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2020年6月14日(日)

感染対策とどう両立? 求められる「新たな介護」とは

新型コロナウイルスの終息が見通せない中、介護の現場では、感染対策とサービスをどう両立させるかが課題になっています。広島県三次市では4月に、市内の介護事業所で、新型コロナウイルスのクラスターが起き、これをきっかけに、感染者がいない事業所も含め、市内の9割の事業所が自主的に休業・縮小する「休業連鎖」が起きました。徐々にサービスを再開したものの、これまでとは違った介護のあり方が求められています。模索する現場を取材しました。

<この記事のポイント>
◆受け入れを再開した事業所では、感染防止対策を取ると、これまで行ってきた介護がしづらいケースが多く、サービスをどう行っていくか模索が続いている。
◆入所型の施設ではオンライン面会を行うなど、感染リスクを減らしながら人と触れ合う機会を作ろうという動きも。
◆一方で、感染した高齢者が退院した後、施設での受け入れが十分に進んでいないという課題も出てきている。

受け入れ再開 模索する介護現場

1か月ぶりにデイサービスに向かう92歳の女性です。

送迎を行うスタッフ
「手のアルコールの消毒をしておきましょう。」

施設に行く前から、感染対策が求められるようになりました。送迎の車に乗る前に、手の消毒と検温を行い、体温が37℃以上あれば、施設に行くことは出来ません。

この施設では感染者は発生しなかったものの、自主的におよそ1か月間休業し、県内で新たな感染者が減ったことなどから5月上旬に再開しました。リハビリなど室内での活動では、密を避け、利用者同士の距離をあけるようにしました。さらに集まって行っていたゲームや工作などは、中止することにしました。

飲食の時など、マスクを外さなければいけないときは、会話は遠慮してもらうルールにしましたが、取材の際は、つい話をしてしまう利用者の姿も見られました。施設では会話やふれあいを大事にしてきましたが、これまでどおりの介護ができない状態が続けば、利用者の認知機能などが低下しないかスタッフは心配しています。

施設のスタッフ
「ここの施設の良さは、アットホームにみんなで囲んで1つのことを制作することでした。皆さん楽しんでいたと思うんですが、今は、それとは感じが違うのかなと。」

「入所型」施設 オンラインで触れ合いの機会を

高齢者が暮らす「入所型」の施設では、感染リスクを減らしながら、利用者が人と触れあう機会を確保しようとしています。この施設では、家族との面会を制限しましたが、代わりに、オンラインで会話できる仕組みを整えました。

オンラインでの会話を行ったこちらの女性は、4月に入所した95歳の母親が施設になじめているのか心配していました。


「もう少ししたら、コロナが終息したら直に会えるからね。」


「よろしく言っといてね。」

1か月、会えていなかった母との10分間の会話でした。

オンラインで母親と面会し話をした女性
「顔が見られるから安心ですね。最初は涙を流していたけれど。いまは良くしてもらっていると言っていましたので、安心しました。」

この施設では、その後、6月上旬からは広島県内に住む家族に限って15分以内の面会が認められるようになりましたが、市内では今も多くの施設が面会を制限しています。

感染した高齢者 退院後の受け入れは?

一方、いま現場で新たな課題となっていることがあります。三次市では20人以上の高齢者が感染しましたが、陰性となって退院したあと、施設での受け入れが十分に進んでいません。

介護施設に通っていた83歳の母親が感染した女性です。母親は1か月入院したあと自宅に戻ってきましたが、認知症は進行し食事や排泄を1人で行うことが難しくなりました。

これまでのデイサービスだけでは足りないと考え、入所できる施設を探しましたが、1か月たったいまも、見つけることができないでいます。

母親が感染した女性
「認知症の人のグループホームとか、預けられる施設が見つかればいいのですが、見つかるかどうか不安です。」

正しい知識を広め 受け入れを

今回、三次市の介護事業者の中には感染症対策のノウハウに不安を抱え、一度感染した高齢者の受け入れに慎重なところもありました。市ではこうした状況を改善しようと、市内の公立病院が中心となり、介護事業所の関係者を集めて、感染予防について学ぶ講習会を5月中旬から行っています。

その中では、新型コロナウイルスの感染予防には、マスクの着用や消毒など基本的な対策を徹底することが重要といった正しい知識を伝えていて、そうすることで高齢者の受け入れを進めていきたいとしています。

第2波、第3波に備え 今後、必要なことは?

マスクを着用していると声が聞きづらかったり、入浴の介助の際には体を密着させて利用者を支えることが必要になったりするなど、感染対策と介護の両立には難しさがあり、職員たちは苦戦しています。また、介護では会話やふれあいが特に重要で、ほかの利用者や職員との関わりが運動や認知の機能強化につながるとされてきました。それができない現状は、介護の根幹が揺らいでいるとも言え、現場からは高齢者の健康への影響を心配する声も聞かれています。依然感染のリスクがある中で、どうやって事業を続けていくか現場では新たなサービスの形が求められています。

さらに経営面での支援も重要な点だと思います。休業や縮小によって、三次市の多くの事業所では収入が減少しました。現在はサービスの再開が広がっていますが、感染を恐れて利用を控える人もいて以前のような経営状況に戻ることが難しい施設もあると見られます。国や自治体などには、経営面の支援や、マスクなどの物資の確保など、介護施設がサービスを維持するための必要な対応が求められていると言えそうです。

取材:川上杏子ディレクター、大小田紗和子ディレクター、伊藤詩織記者、石川拳太朗記者(NHK広島放送局)

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