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2020年5月26日(火)

第2波へ求められる備えとは~“地域医療の役割分担”と“保健所の負担軽減”は

日本は、これまで、欧米諸国のような感染の爆発的拡大を免れてきました。しかし、この間、医療現場や保健所など最前線の現場ではギリギリの対応を迫られていました。今後、感染の第2波も懸念される中、負担をどう軽減していくべきか。今回、厚生労働省の対策班で対応してきた研究者に聞きました。

<この記事のポイント>
◆感染拡大時の①「医療提供体制」と②「保健所運営」に課題。
◆①「重症患者を診る病院」と「重症ではない患者を診る病院」で「役割分担」し地域連携を。
◆②経過観察は「情報把握・管理支援システム」を使い、感染拡大につながる情報をいち早く。

“第2波、今回より大きい可能性”も

厚生労働省対策班のメンバーで、公衆衛生を研究する医師の齋藤智也さん。統計などで感染状況を分析する専門家のデータをもとに有効な対策ができるよう、行政に助言してきました。

齋藤さんは『健康危機管理』という分野を学び、感染症の対策を『国の安全保障』の重要な問題だととらえてきました。 そして、その考えをもとに、感染が拡大する緊急時にどう対応すればよいか、これまで多くの自治体とともに計画を策定してきました。緊急事態宣言が解除されるなど感染がいったん収束しつつあるいま(5月26日時点)、安心して対応を緩めるのではなく、第2波に備えて危機管理の体制を強化すべきだと指摘しています。

国立保健医療科学院 齋藤智也医師
「いつまた大きな流行につながっていくか分からず警戒は欠かせない。第2波が今回よりも、もしかしたら大きくなるかもしれないという可能性も考えながら、備えていく必要がある。」

感染拡大時に備え、地域で「医療機関の役割分担」を

最も大きな課題だとしているのが、感染拡大時の病床の確保です。感染が拡大した4月中旬には、東京や大阪などの大都市部をはじめ、高知など9つの都府県で、病床は準備したうちの8割以上が埋まりました。さらに病床がひっ迫する中、重症化する患者も急増。自力で呼吸ができなくなり、人工呼吸器が使われた患者は4月下旬まで増え続けました。医療現場からは、「患者に適切な医療が提供できない“医療崩壊”に近づいている」という声も上がり、齋藤さんは対策班と危機感を持ちながら、日々各地の病院から報告されるデータを見ていたといいます。

病床のひっ迫を防ぐためにどうすればいいのか。齋藤さんが大事だと考えているのは全国に先駆けて導入された神奈川県での取り組みです。

今回の対応では、当初、症状が比較的軽い患者が重症患者を診られる医療機関に入院するケースも多く、重症患者の受け入れ先の確保が難しくなりました。そこで、中等症の患者は、別に指定した専用の医療機関で受け入れるようにし、重症患者に必要な医療を提供できるようにしたのです。しかし、こうした医療機関の役割分担は、感染数が少なかった地域などでは進んでいないところもあるのが現状です。

国立保健医療科学院 齋藤智也医師
「新型コロナウイルスに感染した患者が急に増えても受け入れられる柔軟な提供体制、あるいは医療の役割分担やそれを調整するメカニズムを、それぞれの地域で作らねばならない。今回各地で新たにできた枠組みを、緊急事態宣言の解除で解散してしまったりせずに、大きな流行が起こりそうな予兆が出たときには、スイッチをオンにして、すぐに動かせるメカニズムを作っていく、これは絶え間ない努力が必要だ。」

新システムで経過観察へ 感染拡大の兆しをいち早く

もう1点、指摘する課題が、保健所に集中した負担を軽減することです。今回、保健所には「電話がつながらない」「PCR検査を受けさせてもらえない」など批判が相次ぎました。保健所の業務は▼感染についての相談のほか、▼PCR検査の検体の搬送▼患者の入院などの手配▼都道府県への報告など、多岐にわたります。

さらに、感染者や感染が疑われる人の経過観察のため行動や体調の聞き取りも行います。
しかし、電話がつながらないこともあり、感染が広がるにつれ業務の負担は増す一方でした。

そこで、対策班が開発に関わり、迅速な情報共有を実現するために国が普及を目指している新たなシステムがあります。保健所がいったん感染を把握した後は、感染者自らがスマートフォンなどを使って体温や状態を入力。医療機関や行政は、保健所を介さず、情報を確認できるようになると期待されています。

国立保健医療科学院 齋藤智也医師
「保健所の現場に負担をかけず、対策を進める関係者みなが情報を共有できる仕組みの構築が非常に重要だ。保健所が感染拡大の兆しを把握する業務により集中できるようにし、感染に早めに気づいてきちんと対策をとっていければ、第2波を拡大させず乗り越えられるのではないか。」

新しいシステムは『5月中の全国での利用開始』を目指し、開発が進められています。今回の対応でうまくいったこと、そしてうまくいかなかったことをしっかり検証し、いつ感染の第2波が来ても、対応できる体制の構築を進めてほしいと思います。

取材:岩井信行ディレクター

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