2017年2月1日(水)

あれから2年 “KENJI”を忘れない

鈴木
「『I AM KENJI』。
こちらの映像に見覚えのある方も多いのではないでしょうか。
フリージャーナリスト、後藤健二さんが『IS=イスラミックステート』に殺害されてから2年になります。」
 

河野
「後藤さんは、紛争地で弱い立場の人たちに寄り添い続けました。
そのメッセージが今、改めて見つめ直されています。」

あれから2年 共感の声は今も

フリージャーナリストとして中東やアフリカなどで、戦争や貧困問題などを取材した後藤健二さん。
なかでも力を入れたのが、子どもや女性など、弱い立場の人たちの姿を伝える取材でした。

フリージャーナリスト 後藤健二さん
「僕たちが取材して見せたいものは“こんなに危険だ”ということじゃない。
どんな人たちがどんな暮らしをして、どんな喜び・悲しみをもっているかを伝えることが私たちの仕事。」

2年前、後藤さんがISに拘束された時に、後藤さんとの連帯を示そうと、インターネット上から始まった「I AM KENJI」の動き。
弱い立場の代弁者になろうとし続けた後藤さんへの共感が世界中に広がったのです。

あれから2年。
後藤さんを支援するために作られたサイトには、今もメッセージが寄せられています。

“シリアの子どもたちのために何かをしたいという健二の遺志を引き継ぎたい”

“悲しいが、彼はもう帰ってこない
後藤健二はシリア市民の友だ”

このサイトを運営する後藤さんの友人、栗本一紀(くりもと・かずのり)さん。
今でも日々、反響の大きさを感じていると言います。

映像ディレクター 栗本一紀さん
「この2年間途切れずにフェイスブックのページを応援してくれている人は今もたくさんいると思う。
後藤さんを直接知らない人の中でも、彼のやってきたことの大切さ、命がけで伝えたかったメッセージをそれぞれ受け取って、それを自分の人生、生活、仕事の中でどうしたら生かしていけるか考えている人がたくさんいる。」

ベストセラー作家が語る “分断の今だからこそ”

2年前、「I AM KENJI」のメッセージを送った1人。
作家の平野啓一郎(ひらの・けいいちろう)さん。
平野さんは、ベストセラーとなっている小説「マチネの終わりに」の取材で後藤さんと出会いました。
危険な紛争地で取材を続ける姿に強く共感したと言います。

作家 平野啓一郎さん
「すごく尊敬したし、敬愛の念を抱かされるというか。
やっぱり自分には決してできないことで、(戦場から)どこかで自分だったら引き返してくる。
それが続けられるのは何なのか、考えた。」

 

強く印象に残ったのは、命を狙われていたイラク人女性の亡命を後藤さんが助けた話でした。
平野さんの小説には、女性の命を救うために奔走する主人公の姿が描かれています。

小説「マチネの終わりに」より
“送還されれば、彼女はきっと殺されると、イラクの悲惨な状況を説明しながら必死で訴えた。”

人種や国境の隔たりなく、弱い立場の人たちを支えようとした後藤さん。
その存在の意味は2年がたった今、さらに大きくなっていると平野さんは考えています。

作家 平野啓一郎さん
「日本社会がますますアイデンティティーを単一化して、国家主義的な風潮が強まっている。
日本人と外国人を非常に区別して、差別を忍び込ませたりしながらみようとしている。
日本だけじゃなく、世界中で今起きつつあること。
彼みたいな存在は肯定的に語り続けなければいけないと感じている。」

後藤さんに救われた命 “ありがとうKENJI”

後藤さんが世を去って2年。
この日、私たちは後藤さんが命を救ったイラク人女性に話を聞くことができました。
14年前、後藤さんが亡命を助けたディーナ・サードンさん。
平野さんが小説の中でモチーフにした人物です。

後藤さんが亡命助けた ディーナ・サードンさん
「今は自由に好きなときに外に出て、好きなことができる。
それができるのは、すべて彼のおかげ。
彼を失ったことは悲しく、家族の1人を失ったよう。
彼は私を妹と呼んでくれた。
言葉では語り尽くせない。」

ディーナさんは今、2人の子どもを育てながら、小学校で英語を教えています。
折りにふれ、人々の融和を訴えた後藤さんの思いを周囲の人たちに伝えていると言います。

後藤さんが亡命助けた ディーナ・サードンさん
「いつも温かく励まし、勇気づけてくれた。
“心配することないよ。君ならできる”と声をかけてくれた。
皆さん、彼のメッセージを受け継ぎ、伝え続けなければいけない。
天使のような人だった。」
 

「I AM KENJI」。
後藤さんの思いは受け継がれようとしています。

“弱き人たちのために” KENJIを忘れない

鈴木
「シリアでは、後藤さんが設立を目指していたジャーナリストを養成する施設が作られたそうなんです。
後藤さんの思いは多くの人の心の中はもちろん、形になっても受け継がれているんだなという気がします。」

河野
「今、ヨーロッパや最近ではアメリカでも難民を排除しようという動きが強まっています。
“そうした動きを後藤さんだったら、どんなふうに見るんだろうな”と思ったりします。
後藤さんは、厳しい状況にある人たちの現実をありのままに伝えて、そして支えようとしました。
そうした思いは、私たちも同じジャーナリストとして引き継いでいかなければならないなと改めて感じます。」

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