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2020年6月25日(木)

洋服が生産できなくなる? アパレル労働者の危機

私たちが普段着ている洋服は、アジアの国々で生産されたものが数多くありますが、こうした国々のアパレル労働者がいま、困難な状況に追い込まれています。新型コロナウイルスの感染拡大で、作ったモノが売れなくなったり、仕事そのものがなくなったりしているためです。これに対し、日本のアパレル業界のある支援プロジェクトが動き出しました。

アジアのアパレル労働者が大量失業の危機

ILO・国際労働機関などによると、感染拡大の影響で、解雇されたり自宅待機を強いられたりしているアパレル労働者は、べトナムでは88万人、バングラデシュでは228万人に及びます。さらに具体的な数字は明らかになっていないものの、大きな影響を受けているとされるのがインド。コットンの原料となる綿花では世界有数の生産国です。インド東部オリッサ州の綿花農家を訪ねました。

本来、綿花は収穫後すぐ糸に加工する工場に出荷されます。ところが工場がストップしたため出荷ができず、せっかく栽培した綿花は行き場をなくし、野ざらしになっていました。その後洗って売ったものの、普段の半分以下の価格でしか買いとってもらえなかったといいます。今後の見通しについて現地NGOスタッフは「このまま農家の生活苦が改善されなければ、今後は餓死する人が出てくる」と危惧します。

綿花農家 ティーロトマさん
「私の家族は収入が減って、満足に食事もとれていません。薬も買えず、病院にも通えません。」

あなたは服を買うだけ! インド農家の支援プロジェクト

現地ではいま、綿花を出荷して十分な現金収入が得られなかったことで、“種を買うお金がない”ことが問題になっています。これに対して日本のアパレル業界で、あるプロジェクトが動き出しました。インドの綿花農家の支援を行う「ピース・バイ・ピース・コットン・プロジェクト」です。12年前にスタートして、これまで綿花農家の子どもたちが学校に通えるようにするなどの支援を行ってきました。支援の対象となるのは、環境にやさしいオーガニックコットンの栽培を始めた農家です。

支援の仕組みはシンプルです。プロジェクトが作った100円、200円、300円のタグを、協力してくれるブランドの洋服につけて販売します。買った人は商品の代金とタグに表示されているお金をあわせて支払います。たとえば2,000円の商品を買った場合、1,900円は作ったブランドに行き、100円はプロジェクトの基金を経由して、インドの農家を支援することに使われます。これまでに集まったお金は1億円以上。ちなみにタグをつけられるのはオーガニックコットンを51%以上使っている洋服で、おもにネット上で販売されています。

プロジェクトには現在6つの企業が参加しています。仕掛け人は、通販会社執行役員の葛西龍也さん。感染拡大を受けて、現地の農家が“種を買うためのお金”をプロジェクトから支援しようと準備を進めています。タグを見た人には、洋服がどのような工程を経てお店にならんでいるのか、想像力を働かせてほしいといいます。

PBPコットン財団代表 葛西龍也さん
「お店で買うのはモノだけでなく、モノを販売する人の給料やお店の家賃だという気持ちが、感染拡大でこれまでより先に行ったと思います。農家にも子どもがいて、その未来も考えたときに果たして製品を買うだけでいいのか。そういった気持ちで、改めてお気に入りのものとかを見直してもらい、これまでと違う消費の動きが始まったらいいなと思っています。」

プロジェクトでは、いまアプリの開発を進めています。アプリでタグを読み取ると、子どもたちからのお礼のメッセージなどが掲載されているサイトが見られるようにする予定です。自分が洋服を買ったことで支援に回されたお金が、現地でどのように役立っているかをより実感しやすくするための工夫だそうです。ふたたび世界がつながったときに、作る人も、売る人も、買う人も、洋服に関わる人すべて人が幸せになる世界を作る。それが葛西さんの目標です。

取材:廣田直敬アナウンサー、越智望ディレクター

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