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2020年5月29日(金)

「“黄色点滅”の気持ちで行動を」ノーベル賞受賞者・京都大学 山中伸弥教授

新型コロナウイルスをめぐる状況が刻々と変化する中、社会に求められることを医学研究者の立場からわかりやすく提言している京都大学・山中伸弥教授へのインタビュー。緊急事態宣言が解除された今、「経済活動の再開」と「感染の再拡大防止」の両立をはかるため、信号機の色に例えて今後の私たちの心構えを語りました。聞き手は高瀬耕造キャスターです。

日本の自粛 誇りに思う

Q:まだ到底収束という段階ではないですが、ひとまず全国の緊急事態宣言が解除された今の段階をどのように受けとめていますか?

山中さん:
まずは第1波といいますか、かなり東京、関東、大阪では医療従事者に負担がかかっていたんですけれども、この最初の波を皆さんの努力で、いろんな方の努力でなんとか抑えることができてほっと一息というところなんですが、実際はこれからが本番といいますか、まだまだ長いウイルスとの付き合いになると思いますから、油断せずにしっかり対策を続けていく必要があると思っています。

Q:本当に息も詰まるような外出の自粛、行動制限という中でひとまず結果が出たということをほっとする部分もあると思いますが、この1か月半の日本の人たちの行動自粛をどのように見ていましたか?

すばらしいと思います。私はアメリカでもいろいろな活動をしておりまして、3か月アメリカに行けていないんですが、アメリカとかヨーロッパはかなり厳しい法律であったり、罰則も伴うような中で、外出を自粛しているんですが、日本はそういう罰則とか法律上の規則ではなくて本当に皆さんの自主性でここまで来られたというのは世界でも本当に例がないんじゃないかなと思いますので、その点、日本人は本当に誇りに思っていいと思います。

Q:海外メディアから奇妙だと言われるくらい独特の推移をたどっている日本ですが、一人一人の意識や行動がひとまず解除できるようなところまでこぎ着けたということにつながっているのでしょうか?

はい、おっしゃるとおりです。私は日本の感染者であったり死亡者の数が他の国より少ない理由を“ファクターX”と呼んでいますが、ファクターXの1つは日本人のこの法律で強制されなくても、自粛するとか清潔感であったりそういう日本人特有のものがファクターXの大きな要因の1つであると考えています。

第2波兆候 早めに警告を

Q:すでに第2波、第3波が起きかねないという状況もある中で、北九州市で連日感染者数が発表されて、市からの自粛要請も再び出されました。こういった今の状況はどのように見ていますか?

まさにこのウイルスは、いま北九州もそうですし、北海道がまず最初にいったん第1波を抑えたと思ったらまた第2波で、まだ今も完全には収束していないと思いますが、私たちが対策を緩めるとウイルスが力を盛り返すといいますか、そういうものをすごく物語っていると思います。また他の国でも同じようなことは起こっていますので、私たちはそういうところから学んで決してとまることはなくて、ある一定の速度で走り続けるといいますか、油断せずに進めていく必要があると感じています。

Q:北海道の例を見るといったん対策を緩めたときに、再び対策を強化することの難しさがあると思いますが、再び感染が拡大し始めた時に何が大事なのでしょうか?

報告される感染者の数は、実際感染が起こってから1週間とか2週間かかることが分かっています。ですから私たちがいま見ることができる姿は実はいまの姿ではなくて、1週間前、2週間前の姿です。ですから、この第2波というのをいかに少しでも早くその前兆といいますか、その兆しを捉えて、早く気を引き締めるかというところが非常に大切だと思います。少しでも感染者数が増える兆しがあれば注意を発して、みんながこれではいけないと思って自分の行動をもう一度見直すことが非常に大切です。先手先手といいますか、感染者数が明らかに増えてきたとなってから行動したのではある意味手遅れで、それは2週間前から増え出していてそのあと2週間ずっと増えているということですから、少しでも兆しがあれば大げさと思われてもいいですから、まずみんなの行動を変えていくという。この対策は僕は二段階あると思うんですね。今回の緊急事態宣言の間のような店を閉める、いろんな集会もやめるというのはある意味最後の手段で、その前に店は営業している、いろんなイベントもある、でもそこに行く私たちが心構えといいますか、同じようにごはんを食べに行っても他の人とできるだけ離れて座り、あんまり大きな声でしゃべるのはやめておいて、あまり長居をせずさっと帰ることでも随分変わってくると思いますから、お店の休店等になると経済的なダメージが非常に大きいですから、なんとかそこまでいかないように、自分の行動を変えることが大切だと思います。

Q:ご自身のホームページでも発信されていた大阪モデルの基準の変更については、基準を後になって変えるということの危険性、不透明さについて警鐘を鳴らしているのでしょうか?

経済の再開というのは非常に大切なことです。でも同時に、少しでも、第2波の兆しがあれば鋭敏に反応することも必要ですから、基準というのはかなり慎重に決めて、いったん決めたら簡単には変えない方がいいんじゃないかと思っています。どうしても緩む方向に行ってしまって、その場合に気が付いた時にはもう手遅れといいますか、またかなり厳しい休業要請等をしないとダメになってしまうかもしれませんから、その前に私たちがまず気を引き締めるというようなアラートは早く出す必要があると思いますので、そのためにもそこは慎重さが必要だと思っています。

Q:そこで大事になってくるのはやはりずっと言われている科学的な根拠、そこに基づいた判断ということになりますか?

そうですね。よく言われる実効再生算数「R」という数字があります。1人の感染者が何人の他の人に感染させるかと。これが「1」を越えだすと感染者がどんどん増えていくわけですから、この「R」をいかに、これはリアルタイムには計算できないと思うんですけれども、「R」が「1」を超えているような兆しが少しでもあれば警告を発すると。お店の休業要請とかではなくて私たちひとりひとりが気をつけると。まだ青信号じゃないんだということをしっかり自覚する必要がありますので、そのためにもやはり厳しめの基準が必要だと思っています。

Q:再び緊急事態宣言を出すかどうかという判断に仮になったときに何が大事というようにお考えでしょうか?

1月から5月までの第1波においては、日本は準備ができなかったと思うんですね。ですから、どっちかというとウイルスにバッと攻め込まれて、守り一方。何とか耐えて耐えて、守り切ったという感じですが、この5カ月でウイルスについて随分学びました。そしていったんウイルスが力を弱めていますので、準備の時間はあります。第2波に向けては守りだけではなくて攻めといいますか、例えば検査体制をしっかり充実させて、少しでも感染者が現れてきたらすぐに分かるようにする。そして、その濃厚接触者もいろんなアプリ等も開発されていますのでそういうものを利用して第1波の時のように保健所の方の献身的な努力に頼るだけではなく、いろんなITやアプリの力も使っていくと、そういう第1波とは違う対応をしていって、早め、早めに対応することによって第1波の時のような完全休業とかそこまでのダメージを防がなければならないと思っています。

“黄色点滅”の気持ちで行動を

Q:経済あるいは学校、教育、いろんなものがようやく少しずつ動き始め、不安半分、期待半分といった中で、これからわたしたちはどう行動していくべきなのか提言をお願いします。

『黄色点滅』です。大阪も通天閣とかあちこちに青信号が灯っています。でも私はこれは本当の意味での青信号ではなくて黄色の点滅信号だと思っています。黄色の点滅は他の交通等に「注意をして進め」という意味で、まさに私たちは今こういう状態、黄色の点滅だと思います。青というのはもうちょっと先の話じゃないかなと。ウイルスはまだあちらこちらに確実にいますのでこのウイルスに注意をして、注意をしながら経済を進めていくことが非常に大切だと思います。

Q:黄色点滅の状態はどれくらい続きそうでしょうか?

僕は結構長く続くんじゃないかなと思っています。1~2年。でも、あくまでも黄色点滅で「止まれ」ではないですから、「注意をして進もう」ですから、緊急事態宣言の間はほぼ赤に近かったと思うんですけれども、黄色の点滅というのはいろんな事をやっていいと、進んでいいと、ただ注意をしましょうと。十分な注意が必要ですということですから、赤とは全然意味が違いますが、青信号はちょっと誤解を与えるんじゃないかなと私自身は思っています。

Q:新型コロナウィルスが拡大しはじめる前の元の暮らしに戻るのではなくて、新しい行動生活様式を作っていかないといけないということでしょうか?

去年(2019年)の12月までは青信号だったと思います。どんどん好きな所に行っていろんな事を楽しむことができましたが、これから当面は黄色点滅信号です。でも進んでいいわけです。気を付けて進めですから、青とは違いますが、一生懸命いろんな経済は進めていきますし、私たちの研究所でも実験やいろんなiPS細胞を使った開発をいま再開して進めていますが、青ではないと。いろんな事を気をつけながら、会議もできるだけリモートにし、出張もできるだけ減らし、人の数もできるだけ減らすと。実験は大学に来ないとできないですけれども、実験のノート整理とかは家に帰って在宅でやろうと。お店もできるだけ少人数で行って短時間でいこうと、そういうような注意は当面は続けていく必要があると思っています。

Q:私たち日本にいる人たちはそれが実現できる、行動できるというふうに言って良いんですよね?

はい。日本人は第1波の経験で十分に注意をして行動できると。通天閣は青がついていますが、あれは黄色点滅だと少なくとも私はそう理解して、青と思いたいんですが、青だとどうしても緩んでしまうので、あくまでも黄色点滅だと思ってやっています。

4月24日から1か月以上にわたって最新の知見を伝えてくれた山中教授。緊急事態宣言が解除され感染の第2波が懸念される今、経済活動との両立という難題に立ち向かうため、今後もウイルスについてホームページなどで発信を続けていくということです。

「おはよう日本」では、新型コロナウイルスによる不安が渦巻くいま、各界の方に生きるヒントや危機を乗り越える提言をシリーズでインタビューしています。
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