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2020年6月22日(月)

地方銀行 新型コロナで変わる役割とは

新型コロナウイルスは全国各地の経済活動に深刻な影響を及ぼしていますが、企業の資金が尽きないよう支えているのが地方の銀行です。お金のやりとりだけをするイメージが強い銀行ですが、さらに踏み込んだ支援も行っています。地方銀行にいま何が求められているのでしょうか。

地銀が発案した“オンライン陶器市”で1,000万円を売り上げ

400年以上の歴史がある焼き物の町、長崎県波佐見町。毎年、大型連休に合わせておよそ30万人が訪れる陶器まつりを開催してきましたが、ことし(2020年)は新型コロナウイルスの影響で中止に追い込まれました。
佐世保市に本店を置く親和銀行の長尾和弘さんは、コロナ禍でも外出せずに買い物を楽しめるオンラインでの陶器市をみずから提案しました。こうした取り組みは新たな顧客を取り込むチャンスにもなると考えたからです。

親和銀行地域振興部 長尾和弘副部長
「この陶器は、若者層にすごく刺さる商品じゃないかなと思っています。」

陶器市に参加したのはわずか3社でしたが、およそ2週間で想定の3倍を超える1,000万円余りを売り上げました。参加した陶器商社は、今回の取り組みをきっかけに新たなヒントを得られたといいます。長尾さんは、テーマを設けて陶器のセットを作ったうえで価格設定を分かりやすくするようアドバイスした結果、商品は完売。家族や飲食店向けに同じ色や形の陶器をまとめて販売していた従来の方法に比べ、ネット通販では見栄えのよいセット販売の方が受け入れられたのです。

また、成功の裏には、地方銀行の強みを生かした、ある仕掛けがありました。
銀行口座を管理するスマートフォン向けアプリの利用者、およそ100万人のリストをもとに宣伝メールを配信。銀行からのメールは、通販サイトなどからの宣伝メールと比べてもよく見られ、陶器市サイトの閲覧数はのべ187万回にも及びました。

好評だったオンライン陶器市。長尾さんは来月(7月)、もう1度開催しようと準備を進めています。新型コロナウイルスの影響で、この窯元は主な取引先だった百貨店や専門店からの注文も激減しました。

親和銀行地域振興部 長尾和弘副部長
「リアルのお客さんがどんどん減ってくると思うので、そこをオンラインでカバーしていくというやり方になればいい。」

商品の撮影や紹介コメントの作成といったノウハウまで提供してもらえることが決め手となり、今回初めてオンライン販売への参入を決めました。

窯元社長
「分からないことだらけなので、1から教えていただけるのはすごく助かります。」

来月の陶器市に参加するのは29社と、組合に所属するおよそ半数にまで増えました。長尾さんは、地方銀行が生き残るにはこうした地場産業を守る取り組みが不可欠だと考えています。

親和銀行地域振興部 長尾和弘副部長
「地方創生に今から前向きに取り組まないと人口も減少し経済も疲弊していく。1つ1つの地域活性化の取り組みが回り回って最後に銀行にも収益が戻ってくると思っているので、5年先10円年先を見据えた取り組みを継続的に行っていきたい。」

取引先同士をつなぎ 課題解決を

企業はいま、新型コロナウイルスに対応して働き方を変えなければビジネスを続けられないと危機感を強めています。それを支援するのも銀行の喫緊の課題になっています。

横浜市に本店がある横浜銀行では、先月(5月)から“ウィズコロナ”での客の課題を解決するための相談サービスを始めました。まず銀行は取引先の企業の悩みを聞き取ります。そして温度センサーや電子契約、テレワークのシステムなど、課題を解決できる会社を紹介。企業が興味を持てば両者をつなぎ、オンラインで面談や契約を行うことができるのです。

横浜銀行 大宮由也調査役
「皆さんの働き方が変わってきている中で、働き方を変えていく支援を強めていきたいと考えています。」

この日大宮さんは横浜市の不動産会社を訪ねました。社長の和田崇さんは、再び感染が拡大する事態に備えテレワーク導入を考えています。社員6人で不動産の売買や賃貸アパートの管理などを行っていますが、不動産のオーナーや賃貸契約者の重要な情報は事務所のパソコンだけで管理しており、いまはテレワークをしたくてもできません。

丸三 和田崇社長
「いつか何か来るであろうという時のために自宅でも仕事ができるとか情報共有ができるとか、そういうサービスは会社として準備しておく必要があるかな。」

そこで銀行は、取引先のIT企業が開発したシステムを紹介しました。顧客から電話がかかってくると、これまで取り引きした内容や やりとりの記録が瞬時にパソコンに表示され、電話で話した内容を文字におこして共有することもできます。インターネットに接続するだけで利用できるため、感染が再び拡大しても自宅などから仕事を続けることができると、導入を検討することになりました。

丸三 和田崇社長
「お金というものを通してあらゆる業種の方と横浜銀行さんつながっているので、そういう意味では駅前でやっている狭い世界でやっていると外部の業種との困っていることがどういう業種で解決できるかわからないので、そういう意味では近くで安心もてる存在ですね。」

横浜銀行 大宮由也調査役
「金融支援だけでお客様が発展する時代ではないなと感じているので、我々がお客様の悩みを見つけたり一緒に気づいたりして解決することが必要なんだと思います。」

“地域を守る” 試される地方銀行

地方銀行では、経済活動が徐々に再開する中、本業のお金を貸すことだけではない様々な支援を模索しています。銀行に求められる最も大きな役割は、まずは資金をつなぐことです。
直近5月の統計で融資は前の年より5.1%増え、およそ30年ぶりの高い伸び幅となりました。しかし融資は借金です。企業の売り上げが回復しないことには貸したお金も返ってきません。銀行の取り組みには手数料などの儲けはほとんどありませんが、企業がコロナショックから立ち直ってもらうために銀行にとっても必要な取り組みなのです。

例えば山口銀行では売り上げが減少した飲食店の多くがテイクアウトを始めていますが、そうした飲食店の情報を発信するサイトを作り販売を支援しています。また城南信用金庫では全国の信用金庫のネットワークをいかして、オンライン商談会などを開いています。大手デパートに地域の特産品を売り込んだり、大手のメーカーに各地の中小企業の技術を売り込んだりしています。

地方銀行は地域の金融機関は人口減少や、長引く低金利でそもそも経営が厳しくなっていました。そこに新型コロナウイルスが地域経済に追い打ちをかけています。地方銀行の人たちはよく「地域を守るのが使命だと」話していますが、銀行みずからが生き残っていくためにもそれができるかどうか、いままさに試されています。

取材:保井美聡記者(NHK長崎)・ 野口恭平記者(経済部)

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