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2020年6月17日(水)

脱・島型 オフィスが変わる?

新型コロナウイルスとの戦いが長く続くことも見込まれる中で、いつも決まった自分の席で、同僚たちと向かい合って働く、見慣れたオフィスのレイアウトが、変わろうとしています。どう変わるのか、キーワードは“脱・島型”です。

<この記事のポイント>
◆“島型固定席”レイアウトがオフィスの感染リスクを高める可能性が。
◆“脱・島型”のカギは、テレワークとオフィス勤務の組み合わせ。
◆家とオフィスの上手な使い分けで生産性アップ。

“島型固定席”オフィスに感染リスクの懸念

都内のオフィス家具メーカーにはいま、30社を超える企業から、オフィスでの感染が不安だという相談が寄せられています。

「飛まつを心配するお客様が多い。」
「相手が見えない敵なので何をしたらいいのか。」

そうした声を受け、このメーカーではさまざまな感染対策を提案しています。
飛まつ防止のパネルに、ドアノブでの接触感染を防ぐ自動ドア。

発信器で社員の位置情報を記録し、万が一感染者が出たときに、濃厚接触者を見つけやすくするシステムもあります。

感染対策を最も難しくしているのが、日本のオフィスの8割以上を占めるという「島型固定席」のレイアウトです。島型とは、グループごとに“島”のように集まって座る配席のこと。

韓国では、この島型レイアウトのコールセンターで、1つのフロアで94人が感染したケースがありました。互いに近い距離で向き合い、飛まつがかかりすいため、感染リスクが高いとされています。

オカムラ 藤原篤さん
「狭いスペースにたくさんの人を入れるためには、島型対向式レイアウトは非常に良かったのですが、イコール密集・密接が発生するので、今後は変えていかないといけないかもしれない。」

“脱・島型” レイアウトを見直す企業も

こうした中、「脱・島型」に向けて動きだした企業もあります。
宮崎県のIT企業では、この秋、オフィスの移転を計画していますが、全国的な感染拡大をきっかけに、そのレイアウトを抜本的に見直すことにしました。
当初の計画で予定していたのは、200席の島型の固定席。しかし、経団連が推奨する「なるべく2メートル」のソーシャルディスタンスを取ろうとすると、社員が半分しか入らなくなってしまいます。

クラフ 藤崎将嗣社長
「社員全員を入れようとすると、広大なスペースが必要となり、膨大なコストがかかってしまう。」

そこでこの会社では、テレワークとオフィス勤務と組み合わせることで、出社人数を大幅に減らすことにしました。

新しいオフィスの図面では、席と席の間に十分な距離を確保。席数は社員の5分の1に減らし、出社した人が誰でも座れるようにしました。(※接触感染を防ぐため3時間ごとにアルコール除菌する予定)
さらに、テレワークの弱点を補う工夫もしました。

その1つが若手の教育。オンラインでは、相手に伝わっているのか分からず、やりづらかったため、新しいオフィスには「十分な距離」をとって学べる研修室を設置することにしました。

クラフ 藤崎将嗣社長
「オンラインでは精神的な充足感を得づらいところがあり、やはりオフィスでの対面的なコミュニケーションも必要なんじゃないのか。新しい働き方に向き合わないといけないと思います。」

島型オフィスの次に来るトレンドは?

島型固定席のオフィスは、高度経済成長期、狭いスペースで多くの人が働ける、パソコンもない時代に対面でコミュニケーションしやすいということで普及しました。
しかし、新型コロナウィルスの感染拡大で、密集が“リスク”と捉えられるようになり、オンラインでもコミュニケーションできるようになって、見直しの気運が高まっています。
次の時代のオフィスのあり方はどうなるのか。今後重要になるのは、家やオフィス、どこでも働ける時代だからこそ、家とオフィスをどう上手に使い分けて生産性を高めるかです。

家とオフィスを使い分ける時代 変わるオフィスの役割

いち早く、こうした発想を取り入れたのが、従業員3万4,000人の大手食品メーカーです。
3年前、家とオフィスのどちらで働いてもよい「どこでもオフィス」という制度を導入し、島型固定席のレイアウトも一新しました。

人事部の菊地さや子さんは、テレワークとオフィスを併用するようになって、「仕事の内容に応じて、最も効率が上がる場所で働く」ことを意識するようになったといいます。

たとえば、個人で行う作業は、話しかけられて中断されることが少ない自宅で。日常的な打ち合わせもテレワークで行います。一方で、アイデアを出す会議や、雑談による情報収集はオフィスでこそ生産性が上がると考えています。この会社では、こうした雑談や会議が活性化するよう、レイアウトにも工夫しています。

島型固定席をやめて作った自由に座れる席は、複数の部署が混ざり合って使う仕組みにしています。
(※机は定期的に拭いています)
これには、テレワークでは減ってしまう「部外の人との雑談」をしやすくするねらいもあるんです。自分の仕事に役立つ情報や思わぬヒントを、効率的に得られると言います。

さらに、会議を活性化する工夫もあります。オフィスには新たに、少人数用の打ち合わせスペースを数多く作りました。大人数で情報共有するだけの会議はなるべく行わず、絞り込んだ人数で、中身のある議論をすること大切にしています。すぐに本題に入れるよう、資料は事前に目を通すのがルールです。
こうしたさまざまな取り組みで、生産性が上がり、社員の労働時間あたりの売上高はおよそ1割上昇。タ方4時半に仕事が終わる社員も増えています。

味の素 人事部 菊地さや子さん
「仕事によって場所を選ぶっていうことはやっぱり有効なのかなと思いました。クリエイティビティが生まれるよう、場所を使い分ける働き方は、コロナを機にさらに加速すると思います。」

今後のオフィスのレイアウトに求められるものとは。

日本オフィス学会 松岡利昌会長
「これまでのオフィスは、個人の作業も人との議論も全部やる場所でした。しかしこれからは、『人と人がリアルに会わないとできないこと』をより活性化させるようなレイアウトが重要になってくると思います。」

取材:蓮見那木子ディレクター

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