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2020年6月21日(日)

「持続化給付金」 給付を阻むハードル

新型コロナウイルスの影響で、売り上げが落ち込んだ事業者を支援する「持続化給付金」は、最大で中小企業などは200万円、個人事業主は100万円が支給されます。これまで(2020年6月11日時点)およそ150万件の給付が進む一方、制度のはざまで給付を受けられないなど、さまざまなハードルがあることが明らかになってきています。その実情を茨城県で取材しました。

<この記事のポイント>
◆申請の条件が「売り上げが50%以上減少」。この条件が厳しいという事業者も多く、独自に支援をする自治体も出てきている。
◆申請は「原則オンライン」のため、特に高齢者の事業主にとってはハードルが高い。確認や修正で時間がかかる場合も。
◆給付額の上限が一律のため、実態に見合った給付になっていないという指摘も出ている。

“売り上げ50%以上減”申請の高い壁に

茨城県土浦市で高齢者の送迎を行っている、会員制の乗り合いタクシー事業者です。年会費に加え1回につき600円を支払って利用する仕組みで、年間のべ1万5,000人が使っています。新型コロナウイルスの感染のリスクを避けて、病院や買い物へ行くのを控える利用者が急増し、この事業者も経営に大きな影響を受けました。5月は、利用者の数が半分以下まで落ち込み、これまでにない60万円以上の赤字になりました。

そこで、頼りにしたのが「持続化給付金」でした。しかし、申請のハードルとなったのが、給付の条件。ことし(2020年)のいずれかの月の売り上げが、去年(2019年)と比べ50%以上減少していなければなりません。

計算してみたところ売り上げの減少率は32.7%で条件には届きませんでした。利用者は大幅に減っていたものの、年会費も売り上げに加わるためです。いまは、預金を取り崩してしのいでいますが、このまま赤字が続くと、廃業も視野に入れざるを得ないといいます。

のりあいタクシー 土浦塚本眞芳事務局長
「運営していくための資金が現状ではとてもとても厳しい状態です。」

こうした事業者は数多く、土浦市が調べたところ、売り上げの減少率が30%以上50%未満の事業者は全体のおよそ2割、1,300近くに上ることが分かりました。市ではこうした事業者を支えようと独自の支援策を打ち出すことにしましたが、国の持続化給付金が最大200万円なのに対し支給額は20万円で、予算が限られる中での措置です。

土浦市商工観光課 渡邉淳夫さん
「金額的な面で言えば、十分ではないかなとは思っておりますけども、いくらかでも助けになれば。」

厳しい申請条件 自治体への支援も必要

地方の中小企業の多くは、手持ちの資金が少ないので厳しい状況です。
そうした企業を支援しようと茨城県内では44のうち20あまりの市町村で、対象外となった事業者へ独自の支援策を実施・検討しています。これまでに申請件数はおよそ600件に上っています。しかし、地方自治体の財政も厳しいので給付額には限界があります。

国や地方の財政政策などに詳しい慶応大学の井手英策教授は「地元の自治体が事業者の状況を一番よく把握しているので、国は、地方への交付金などを充実させ、後押しする必要がある」と話しています。

高齢事業主阻む“オンライン”の壁

ハードルは申請の条件だけではありません。原則「オンライン申請」ということも、特に高齢の事業者などにとってハードルになっています。

茨城県常陸太田市で、夫婦でそば屋を営む島根良雄さん、85歳です。この店も、新型コロナウイルスの影響を受け4月の売上げが、7割以上落ち込みました。島根さんは給付金の申請をしようと考えましたが、インターネットを使ったことがありません。

そば屋を経営 島根良雄さん
「少しくらいの計算は暗算でやっています。パソコンはできません。ないですし。」

島根さんは地元の商工会に相談し、サポートを受けながら申請することにしました。

商工会職員
「裏面はこちら。」

島根さん
「大丈夫ですね。」

商工会職員
「クリックをお願いしていいですか。」

島根さん
「クリックって?」

商工会職員
「人さし指でここ押してもらえますか?」

商工会では、先月(5月)からこうしたサポートを進めていますが、今も、30を超える事業者が申請できておらず、そのほとんどが高齢の事業主だといいます。

常陸太田市商工会 佐川和広事務局長
「80歳を過ぎた人にはオンライン申請はハードルが高いと思う。最終的に申請できなかったとは、ならないようにしたい。」

島根さんは5月末に無事、給付されました。しかし、全国では申請の4割でなんらかの不備があり、確認や修正で時間がかかる場合も多いという事です。経済産業省は、専門のスタッフが支援するサポート窓口を全国に設置して対応を進めています。

“給付金が不十分”実態にあった支援 求める声も

「持続化給付金」を受け取れたとしても、事業を継続する上で十分でないケースも出てきています。給付額の上限が中小企業などは200万円、個人事業主は100万円となっていてこの額が実態に見合っていないという声が上がっています。

水戸市で11年前から洋服店を営む三次智之さんは、個人経営でスタッフと2人で店を切り盛りしてきました。この店でも売り上げが大幅に減少し持続化給付金を申請しました。100万円の給付金の支給を待っていますが、それだけでは十分ではない事情があります。

実は、ことし4月に新たな複合型施設をオープンし事業を拡大する予定だったのです。新たな土地を借りてレストランや美容室など7店舗を展開する予定で、従業員を7人にまで増やしました。しかし、新型コロナウイルスの影響でオープンは8月に延期となりました。さらに、感染対策の追加工事のため200万円ほどかかる上、従業員には、毎月あわせて175万円の給与を支払い続けています。開業のため金融機関から借り入れた資金の残りも少なく100万円の給付金では十分ではないと言います。三次さんは、それぞれの事業主の実態をふまえた上での支援を求めています。

三次智之さん
「この現状でやっぱりやりませんなんて言えませんし。実際の所をもうちょっとみていただければ助かるかなと。」

求められる きめ細かい支援

なぜ給付の上限が一律なのでしょうか?
それは、持続化給付金は事業者へ迅速に現金を届けることが目的とされているからです。それぞれの事業者の実態を細かくチェックして額を決める制度ではないので、個別のケースに対応し切れていないのです。

持続化給付金以外の支援として国は、第2次補正予算で店舗などの賃料の負担を軽減する追加支援や「新型コロナウイルス感染症特別貸付」という融資制度の拡充を盛り込んでいます。

このうち特別貸付は、国の支援によって金融機関から実質的に無利子で融資を受けられる制度です。ただ、これは対象がすでに営業実態のある事業に限られ、三次さんが最初に申し込んだ金融機関では新しい店舗については対象にできないなどといった説明を受けたということです。

個別のケースを見るとまだ、そのはざまに陥って支援が足りない場合もあり、それぞれのケースに応じたきめ細かい支援制度が必要だと言えそうです。

取材:内田めぐみディレクター、平山佳奈記者、大野敬太記者(NHK水戸放送局)

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