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2020年6月6日(土)

学校再開をルポ 3か月の休校が子どもたちに与えた影響とは

今月(6月)1日、多くの学校が再開されました。学校現場を取材すると長期間の休校による、子どもたちへのさまざまな影響が見えてきました。
3か月ぶりに再開した、埼玉県戸田市立戸田第一小学校。この日は分散登校のため、およそ半分の子どもたちが登校しました。6年3組の担任で、体育を受け持つ佐々木大輔先生のクラスを取材しました。

休校明けの子どもたちに生活リズムの乱れ

新しいクラスで、少し緊張気味の子どもたち。「元気に挨拶はできませんね。小さな声で挨拶しましょう」と佐々木先生が呼びかけ、元気のない「おはようございます」という挨拶から1日がスタートしました。スタートから、飛まつによる感染防止の対応が求められました。
いつもとは違う学校生活です。佐々木先生は3か月の休校で、子どもたちのさまざまな変化を感じました。その大きな1つが、生活リズムの乱れです。不規則な生活が続くと気力が低下したり、不安感が増したりすると言われています。「きのうの夜、何時に寝ましたか?」という質問に対して、1時に寝たという子どもも。「生活リズムが崩れて朝起きるのが遅くなって、体調崩しやすくなりました」と話してくれました。文部科学省も、生活が不規則になると、学校に行くのが億劫になる可能性があるから注意が必要だと喚起しています。

1時間目の授業中に、体調を崩す子どももいました。頭痛を訴え、先生が話を聞くと、涙がこぼれ落ちました。いつもとは違う学校の環境に、「不安」を感じたと言います。
母親が迎えに来て、早退することになりました。「頭がくらくらもする。もし、コロナに自分が感染していたら、みんなにうつしちゃう可能性があるから帰ろうと思って」と話してくれました。お母さんは、「昨日、本人は、すごく楽しみにしていました。行きたいという気持ちもあったが、生活のリズムがルーズだったところが、来てみたら気持ちが負けちゃったんですかね」と休校の影響を心配していました。

体調の変化も…

体育の授業で佐々木先生が感じたのは、子どもたちの体調の変化です。
雨だったため教室で行われた、一人一人の体の違いを知る授業。前屈をすると、床に手がつかない生徒がたくさんいました。佐々木先生によると、休校中、体を動かしていなかった子どもが多く、柔軟性が大きく失われていると言います。元の状態まで戻すには時間がかかるのではないかとのことです。「柔軟性はあんまりよくないなという印象はありましたね。やっぱり運動していなかったらそうなりますし」と指摘します。

学習意欲の低下を懸念

長期休校による生活リズムの乱れ。そして体調の変化。これによって佐々木先生が懸念しているのが、「学習意欲の低下」です。
学校は休校中に学習意欲を維持するために、オンライン向けの教材を提供。生徒は自分たちの好きな時間に活用していました。しかし、職員のオンライン会議で報告されたのは、“いつでも見られる” という気持ちの緩みなどから、“子どもたちの意欲を保つことは難しい”ということでした。
佐々木先生は、「オンライン学習の進度が、やはり6年生でも差があるということが分かりました。モチベーションも低いこともあるので、何を目標にやらせていけばいいのか課題にあがっています」と伝えました。他の先生からも、「子どものモチベーションが今日の雰囲気を見ていると下がっている」、「動画を見ていない生徒が多かったので、見てもらえるようにする仕組みを考える」など、初日の課題が続々とよせられました。この日、初めて教室で会った子どもたちと先生。佐々木先生は、まずは子どもたちに学校に安心してきてほしいと考えています。

埼玉県 戸田第一小学校 佐々木大輔先生
「ある程度こっちも自然体でこっちが明るくないと、まだ関係ができていないので、話そうにも話せないと思います。まずは居場所作りからなので、苦しいなとか、何か大変だなという思いを持たないような環境を作りたいです。」

先生の過労も懸念

一方、先生たちも問題を抱えていました。3か月ぶりに再開した学校。膨大な提出物のチェック、オンライン授業の準備などで、負担が大きく増えています。さらに、感染の第2波に備えての消毒や管理なども請け負っていました。
学校が始まる直前、北九州の小学校で集団感染が発生したニュースが飛び込んできました。それに対して高橋校長先生は、「本当に正直、他人事ではない。たぶん2週間後本校でも起こりうる可能性はいくらでもある。緊急事態だからってことで結構無理して職員は働いていると思います。なので、突然ストンと燃え尽きてしまう、バーンアウトしてしまうのが心配だなと」話します。教育現場に詳しい教育研究家の妹尾昌俊さんも、「先生たちの過労死のリスクが高まっている」と危惧しています。現在、政府も対策を考えており、約3,000人の先生を増加するのを検討しています。しかし、これは10校に1人程度。現場からは、「先生の人数が足りない」という声がたくさんあがっていました。

学習の遅れ取り戻すことも大切だが、まずは安心して来られる環境を

また、妹尾さんは、学習の遅れを取り戻すことは大切だが、まずは学校に安心して来られる環境を作ることを優先すべきだと指摘します。

教育研究家 妹尾昌俊さん
「昼夜逆転するなど、学校に行きたくないという子どもさんもいると思う。学習を進めよう、進めようというよりは、まずは子どもたちの声を聞いていただきたいです。悩みや困っていること、自分の気持ちを打ち明けられる心理的安全を確保するための関係作りをやっていくことが重要です。」

埼玉県の教育委員会は臨床心理士の協力などを得て、先生が子どもたちにどう向き合ったらいいのか、リーフレットを作成しました。自分は受け入れてもらっているという 『笑顔』や、関心を向けていることを示す『話をよく聞く』こと、また、大事にされていることをあらわす『1人1人を認める』などを大切にしてほしいとしています。「学びを止めない」ことも大切ですが、いかに「安心で楽しい」学校にするのか、子どもたちの心のケアをするのかが重要なことが分かりました。

取材:髙松奈々ディレクター

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