2017年10月9日(月)

瀬戸内寂聴さん 初めての“生きる苦しみ”

桑子
「今年(2017年)95歳を迎えた、作家の瀬戸内寂聴さんにインタビューさせていただきました。
寂聴さんはここ数年、二度の大病で寝たきりの生活を経験しました。
そこで初めて『生きる苦しみ』を味わったというんです。
今、自らの生き方を見つめ直しています。」

初めての“生きる苦しみ”

作家 瀬戸内寂聴さん
「まだ死んでないから何とも言えないが、このごろはやっぱり朝晩考える。
もういつ死んでも思い残すことはない、これからそんな傑作が書ける精力はもうないし、だからもういつ死んでもいいんですけど、死なない。」

寂聴さんが自らの「老い」を感じ始めたのは、88歳の時。
背骨の圧迫骨折で入院しました。

さらに3年前には、胆のうがんが発覚します。
最近の著書では、病気で味わった苦痛のことが強調されています。

“私は本当の人の苦しみなど何も知りませんでした。
自分で痛みを感じてみて、思い知らされました。
そして知りもせずに苦しみについて語っていたことを恥ずかしく思いました。”

桑子
「本の中に『痛いというのを感じて、それまで自分が本当の痛みとか苦しみを分かっていなかったことに気付いた』と。」

瀬戸内寂聴さん
「痛くて痛くてしかたがない、腰の骨が痛くて我慢できない。
だからやっぱり、人間には我慢ができないような痛みもある。」

桑子
「気持ちの変化は大きいものがあった?」

瀬戸内寂聴さん
「もう95歳ですから、その次は死がある。
だから死ぬかどうかということを考えた。
遺言も、あの手紙の返事も書いてないとか、そういうことが山ほどあるから死ねない。
死んだらおしまいだと思って、どうでもいいと思うこともある。」

桑子
「逆の2つの気持ちが一緒に合わさっているような感じ?」

瀬戸内寂聴さん
「そうそう。
人間はそうじゃないか。
1つの考え方、逆のことが同時に心の中にある。」

身にしみたのは“無常”

人生で初めての、書くことができない寝たきりの日々。
しかし、老いに向き合う上で大事なことに気づかされたといいます。

“初めての寝たきり生活を通じて、私自身、絶望の中から希望を見出すという経験をすることができました。
『無常』という言葉が概念ではなく実感として身にしみました。”

瀬戸内寂聴さん
「それ(病気)が治ったら、どうしても思い出せない。」

桑子
「もう思い出せないんですか?」

瀬戸内寂聴さん
「すぐ忘れるっていうことが恩寵(おんちょう)じゃないか。
悩みでも、身の上相談に来る人が『今こんなにつらい』と言う。
その時は本当につらいんだけど、必ずそれは忘れる。」

桑子
「それは、自分が病を経験するまで分からなかった感覚?」

瀬戸内寂聴さん
「それは分からない。
遭った時は、この痛さ、あるいはつらさを『忘れるもんか』と思う。
だけど忘れる。
だから人が亡くなって、めそめそ泣いて、来年来てもまだ泣いている。
でも4年もたてば、もう笑ってますよ。」

桑子
「忘れることは悪いことではない?」

瀬戸内寂聴さん
「それはお恵みのような気がする。
いつまでも思い出してたら、たまらないでしょう。
だから、失恋なんか何度したって大丈夫。
片っ端から忘れていくから。」

桑子
「忘れていい?」

瀬戸内寂聴さん
「変わるってことは世の中当たり前のこと。
仏教でも変わると教えている。
変わらなきゃおかしい。」

等身大の自分を生きる

今年に入って、新たに心臓の手術を受けた寂聴さん。
体が思うように動かないことも増えました。
この日は、月に一度開かれている写経の会。
老いと病に向き合う、等身大の自分の姿を率直に語っています。

瀬戸内寂聴さん
「風邪は万病の元といいますから、私ぐらいの年をとったら即死ぬ。
もう死んでもいいんですけど、死なない。
95歳といっても、数えで言ったら96歳。
そんなに生きるとは思わなかった。」

参加者
「姿を見るだけで元気をもらえる。」

参加者
「いろんなことを自然に受け入れて、そうありたいなと思う。」

老いて向き合う、生きる苦しみ。
それを乗り越えるためには、本当にやりたいことだけ考えればいいといいます。

“おいしいものを食べ、おいしいお酒を飲む。
情熱をもって取り組める、自分らしい楽しみを見つけ、一日一日を大切に生きていく。
95歳にしてまだまだ不完全な人間として、これからも挑戦し、成長していければうれしいですね。”

瀬戸内寂聴さん
「やっぱり食べた方がいい。
第一、書くエネルギーが出ない。
やっぱり、いちばん自分の楽しいことを見つけること。

私にとっていちばん楽しいのは書くこと。
まだまだ成長できると思っている。」

桑子
「小説を書くことが成長?」

瀬戸内寂聴さん
「私の喜び。
だって、そのために生きてる。
出家したのもそのため。
書くことは尽きない。
書いても書いても出てくる。」

瀬戸内寂聴さん 等身大の自分を生きる

有馬
「『まだまだ成長していける』。
最後に寂聴さんらしい言葉を聞いた思いですが、あの寂聴さんも、老いや痛みを前にして、まだ悩んでいらっしゃるんですね。」

桑子
「少し弱気に見えるような一面もあって、正直、心配な気持ちにもなりました。
でもお話を伺っていると、老いや死を受け入れながらも、せっかく生きているんだったらその時間を全うしよう、ありのままの今を受け入れればいいじゃないかと、本当に自分に正直なんです。
そんな姿が多くの人々を魅了するのかなと感じました。」

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