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2020年6月9日(火)

“続けられないかも…” 国産マスク増産の課題

私たちの生活に欠かせなくなったマスク。一時の不足は、少しずつ解消していますが、感染拡大の第2波、第3波も懸念されることから、政府は国内メーカーに増産を働きかけています。

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マスクなどの生産設備の導入を促すために、政府が設けた補助金は35億円。その補助金を得て増産に取り組み始めた企業28社のうち、23社が中小企業です。しかし、このところマスクの価格が下がり、生産に乗り出した中小企業の中には、今後生産を続けられるのかという危機感を持っているところがあることが取材から明らかになりました。

“儲けを出せない” メーカーの悲鳴

取材したのは、兵庫県・尼崎市にある、従業員およそ50人のメーカーです。本業は業務用洗浄機の製造ですが、国からの補助金を得て、新たにマスクの生産設備を導入しました。
社長の藤村俊秀さんは、マスクの安定供給に貢献したいと、新規参入を決めましたが、いま課題に直面しているといいます。設備を導入して3か月、ようやく先月(5月)マスクの販売にこぎ着けましたが、利益がほとんど出ないのです。マスクの価格は現在1枚あたり約50円。生産コストや材料費を差し引くと、赤字覚悟で販売しなければならないといいます。

背景にあるのは中国産マスクの価格の低下です。都内の店舗を取材すると、一時、止まっていた中国産のマスクの入荷が、4月末から戻り始めていました。1か月前、1枚あたり約74円だった価格が、日々値下がりしているといいます。兵庫県内では、1枚あたり20円台で中国産マスクを販売している店舗もありました。

価格競争に向き合う中小規模企業

より安くマスクを生産することはできないか。藤村さんは、新たな生産設備を導入しようとしています。生産量を4倍に増やし、製造コストを下げるのが狙いです。追加の投資額は約4,000万円。すべて自己資金です。しかしそれでも、価格では中国産マスクに及びません。

そこで、藤村さんは、 中国産との差別化を図ろうと、新しい素材を使ったマスクを作ろうとしています。
着目したのは、コーヒーフィルター。軽く通気性も良いコーヒーフィルターを使うことで、これから需要が高まる夏用のマスクを作れると考えたのです。中国製にはない特徴をアピールし販売数を増やすことで、マスク事業を安定させようとしています。

ショウワ 藤村俊秀社長
「赤字が、あまり続くようであれば、それは本業に差し支えてくるので、それはどっかで線引きをしなくちゃいけないですけど、差別化っていうところを前面に押し出していけたらなと思っています。」

安定供給へ 高まる国内メーカーの役割

政府は依然、マスクが十分な供給量には達していないとみています。国内メーカーによる増産などで4月は、少なくとも7億枚を超えるマスクが供給され、 5月には8億枚に達したと見込まれます。
しかし、仮に国民全員が1日に1枚に使うと想定すると、ひと月で30億枚以上が必要になる計算です。

世界各地で第2波、第3波が懸念されています。日本にマスクが入ってこないという事態になると、再び、店頭からマスクがなくなる懸念があります。マスク・メーカーの業界団体では、価格競争の激化を懸念しています。

全国マスク工業会 髙橋紳哉専務理事
「価格競争の激化によって、この10年、マスク供給の中国依存が進んだ経緯がある。国内メーカーが品質の差別化などを図って生き残れないと、再び深刻なマスク不足が繰り返される恐れがある。」

取材した中小規模のメーカーの中には、販売価格がどうしても割高になるために買い手がつかず、生産がストップしているケースもありました。政府は5月、別の補助金を新たに設け、国産マスクの支援拡充に乗り出しましたが、こうした支援がマスクの安定供給につながるのか、注目されます。

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取材:木庭尚文記者(NHK神戸)
   佐々木祐輔ディレクター(おはよう日本)・餌取慎吾ディレクター(おはよう日本)

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