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大河ドラマの人気主人公特集 4 人望厚い忠臣 大石内蔵助

大河の主人公に二度以上抜てきされた栄えある歴史上のヒーローとは? また、その人気の秘密は? 同じ人物を主人公に描いた作品を振り返りながら、その違いや魅力に迫る。

  • 第2作 赤穂浪士 1964年(昭和39年)
  • 第20作 峠の群像 1982年(昭和57年)
  • 第38作 元禄繚乱 1999年(平成11年)

主人公比較 ヒーロー像から主演俳優まで

大物スターが重厚な内蔵助を!

「赤穂浪士」で主人公の大石内蔵助を演じたのは、日本を代表するスター・長谷川一夫だ。天下の二枚目として知られ、戦前から舞台、映画で活躍。映画「忠臣蔵」(1958年)でも内蔵助を演じるなど、一世を風靡(ふうび)した大物俳優の登場にお茶の間も沸いた。

円熟を極めた時代劇のトップスターが演じた内蔵助は、着物の着付けから武家のしぐさまで国家老の家格にふさわしい貫禄で見応え十分。また、やや鼻にかかった低音のセリフ回しも人気を集め、討ち入り時の「おのおの方!」は声帯模写や漫才のネタにまでなった。

ちなみに仇(かたき)役の吉良上野介は新劇界の重鎮・滝沢修だ。やはり映画「忠臣蔵」で吉良を演じた。ほかにも、内蔵助の妻が新派の山田五十鈴、浅野内匠頭は歌舞伎界の尾上梅幸と、各界の人気俳優による夢の競演が実現した。

迷い悩む人間的な主人公

これまで仇(あだ)討ちの物語ととらえられていた忠臣蔵を、政治や経済の視点で描いたのが「峠の群像」だ。

大石内蔵助役は緒形拳。「討ち入りなんかできるのだろうかと心配されるような“迷える中年”を演じたい」と話している。その言葉どおり、切腹した主君浅野内匠頭の死にうろたえる姿や、突如悲しみがこみ上げてきて涙を流す場面などで、人間的なもろさや切なさを存分に表現してみせた。

そんな内蔵助に親近感を覚えるサラリーマンも多かった。お家再興が潰(つい)えたときの絶望感、討ち入りを決意するまでの精神的な葛藤や悩み……。中間管理職の悲哀にも通じる一面が描かれる一方、討ち入りに加わらない藩士をとがめることなく受け入れる魅力的な上司でもあった緒形内蔵助。

現代社会に重ね合わせることのできる等身大の人物として描かれた主人公だった。

冷静沈着な内蔵助像

赤穂事件を軸に元禄という時代を描いたのが「元禄繚乱」だ。最終回で、大石内蔵助は水戸家当主になりすました五代将軍綱吉と対面。討ち入りの真の目的を、元禄の世の堕落を招いた幕府の御政道への抗議だったと明かしている。

そんな内蔵助について中村勘九郎(現・十八代目中村勘三郎)は「どこに真実があるのか、なかなか姿を現さない。自分の心にふたをして明かさず、冷静沈着に事を進めていく人物」として、「私の人生の中でも初めてというほど手ごわい役でした」と話している。

演じるほどに役に入り込んでいき、赤穂城明け渡しで城を去る場面では「なんでこの城を出なきゃいけないんだと思ったら癪(しゃく)にさわってね」とつい涙が…。演出の指示は「涙なし」だったが、内蔵助になりきっていたからこその自然な反応に演出も感動。すかさず「OK!」を出した。

主人公比較 ヒーロー像から主演俳優まで

忠臣蔵の決定版!

四十七士とその周囲の人々が織りなす人間ドラマを丹念に描いた「赤穂浪士」。

浅野内匠頭が吉良上野介に斬りかかる刃傷松の廊下事件、赤穂藩士が討ち入りを決意するまでの苦悩。仇討ちにおびえる吉良、幕府や吉良の目をあざむく大石内蔵助の茶屋遊び、長い浪人生活で討ち入りから脱落していく者たちなど。毎回、繰り広げられる登場人物たちの葛藤や苦悩、別離に視聴者も一喜一憂した。

また、芥川也寸志が担当した「赤穂浪士」のテーマ曲も評判となり、それ以降、忠臣蔵の定番音楽となった。

経済や藩運営の視点で

従来の忠臣蔵は、吉良上野介の陰湿さが引き起こした事件として描かれることが多かった。しかし「峠の群像」の原作者・堺屋太一は、経済的な背景や政治の流れに着目。そこから内匠頭と吉良の塩戦争や、元禄のバブルが崩壊する兆しといった新たな視点でとらえ直した。

ドラマには、町人でありながら武士とのパイプ役となる近松門左衛門が登場。中村梅之助演じる近松がクールな目で事件や世評を論じた。ほかにも当時、情報の伝達という役割を担っていた飛脚の存在をクローズアップ。愛川欽也演じる飛脚屋伝平という架空の人物を通して、し烈な情報戦を描いた。

腐敗した政治に敢然と立ち向かう

前半は五代将軍綱吉が中心となって物語が進む。綱吉は就任当初の文治政治からしだいに人々を苦しめる悪政へと変化。側用人(そばようにん)の柳沢吉保を重用し、次々と藩の改易を断行、その冷徹さに諸大名は脅える。そんな時期に松の廊下の刃傷事件が起きる。

遺恨の果てとはいえ、なぜ内匠頭はお家断絶にもつながる重大事件を起こしたのか。強欲といわれた吉良の事情は? 内蔵助が討ち入りを決意した理由は? なぜ、それが可能だったのか。

ドラマでは大胆な推理を交えて赤穂事件の謎を解き明かし、バブルが発生した元禄の腐敗した政治、幕府の謀略などを描き出した。

こんなエピソードも

映画の技術がテレビに

銀幕のスターのテレビ出演が大きな話題を集めたことは前述のとおりだが、それをきっかけに映画の技術もテレビの世界に入ってきた。

長谷川一夫がテレビに持ち込んだのが、キャッチライトと呼ばれるクローズアップのライティング。目に光が当たるよう照明を指示。茶屋遊びの場面など、ここぞというときに定評の流し目が見事に決まり、ファンを魅了した。

また、大河ドラマという名称が定着したのも「赤穂浪士」からだ。映画、歌舞伎、新派、新劇界から人気俳優を集めた豪華配役陣で歴史上の人物を描く大型娯楽時代劇を指して、読売新聞社が「大河ドラマ」と呼んだことが始まりだという。

初めてづくし

「峠の群像」は、大河ドラマとしては“初”というものが多かった。そのひとつが大河初の女性の語りで、担当したのは加賀美幸子アナウンサーだ。

ジャニーズのアイドルたちが大河ドラマに出演したのもこの作品が最初だった。矢頭右衛門七役に当時“たのきんトリオ”で人気を博していた野村義男。赤穂浪士の討ち入りの際、吉良側で奮戦した剣客・清水一学を少年隊の錦織一清。浅野長矩が勅使饗応役を務めていた際に、相方の院使饗応役を務めた伊達村豊をシブがき隊の薬丸裕英が演じた。 

また、動詞形のサブタイトルも初お目見え。「内蔵助ほえる」「あの中に吉良が」「一人ぬけ二人ぬけ」など、期待感をあおるようなユニークなサブタイトルが並んだ。

巡り合わせの妙!

吉良上野介を演じた石坂浩二は、役作りのために吉良のことを調べるうちに面白いことを発見した。昭和16 (1941)年生まれの石坂と、寛永18(1641)年生まれの吉良とは、年齢がぴったり300歳違いだったのだ。300年の差といえば干支も25周りして同じ巳年になる。偶然とはいえ面白い巡り合わせに感動していた。

もうひとつ、ドラマの最終回で中村勘九郎は江戸で人気の中村座の座元・勘三郎として登場した。中村座が『忠臣蔵』の舞台を上演することになったという設定で、赤穂事件の生き証人・岡島忠嗣を呼び、詳細を聞くという設定だ。勘九郎が自らの祖先を演じるという粋な結末が話題を呼んだ。

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