どれだけ気候に影響されるかはまだ分からないんですけれども、もしかすると夏の間は少し勢いが弱まるかもしれませんが、もしそうだとすると、逆にその後、秋から冬にかけて大きな波がやって来るかもしれない可能性はあります。

Q:確かに、このあと第2波、第3波が来るんじゃないかという指摘も出ています。山中さんは、今後の感染の推移をどういうふうにお考えですか?

油断すると間違いなく第2波が来ると思いますので、油断せずにですね。3か月、4か月前と比べると、ずいぶん私たちはウイルスについて学びましたので、ぜひ対策をしっかり続けて、第2波第3波を起こさないという努力が必要だと思っています。

Q:また波は来るというふうにおっしゃいましたけれど、実際に参考にしているデータというのはあるんですか?

海外だと、例えばハーバード大学等が論文を出しています。ただ間違いなくというか、努力をやめてしまうと第2波だと思いますが、逆に努力をしっかりすれば、対策をしっかりすれば、第2波を起こさないことが可能だと思いますので、やはり私はこのウイルスへの対策はこれからが本番だと思っています。

Q:これからが本番ですか?

はい。ここからしっかり対策を続けることによって、4月に起こったような波をもう起こさないということが努力すれば十分可能だと思っています。

Q:この後、もし第2波が来てしまったとします。その時に感染の拡大を抑え込むために私たちが備えておくべきことは、どんなことがあるでしょうか?

第2波が起こってしまったら、4月と同じようにもう一度、かなりの自粛が必要になってしまうと思います。そうすると経済的にも非常に大きな影響がありますから、やはり大切なのは、努力をやめるのではなくて、これからもずっと対策を続けて、第2波を起こさないということが大切だと思います。

感染者の早期“特定・隔離”が重要

Q:第2波を起こさないことも私たち次第によってはできるということですね。

はい。ふたつの方法の組み合わせで。一つは、感染した人をできるだけ早く見つけて、しっかり隔離するということをこれまで以上にしっかり行うことが必要です。

Q:隔離体制をしっかり確立させると。

検査体制と隔離体制ですね。そしてもう一つは、わたしたちが国民全員が全く前に戻るのではなくて、やはり人と人との距離であったりは、よくいわゆる3密を防ぐであったりそういった努力、マスクを常時する、そういった心がけをこれからも、たとえ患者さんの発生が夏の間少ないとしても油断せずにずっと続けると。油断すると間違いなくウィルスはつけ込んでくると思いますので、そういう努力を続けることによって、大きな経済的な影響を伴うような第2波を何としても食い止めることが大切だと思ってます。

Q:ずっと続けるというのは、具体的に一体いつまで続けないといけないんだろうというふうに思うんですけれども。

よく言われていますがワクチンが開発されるのが、ひとつの目安になると思います。

Q:そのあたり、最新の情報はどうでしょうか?

ワクチンは世界中で開発が進んでいて、早いものは既に臨床試験に入っていますが、やはりワクチンは薬と違って健康な方に投与する、しかも何千万人という日本だけで人に投与する。世界中を入れると何億人、それ以上の人に投与する。健康な人に投与するわけですから、安全性の検証がものすごく大切ですので、治療薬の開発よりも、さらに時間がかかる。慎重に行うことがありますので、やはり時間はどうしてもかかるんじゃないかと思っています。

Q:1年後、2年後、いろいろな説がありますけれども、実際どうなんでしょう。現実的にいつぐらいにワクチンというのはできそうなんでしょうか?

これは、できるという定義にもよりますが、例えば、一部の医療従事者であったり、何らかの持病があってリスクが高い人に限定的にワクチンの投与を開始するとしたら、1年ぐらいで達成できるかもしれません。ただ、このウイルスの波を出さないようにするためには、ものすごく多くの人にワクチンを投与する必要がありますから、そうすると安全性の検証と大量生産の面がありますので、どうしても時間はさらにかかってしまう可能性が高いんじゃないかなと思っています。

Q:先ほど検査体制の充実も引き続き大切だという話でしたけれども、検査の体制は、いまの状況をどういうふうにご覧になっていますか?

今いろいろな、わたしたちも努力をしています。何かいろいろな所で検査の充実に向けた動きがありますので、今患者さん、感染者が少し少なくなっているこの間に、検査の体制をしっかりと整えていくことが大切だと思います。

Q:実際に山中さんの研究室もPCR検査ができると言っていました。そのあたりの動きというのはあるんですか?

確実にあると思います。大学によっては検査を行っているところもありますし、いろいろな新薬であるとか、全自動の器械ですね。こういったものをどんどん入手できるようになってきていますので、そういったものを取り入れて検査体制を整える。さらにはPCR検査に加えて抗原の検査、抗体の検査、いろいろな検査を組み合わせて行うということで、検査体制は3月4月に比べると、ずいぶん向上しつつあるというふうに思います。

Q:それは明るい情報ですね。

ただこのウイルスは、発症してからではちょっともう遅いので、発症する前にいかに感染者を見つけるか。また無症状の人もおられますから、無症状の人をいかに見つけるかですから、やはり濃厚接触者を効率よく追跡するという努力が大切です。いろいろなアプリも開発されていますが、そういうものも利用して、これまでは保健所の人等が、ものすごい努力をして電話を一生懸命かけて追跡をしていたんですが、これだけだと、どうしても限界がありますので、やはりいろいろな新しい方法を組み合わせて、効率よく感染の疑いのある人を見つけて早く検査をして、陽性の人は早く隔離すると、こういう地道な努力が必要だと思います。

Q:発症する前にいかに見つけるかが大切ということですけど、どういうふうに見つけていったらいいでしょうか?

そのためには、感染者が一人、たとえば症状があって陽性であると分かった人の濃厚接触者を効率よく同定して、その人々の検査を早め早めにしていくと。その検査結果が出るまでは自宅待機をしてもらう。陽性が判明したら今整備されているホテルであったり、自宅だけでは急に重症化したりする場合もありますので、医療スタッフがいる宿泊施設で待機してもらうと。万が一、肺炎等、少しでも症状が重くなってきたら病院に移っていただくと。こういう流れが大切だと思います。

Q:濃厚接触者の特定をしっかりしないといけないというお話でしたけれども、特定をするために私たちはどんなことをふだん心がけないといけないか?濃厚接触者の特定をするために、どういうことを整備していく必要があるというふうにお考えですか?

やはり自分の行動ですね。自分でも追跡できるようにしておくと、いつ誰に会ったかとか。ですからオンラインで話す分には全然いいんですけれども、僕もお酒大好きですが、たくさんの人とお酒を飲んで盛り上がってしまったりすると、もう誰と会ったか分からない。隣のテーブルの人とも盛り上がってしまうかもしれないですし、やはりそういうことは、ちょっと当面は我慢せざるをえないかなと。家族であったり、非常に親しい人、少人数でというのは今後、大丈夫になっていくと思いますが、前のように大人数で大宴会とかいうのは、しばらくは我慢だと思っています。

Q:隔離体制は今のままで十分だとお考えですか?それとも、もっと充実させていくべきでしょうか?

隔離の数は随分、ホテル等は充実したと思うんですが、やはり医療機関ではないということで、ただオンラインによる医師や看護師の人と、こういうかたちで顔を見て、1日に1回か2回は医療従事者を感じることができる、今たぶん電話等で確認されていると思うんですが、かなり不安だという声を聞いたことがあります。さらに言えば、回復期もまた病院からホテル等に移る場合があるんですが、PCRが2回連続陰性でないと出られないということで、10回、20回、PCR検査をされている人もいると聞いていますので、これはやはり今、抗体、しかも中和抗体という善玉抗体、感染を抑える力のある抗体を測る方法もだいぶできてきていますので、そういった新しい技術も組み合わせて、不必要に長期間滞在しなくていい。そういう努力が必要だと思います。

感染者特定・隔離を進めると社会活動は?

Q:こうしたことを整えることで、どういうふうな世の中になっていくでしょうか?

感染した人を発症前に同定して、他の人に感染することができなくすると。これをどんどんしていくことによって、他の国民、他の多くの人の活動制限を緩めることができます。感染者の隔離を行わなければ、国民全員がかなり厳しい人と人との接触を6割とか抑えるしかないんですけれども、感染した人、感染した人が他の人にうつす前に同定して隔離することによって、それ以外の人の、大多数の国民、大部分の国民の制限というのはずいぶん弱めることができますので、非常に重要だと思ってます。

Q:リスクをどんどん排除することで、リスクがない人たちがより自由に活動できるようになるということですね。

おっしゃるとおりです。

Q:波の話に戻るんですけれども、第2波がもし来てしまった時に感染の拡大を抑えるために、わたしたちももちろんですけれども、行政もやはりするべきことがあると思うんですね。どういうことを整えておけばいいでしょうか。

やはり一番大切なのは医療体制をしっかり準備しておくといいことだと思います。それからもう一つは、最初の波のときに、やはり医療従事者であったり、さらには感染した人に対する、偏見といいますか差別とも言えるものがあったと思います。やはりこういったことがあると、医療従事者も疲弊してしまいますし、感染したかなと思っても隠してしまうという気持ちが起こってしまいますから、やはりそういう偏見とか、いわれのない偏見や差別をいかになくしていくか、そういう努力も、これは行政だけではなくて私たち全員の努力が必要だと思っています。

Q:私たち一人一人の心持ちも大切ですけど、行政機関ができることは、どんなことがあるとお考えですか。

やはり、ここでも私は検査が大切だと思います。だれが感染しているか分からないという状況だと怖いので、それが差別とか偏見の一因になっていると思います。しっかり医療従事者等の検査を定期的に行えば、誰が感染して誰が感染していないかということがもっと分かるようになれば、怖さというのは随分やわらぐと思いますので、やはり私たちには必要な時には検査を行う。これが非常に大切ではないかと思っています。

Q:先ほどハーバード大学のデータを参考にしているという話がありましたけれども、ミネソタ大学の研究データについては?3パターン、今後の波を予測しているものですが。

今後の予測というのは、いろいろあります。やはり対策をしないと間違いなく大きな波がまたやって来るというのは多くの研究者が一致していると思いますね。ただやはり、特に日本はですね、波をかなり小さく抑えることに成功したと思うんですね。ですから、ここでいろいろなことを学び、またまだわかっていないこともあります。どうして日本は、ほかの国よりも1つ目の波が小さくて済んだんだろうというところが、いろいろな可能性もあるんですけれども、まだ完全に分かっていないですから、ここははっきりさせていくことによって、次の波への備え方も変わってくると思いますので、是非この辺のいろいろな知見が今あると思いますが、これをみんなお互いに共有して解析することによって、日本や多くのアジアの国もそうなんですが、なぜ欧米とは違うパターンなのか、どうして感染者や死亡者の数が少なく済んでいるのかというところをしっかり追究していくことが大切だと思っています。

Q:日本は、どうして波が小さく済んだのか追究していくことはすごく大切だと思いますが、第1波から学んだことは、どんなことがあると思いますか?

やはりこのウイルスは、インフルエンザウイルスや以前のSARSとは、ずいぶん違うんだということを学びました。
インフルエンザとかSARSは、患者さんが発症したあとに他の人にうつす力が強くなります。ですから、発症した人を見つけて隔離すればいいんですけれども、このウイルスは発症する前の日とか2日くらい前から、ほかの人にうつしていると。さらには全然、ほとんど症状が出ない人も、他の人にうつしている場合があるということがありますので、SARSやインフルエンザに対する対策をそのまましていったのでは駄目だということを学んだと思います。そのためにも発症する前に、いかに感染者を見つけるかということが非常に大切だと思います。

Q:濃厚接触者の追跡ということですよね。

そうですね。

ゴール見えない長期戦“助け合い 励まし合いを”

Q:人との接触を減らしながら社会経済活動を維持していくのは、ものすごく難しいことだと思いますが、これを乗り越えていくためにメッセージをぜひお願いします。

はい。私たちは何とか、この最初の波を乗り越えました。普通だと、ここでちょっと一息つきたいところなんですが、今は一息ついてしまうと、またウイルスが力を取り戻しますので、ぜひこの努力を継続、今までのような全力疾走じゃなくてもいいと思うんですが、止まってしまうと駄目だと思っています。走り続ける、前よりは遅い速度ですが、走り続けることが非常に大切だと思いますので、国民みんなで走れば、走りきることができると思います。

Q:今ちょっとジョギングモードに切り替えて引き続き走っていこうということですね。

はい。

Q:マラソンは42.195キロですけれども、マラソンでいうと今何キロぐらいまで来ているというふうにお考えですか?

このレースはですね、何キロ走ればいいか分からないレースです。

Q:そもそも42キロではないと。

はい。これが大変なんですが、これ1人だと絶対にめげます。でもみんなで励まし合えば必ずゴールにたどりつけると思いますので、今どうしてもこういう時期はお互いに非難したり、イライラしたりするんですが、そうすると絶対完走できないので、みんなで助け合う、支え合う、励まし合う、これがもう本当に大切だと思います。そうしないと、ゴールが分からないレースほど大変なものはないですので、みんなで励まし合うと、なんとか行けると信じています。

Q:私も信じたいと思います。ありがとうございます。

ありがとうございます。

「おはよう日本」では、新型コロナウイルスの危機をどう乗り越えるのか、各界の方へのインタビューをシリーズでお伝えしています。
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