1. トップ >
  2. スペシャル >
  3. 第2位 新選組! -エピソードで振り返る! 人気大河「ベスト10」-

エピソードで振り返る! 人気大河「ベスト10」(「あなたの好きな大河ドラマ」投票結果より) 第2位 第43作 新選組! 2004年(平成16年)

エピソード4 それぞれの最期

中心人物から脇役まで、一人一人の死にきちんと意味を持たせ、しかもその死が残った人たちの生に影響を与える。「新選組!」では、人の死をそんなふうに描いていった。

芹沢鴨の暗殺、山南敬介切腹

幕府の浪士組として上洛した近藤勇と芹沢鴨。壬生浪士隊を結成した仲間である芹沢を排除する。勇が“鬼”になり、初めての隊士の死を決断した瞬間だった。壬生の八木邸で繰り広げられた芹沢鴨の暗殺シーンは、新選組が歴史の表舞台に登場するための一里塚的な意味が込められていた。

新選組総長の山南敬介の切腹は、試衛館時代からの隊士にとっては、あまりにもつらすぎる出来事だった。法度を破ったのだからやむを得ないとはいえ、山南の切腹を決めた土方の苦悩もまたすさまじかった。山南の切腹シーンを描いた台本を手にしたときから、スタッフ、出演者の誰もが「撮影がつらい」とため息をもらし、視聴者からは助命嘆願の手紙やFAXが届いた。

切腹当日、見守る隊士の前で見事な作法で静かにその生を閉じた山南。その後、号泣する勇と土方のシーンが撮影されたが、香取さんと山本さんは役を離れて本気で男泣き。その姿に、この特別な日のために出番がなくても集まっていた仲間たちの涙を誘っていた。

仲間がみとった源さん、孤独な沖田の死

若い隊士たちのお父さん的存在であり、潤滑油の役割を担っていたのが“源さん”こと井上源三郎だ。演じた小林隆さんは、まさに源さんそのもの。まじめで謙虚、おだやかで温かくほっとさせてくれる人柄が、若い出演者たちからも頼りにされていた。

鳥羽伏見の戦いで戦死した源さん。その最期は仲間にみとられ、抱かれて息を引き取るという、ある意味、幸せな死に方となった。ここまでは史実だが、ドラマでは源さんが幽霊となって勇のもとに現れている。勇は仲間の死に立ち会うことが少なかった。そこで、せめて源さんとは「きちんと別れさせてあげたい」という三谷さんの思いで出来上がった場面だ。

沖田総司の死ぬ瞬間は描かれなかったが、刺客に襲われた直後、吐血。庭に横たわったまま、静かに列をなして動くアリを目で追うという象徴的な映像が、静かで悲しい沖田の死を予感させた。

この身は露と消えても…勇の最期

1年間の最期を締めくくったのは、勇の最期だった。武士であることにこだわり続けた勇だが、その最期は罪人として斬首という切ないものだった。

スタジオいっぱいに建てられた処刑場のセットには、勇のふるさとの多摩を思い起こさせるようなきれいな水が流れる川、かえるや鳥、花など、生命力を感じさせる自然を配した。史実にとらわれるのではなく、勇の最期を見守りたいという思いからだ。

最終日が近づくにつれ、勇の心境から片ときも離れられず、「俺、死んじゃうんじゃないか」と思うほど、うつうつとした日々を送ったという香取さん。撮影前日は一睡もできなかったそうだが、その最期の瞬間まで神経を研ぎ澄ませて、見事に勇の生涯を演じきった。

ちなみに勇が処刑される寸前にひと言、つぶやいた言葉は「とし……」だった。盟友・土方歳三の名前で、これは三谷さんが香取さんに「何といってもいいよ」と、預けた部分だった。まるで、その言葉を受けたかのように、土方歳三の最期までを描くドラマがその2年後に生まれた。正月時代劇として放送された「新選組!! 土方歳三最期の一日」で、大河ドラマ初のスピンオフドラマとなった。