放送制度等に関するNHK意見 NHK information
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「個人情報保護法制化専門委員会ヒアリング」における意見
 
 NHKは、「個人情報保護の法制化」に関する政府の情報通信技術(IT)戦略本部個人情報保護法制化専門委員会によるヒアリングにおいて、平成12年7月14日、以下の意見を提出しました。
 
 
 社会の情報化の進展にともなって個人情報保護の重要性が増す中で、この度貴委員会が「個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整理)」をとりまとめられた労に対し、敬意を表します。
 同時に、マスメディアなど表現の自由にかかわる諸活動に対して、個人情報保護の基本原則の遵守を法的な要請として導き出すことには、やはり重大な疑念を表明せざるを得ません。基本法に関する検討がそのような方向で進んでいる以上、マスメディアなどはその対象外にすべきだと考えます。

○「基本原則」と「事業者が遵守すべき事項」について
 「利用目的による制限」は、いわゆる収集の制限を含むものですが、ニュース等の取材・制作には、当事者本人への取材はもちろんのこと、事前取材や周辺取材、本人以外からの裏付け取材も同様に欠かせません。この原則をマスメディアなど表現の自由にかかわる諸活動に適用しますと、取材・制作に規制が加わり、事実の正確な把握とそれにもとづく報道・放送という最も基本的な要請に応えられなくなります。つまりは知る権利に応えるという使命が全うできなくなる恐れがあります。
 「透明性の確保」と「個人情報の処理等に関する事項の公表」、「開示、訂正等」は、取材制作編集過程への不当な干渉や介入を許すことにつながる懸念があります。取材源の秘匿という基本線にも影響しかねません。
 また「適正な方法による取得」も、法令に違反しないことは当然であるにしても、「適正」の概念があいまいで無用のトラブルを誘発し、取材を萎縮させる危険があります。
 さらに「内容の正確性の確保」、「安全保護措置の実施」、「第三者への委託」、 「苦情等の処理」は、NHKとしては、個人情報保護の法制化をまつまでもなく報道機関、放送事業者として当然のこととして心掛け、実践しているところです。  このように考えますと、マスメディアなど表現の自由にかかわる諸活動に対して、「基本原則」や「遵守すべき事項」を法律によって規定することは、表現の自由とこれに由来する報道の自由、取材の自由という憲法上の要請を制約することにつながる恐れがあり、むしろ弊害が大きいと言わざるを得ません。
 表現の自由とこれに由来する報道の自由、そしてプラバシーを中核とする個人情報の保護、これら二つの価値の調和・均衡はマスメディアと国民との間で自律的に達成されるのが本筋と考えます。

○「政府の施策」について
 「政府の措置及び施策」として、政府によって苦情処理と必要な調査ができるとされていることは、取材・制作過程に行政の介入をもたらす恐れがあり、受け容れることはできません。
 政府が仮に苦情の処理等をしようとしますと、個別の放送番組の内容や取材制作過程を把握する必要がありますが、放送法では、郵政大臣が放送事業者から資料の提出を求めることが出来る事項は限定的に定められており、個別の放送番組の内容などはその対象に入っていません。つまり行政の介入の余地をできるだけ少なくする考え方に立っているわけです。放送にかかわる苦情等の処理は放送事業者の自律を基本とする仕組みになっています。言うまでもなくこれは、放送法で「自律」と「放送による表現の自由の確保」が原則として明記されているからです。
 放送分野では、すでに放送事業者の自律を基本とした仕組みが機能しており、NHKと民放連が共同で設置した「放送と人権等権利に関する委員会(BRC)」や、放送番組向上協議会の「放送と青少年に関する委員会」が対応しています。このうち「放送と人権等権利に関する委員会」では、放送による人権侵害の苦情に対して、自主的に、迅速かつ有効な対応に努めているところです。
 またNHKでは、東京の放送センターの「視聴者ふれあいセンター」をはじめ、各地の放送局に苦情等も含む問い合わせ対応の窓口を設けており、真摯に取り組んでいるところです。

○「その他」について  中間整理では、適用対象範囲について、「規律ごとに情報の性格等に即して検討する。この場合、表現の自由、学問の自由に十分留意する」とあります。また「事業者が遵守すべき事項」で列挙された事項については、「義務規定とすること等を含め、その法的強制の程度について、規律ごとに引き続き検討する」とあります。
 しかしながら、すでに述べたような立場に立つ以上、マスメディアなどの表現の自由にかかわる諸活動に対しては、「規律ごとに」考えるよりもむしろ、まず基本法の対象外とすることを求めざるを得ません。
 「事業者が遵守すべき事項」には自主的措置の余地が残されているようですが、一方で政府による苦情処理と調査の対象となれば、行政のメカニズムに組み込まれることになり、結局は自主措置にならないのではないかと考えるからでもあります。  これまでのヒアリングの席などで、我々は基本法について、宣言的なものであればともかく、そうでなければ基本法そのものに慎重にならざるを得ないという考えを示してきました。
 検討部会の中間報告と今回の貴委員会の中間整理は、権利義務の関係にもとづく法的規制も含めた措置を盛り込んだものです。そうである以上、マスメディアなど表現の自由にかかわる諸活動については基本法の対象外とすることをまず求めざるを得ないと考える次第です。
 罰則については、遵守事項の「第三者への提供」の制限と同様、その設定の仕方如何で取材への支障が生ずることを、取材する立場から強く懸念します。規制を強化しますと、情報を提供する側のリスクが大きくなり、取材に対する協力が得られにくくなることを危惧します 。

○その他  独立行政法人、特殊法人等について、「政府は個人情報の保護を充実強化するための制度、施策を検討し、必要な措置を講ずるものとする」とありますが、NHKは設立の経緯、業務、組織、財政のいずれをとってみても他の特殊法人とは違う独特の性格を有しています。是非「その性格、業務内容に応じ」た検討を進めていただきたいと考えます。ちなみに行革推進本部の特殊法人情報公開検討委員会では、NHKを特殊法人等に共通の情報公開法の対象外とする方向が固まっていると承知しているところです。
 性格、業務内容に即して付言すれば、公共放送は番組を中心として、受信契約、技術、管理などあらゆる業務が一体となって運営されてはじめて「豊かで、かつ、良い放送番組」をあまねく提供でき、言論報道機関としての遺憾のない働きが可能になります。NHKとしては、個人情報保護の法制化の議論の帰趨をまつまでもなく、取材制作をはじめ、受信契約など自律的な事業運営にかかわるさまざまな情報の保護の徹底を自主的に推進していく考えを繰り返し表明しておきます。
 
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