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2020年6月11日(木)

都心のオフィスは必要?大企業で始まった議論

最近、ベンチャー企業を中心にオフィスを減らす、移転するといった話を耳にするようになりました。その流れは大企業にも広がりつつあるようです。産業用ランプなどを生産するウシオ電機は、グループ企業も含めると5,000人を超える従業員がいる大企業です。本社は東京・丸の内のビル。2つのフロアを借りてオフィスとして使っています。しかし、テレワークが定着して出勤する従業員が減る中で、そんなに広いオフィスが果たして必要なのか、議論が始まっています。

テレワーク化を進めればオフィスは減らせる?

ウシオ電機の本社オフィスでは、かつて1日あたり平均130人が出勤していました。しかし、緊急事態宣言が出たあとは業務のテレワーク化が進み、解除後のいまも10人ほどしか出勤していません。
そこで、経営陣に1つのアイデアが浮上しました。「1週間のうち3日ほどテレワークをする」といったルールを永続的に設けるアイデアです。うまくいけばオフィスのスペースを削減し、賃料の支払いを下げることもできます。

ウシオ電機 内藤宏治社長
「必要以上のスペースを持たないでいいということはもちろんある。経営として非常に大事なこと。働き方の選択肢が生まれたせっかくの機会なので考えずに止まってしまうと、今回得たものに対して逆行するのではないかというのが私の感覚。」

オフィスを見直すメリットは?

東京23区の場合、オフィスのスペースを維持するためには、従業員1人あたり月に7万円から9万円ほどかかるとテレワークに詳しい専門家は試算しています。そして、テレワークを推進してオフィスを見直せば、企業のコストカットはもちろん、社会全体にとっても大きなメリットがあると指摘します。

東京工業大学 比嘉邦彦教授
「経営者にとっては生産性がトントンであれば、それ以外のメリットが明確なのでやる意味がある。都心のオフィスは減るかも知れないが、一極集中の是正にもつながるし、郊外の経済も活性化する。社会全体で見ると実はメリットがある。」

簡単ではないテレワークの一律ルール化

ただ、大企業でオフィスを見直すとなると簡単にはいかないこともあります。
ウシオ電機の場合は、テレワーク化を進めることが前提になっていますが、それによって業務に支障が出ないか、従業員への聞き取り調査が始まっています。本社の経営企画部に所属している社員は調査に対して、テレワークを増やしても問題ないと答えました。

経営企画部の社員
「出社した最後は4月7日だったのでもう2か月前。コミュニケーションもしっかりとれるし、資料の共有もできるので、対面とあまり変わらないレベルで仕事に取り組める。」

一方、いわゆるオフィスワークではない仕事をしている人はどうなのでしょうか。
横浜にある事業所には、新製品開発のための実験などを行っている部署があります。実験をするにはどうしても出社する必要があり、週に3日などテレワークのルールを決められると、思い通りに実験ができなくなる可能性があるといいます。

技術開発部の管理職
「週に何回と決めてしまうと、この週は実験をつめてやりたいといった時などにできなくなってしまう。」

一律のルールを作ると、テレワークができない部署に不満や不公平感が生じかねず、いったん立ち止まって考える必要があると分かりました。

オフィスでしかできない仕事とは?

テレワークを進める中で生まれたオフィス見直しの議論。ウシオ電機がたどりついたのは「オフィスでしかできない仕事は何か」、原点を見つめ直して、改めて議論を始めることでした。

ウシオ電機 内藤宏治社長
「オフィスというのは何人かで話をしたり、直接話をすることによって新しいアイデアを生み出す場所みたいな、そんなふうな定義になってくる可能性があると思う。一番大事なのは、オフィスや自宅のいいところ取りをしてどう使っていくか考えることではないか。」

こうした大企業でもオフィスの見直しという大きな変革の兆しが見られることについて、東京工業大学の比嘉教授は、「これから10年20年先を見ると都心の一等地に本社ビルがある会社よりも、テレワークをうまくやっている会社の方が、人材確保も有利になって、業績もあがってくるはず」としています。

取材:塩田慎二アナウンサー
   岡本直史ディレクター

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