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2020年6月18日(木)

新型コロナ 病院が直面する“もう一つの医療崩壊”

第2波への備えが求められるなかで、いま問題になっているのが「医療機関の赤字」です。
感染者の治療にあたった全国の病院を対象に行ったアンケート調査によると8割近くの病院で4月の経営が赤字に。最前線で新型コロナウイルスと闘ってきた病院が経営的に苦しい状態におかれているという実態が見えてきました。

新型コロナウイルスの感染者受け入れも 経営難に

東京都葛飾区にある民間の救急病院では、都の要請を受けて2月から新型コロナウイルスの感染者を受け入れてきました。

院内感染を防ぐため、病院の駐車場にテントを張って臨時のPCR検査場を設けています。きのう(17日)までに600件以上実施。入院が必要な軽症患者をこれまでに45人、受け入れてきました。

3か月以上新型ウイルスと戦ってきましたが、この病院はいま、経営的に苦しい状況に置かれています。
東京で感染のピークとなった4月には、収入は15%減少していました。

大桃丈知医師
「多数の患者さんが発生しておこる医療崩壊と違う意味での“経済的な医療崩壊”が、いま一番懸念されるところかと思います。」

新型ウイルスへの対応を優先し、急を要さない手術を延期するなどしてきたことが収入の落ち込みにつながりました。

入院要請のためのベッドが…

さらに、感染のピークが過ぎると感染者専用のベッドが埋まらないという問題に直面しました。この病院では203床のうち26床を使って隔離病床を設けていました。感染者の入院は徐々に減少しましたが、いつ入院要請が来るかわからないため、ベッドを確保する必要があると判断したのです。1日あたり数十万円の収入が失われました。

平成立石病院 大澤秀一院長
「やっぱりかなりコロナに特化してある程度の医療を展開しないといけなかったので、正直なことをいうと病院の業績はやっぱり落ちていますよね。当然ベッドも潰しているわけですから。」

緊急事態宣言が解除された今月(6月)はじめ。およそ3か月ぶりに感染者用のベッドを一般向けに戻すことにしました。3時間以上かけて消毒を終えたその時でした。葛飾区からPCR検査陽性の患者の受け入れ要請が来たのです。

この日はほかの病院が受け入れることになりましたが、いまもなお患者の入院要請は続いています。今後、この病院では感染者が増加した場合は、再び入院患者を受け入れる態勢を整えることにしています。

平成立石病院 大澤秀一院長
「コロナで減収になったから店を畳みますというわけにはいかない。いざとなればやらなきゃいけないという覚悟をもって準備していくというところだと思います。」

診療報酬引き上げも足りない?

国は重症の感染者を受け入れた場合の診療報酬を通常の3倍に引き上げました。中等症や軽症者、そして感染が疑われたけれど陰性だった人に関しては、状況に応じて加算が行われることになっています。
病院は軽症者の治療にあたってきましたが、大澤院長は「入院患者の減少による収入悪化に加え、新型コロナに感染した患者の医療には医療資材の確保などコストがかかるため、加算されたとしても赤字部分を補填できるか見通せていない」と話しています。

一般の外来患者の減少で経営難に

さらに取材を進めると、一般の外来患者が急激に減少したため、経営に大きな影響が出たという病院もあることが分かりました。
埼玉県の小児専門病院では、新型コロナウイルスの感染の疑いがある患者を受け入れ始めてから、一般外来の患者が急激に減少しました。開業して40年近くになりますが、こんな厳しい状況は初めてだといいます。

医療機関での感染を恐れ多くの親が受診を控えたこと、そして自粛生活によってケガや病気の子どもが減ったことが理由だと、この病院では考えています。

4月以降の収入は普段の半分にまで落ち込み、1か月の赤字は5,000万円ほど。一部の職員を休業にして人件費を削るなどしてきましたが、限界が近づいているといいます。

土屋小児病院 土屋喬義理事長
「この状態が続くとあと3か月くらいでいままで蓄えていたお金を使い果たしてしまいます。この病院を続けるか続けないかが1つの選択肢になるかもしれません。」

一般の患者が減った場合の補償は?

感染疑い患者については補償がありますが、一般外来患者の減少では補償の対象にはなりません。

もともと、多くの医療機関の経営は国の制度で利益をあげにくい構造になっているため、今回のように患者が減ると、赤字に陥ってしまうという病院が数多く出たのです。

今回取材した医療機関の中には、数年かかっても回復できない赤字を抱え、スタッフへの手当ての削減を検討する病院もありました。こうした病院の経営が行き詰まり、閉鎖してしまうと行き場を失う患者が増え、ほかの医療機関の負担になります。その結果、地域医療全体に大きな影響を与えてしまう懸念もあります。

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