突然、予想外の津波にのみこまれた人たち。濁流にもまれ、意識が遠のく中、彼らのどんな行動が生還へとつながったのか。絶体絶命の生死をわけた瞬間、無我夢中で下したさまざまな判断とは。
自宅へ車で逃げようとした途中、津波に襲われ、流されてしまった。佐藤さんの命を救ったのは、“タンク”と呼ばれる魚市場で使う大型のプラスチックケースだった。
漁業用タンクから女性に手を差し伸べる佐藤さん
“助けられなければ、おれ、この人の顔を一生忘れられないんだろうな”
車ごと流されてしまった佐々木さん。濁流の中で、切れた電話線を見つけた彼は、必死で体に巻きつけた。意識を失いかけながらも、その電話線にしがみ続け、生き残る可能性にかけた。
切れた電話線にしがみつく佐々木さん
“これぜったい夢だろうなというようなイメージ。たまたま紙一重で助かった”
津波で自宅を流され、屋根に乗ったまま、海を漂流。一緒にいた妻は津波にのみこまれてしまった。途中、原発事故も目撃した新川さんは生きる希望を失わず、3日後に自衛隊の護衛艦に救助される。
自宅の屋根に乗って3日間漂流した新川さん
“私が生きなくちゃだめだっていうふうに、物がね、どんどん私のまわりに集まってくるんだ”
津波が押し寄せ、車に閉じ込められた中村さん。ドアを開けて脱出することもできず、水は車内にどんどん侵入してきた。車内が水であふれるなか、彼女は死を覚悟する。
“あ、もうこれで死ぬんだとか。恐怖はなかったんですけど、人間の最期ってあっけないものだと思いました”
神社の宮司をしている大内さんは津波の激しい濁流に巻き込まれた。そのとき、目の前に流れてきた一枚の畳。とっさにしがみついた彼はその畳に自らの命を託すことに。
曽祖父も明治時代に津波から生還を果たしたという大内さん
“なんか不思議に、私が助かるように、畳が流れてきたなと思ってます”
運転中に強い揺れを感じた熊谷さんは、帰宅途中の川沿いの道で、津波に挟み撃ちされてしまった。道路沿いの桜の木によじ登った彼は、次々と襲いかかる濁流に一人耐え続ける。
「折れないでくれ」と桜の木に祈り続けた熊谷さん
“自分にとっては神木ですね。神様の木です”