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2020年5月24日(日)

新型コロナウイルスで不妊治療に広がる不安

新型コロナウイルスによる不安は、不妊治療をしている人たちにも広がっています。出産にはリスクが伴うとして、治療の延期を余儀なくされた人も出ているのです。しかし、年齢が高い人にとっては治療を延期すると残された貴重な機会を失うことになり、難しい選択を迫られています。

<この記事のポイント>
◆治療を延期すべきか?当事者の間で不安や悩みが広がっている。
◆不妊治療などの相談を受けているウェブサイトには3月以降5,000人の相談が。
◆専門の病院では、治療の継続を求める患者に応えようという動きも。

治療を延期すべきか?当事者に突きつけられる判断

自分の不妊治療の経験について、インターネットで発信をしているおかゆさん(仮名)です。3年前から定期的に病院に通い、不妊治療を続けてきました。
しかし、4月に、治療の延期を考えざるを得ない事態に直面しました。通っている病院から「治療の延期を検討するよう」伝えられたのです。

新型コロナウイルスが妊婦や胎児に及ぼす影響が明らかになっていないこと、そして、治療薬として期待されているアビガンは妊婦が服用できないことなどから、もし妊娠できたとしても、リスクがあることが理由です。日本生殖医学会の通知を受けての内容でした。
この知らせに、おかゆさんは治療を延期するかどうか、悩みました。すでに3年にわたり治療を続け、8回の体外受精を試みていたため、治療期間を先延ばしするのは、避けたいと考えていたからです。

また、去年(2019年)の治療費は250万円以上かかっていて、延期すれば、さらなる負担も生じます。

おかゆさん(仮名)
「精神的苦痛が大きく、一回の失敗ごとになかなか立ち直れなくなっていました。ですので、時間を無駄にしたくないと思う気持ちと、とはいえこの状況で、治療を当初の予定通り進めるのもどうかと思い、複雑でした。」

おかゆさんは、通院が感染リスクになると感じたこともあり、夫婦で話し合った結果、4月に予定していた体外受精を取りやめ、治療を延期することにしました。感染の終息が見通せない中、いつ再開できるのか、不安が募ります。

おかゆさん(仮名)
「理屈は分かっていても心がついていかないことがあります。終わりが見えないのが、精神的にも厳しいですね。」

深刻な「年齢」の悩み どう寄り添う?

子どもがほしいと考える人に情報提供などをおこなうウェブサイト「ファミワン」では、3月から無料相談を始めたところ、5,000人以上から相談が寄せられました。
特に深刻なのは、年齢に関する悩みです。ユーザーのおよそ半数が35歳以上で、年齢が高くなればなるほど、妊娠率が下がるとされています。

このサイトでは、こうした声に、看護師や臨床心理士などが回答していて、具体的な治療法などの質問には専門的な立場からの客観的な情報を提供し、ストレスや不安といった声には、精神的なサポートを行っています。

ファミワン 石川勇介代表
「先が見えない状況の中で、どういう選択肢をとるのがベストなのかというところを、利用者がつど判断している状態です。どのように折り合い付けていくか、サポートが出来ればと考えています。」

どう治療継続? 模索する現場

不妊治療を行う病院では、感染リスクを下げながらどう治療を継続していくか、模索が続いています。

この病院では、通院する患者は半数に減りましたが、オンライン診療も活用しながら、治療の継続を求める人に対し、診察を続けています。

亀田IVFクリニック幕張 川井清考院長
「選択するのを患者だけに押しつけるのは、どうしても患者さんのストレスが増えていきますので、その責任をシェアしながら医療に向き合っていけたらと思っています。」

この病院が力を入れているのが、3月から週に1回始めた、不妊治療に関するウェブ勉強会です。病院に来なくても家でできる体質改善の方法や、不妊治療の仕組みなどを伝え、患者が正しい知識を得た上で、判断が出来るようにサポートしています。
川井医師は、家にいることが多い今の時間を、夫婦で治療方針などを話し合う機会として捉えて欲しいと話しています。

亀田IVFクリニック幕張 川井清考院長
「始める前にできることもありますし、家族計画を改めて見直す良い時期かと思うので、家族で話す時間に充てていただければと思います。」

不妊治療の継続 「主治医と相談を」

不妊治療の経験があるのは、日本では5.5組に1組と言われていて、多くの人が悩みを抱える中、日本生殖医学会は、感染状況の変化に応じて方針を示しています。
感染拡大が深刻化していた4月に出した声明では、医療従事者に向けて「不妊治療の延期を選択肢として患者に提示するよう推奨」していました。

そして、緊急事態宣言が各地で解除される中、5月18日に出されたのが「可能なかぎり感染拡大防止の対策を行い、治療の再開を考慮する」という通知です。今回の通知の意図とは?

日本生殖医学会 市川智彦理事長
「特に、妊娠を目指して治療できる期間が少ない方は、半年とか1年間延期するのは難しいと思います。不妊治療をしてはいけないということではなくて、主治医の先生と患者さんで相談してもらって、いちばん良い方法を選んで頂きたい。」

通知では一方、「感染の再拡大が起きた場合、不妊治療の実施・延期も状況に応じて選択する必要がある」ともされています。
地域によって状況が異なってきますので、ひとりで悩まず、かかりつけの医師や外部の機関に相談することが重要だということです。

取材:依田真由美ディレクター

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