2017年12月27日(水)

“#ストロングゼロ文学”?

桑子
「みなさん、ご存じでしょうか。
『#ストロングゼロ文学』。
いま、ツイッターでこのキーワードを使った書き込みが増えているんです。
有馬さん、この『ストロングゼロ』はわかりますよね?」

有馬
「缶チューハイですよね。
アルコール度数が高くて、ストロングなのに、プリン体とか糖分がゼロをうたっているんですけど、私なんか思わず手が伸びちゃうお酒ですよね。」

桑子
「それが“文学”とは、どういうことなのでしょうか。」

“ストロング系” 手軽に酔えて大人気

年の瀬の渋谷。
街のそこかしこで、ストロング系のお酒を手にする若者の姿がありました。

男性
「今日も頑張ったねと、ストロング1本。」

男性
「仕事の疲れ、ストレスが吹き飛ぶ、ストロング飲むと。
幸せ。」

女性
「弱いのいっぱい飲むよりは、強いの1本飲んで、ちょっと酔ったくらいが安いし、いいかな。」

アルコール度数が高めで少ない量でも酔える一方、低価格を売りにするストロング系のお酒。
ビールや発泡酒などの販売量が年々減少する中、アルコール度数が8%以上の缶酎ハイなどの市場規模は、この5年で2倍以上に拡大しています。

第一生命経済研究所 永濱利廣さん
「同じ酔うのであれば、できるだけ安いコストで酔いたい。
時代を象徴するような動き。」

“ストロング文学” ツイッターで広がる

こうして人気が高まる中、今月(12月)に入って、ツイッターで急浮上したのが、「ストロングゼロ文学」というキーワード。
みずからの置かれた状況を、この言葉に寄せて表現する書き込みが、一気に広まったのです。

“胃にジャーッって流し込んだとき将来への不安が少しだけ緩和されるような気がする”

“合うおつまみって何だろう?って考えたけど、悲しみや絶望や孤独だろうという結論に至った”

“誰かと席を並べたり、向き合ったりして飲むような酒ではない気がする。あれは孤独を枕に飲むものだ”

こうした書き込みが、なぜ拡散していったのか。
詩人で社会学者の水無田気流(みなした・きりゅう)さんは、自分たちが抱える不安や孤独感をあえてさらけ出しているところに特徴があると指摘します。

社会学者・詩人 水無田気流さん
「ある意味では、ダメな自分を客観的に認めてもらう自己確認の表現。
ネガティブな、ちょっとした不安やストレスを吐き出せる、いいツールになっている。
不安や孤独を吐露することによって、共感してくれる人がいることへの安心感。
誰かに読まれて、見られて、反応してもらわないと自分が存在していないかのような、そういう新しいタイプの孤独感を抱える人たちは増えていると思う。」

“ストロング系” 飲み過ぎで依存症も

ツイッターで広がるストロング系のお酒への共感。
ただ、不安やストレスのあまり飲み過ぎることで、深刻なダメージを負うケースも出ています。
34歳の会社員の男性です。
ストロング系缶酎ハイを大量に飲み続けた結果、アルコール依存症と診断されました。

『アルコール依存症』の男性
「ストレスがあって、次の日の仕事のことを考えると嫌になるので、飲んで酔っ払っている間は、次の日のことを考えなくて済む。
だんだん酒の味を楽しむというより、『早く酔っ払って仕事を忘れたい』と変わってきた。」

ストロング系缶酎ハイ500ミリリットルに含まれるアルコール量は36g。
これは、強いお酒の代表であるテキーラのショット3.75杯分に匹敵します。

仕事帰りに毎日、コンビニに立ち寄って、ストロング系のお酒を購入していた男性。
多いときには、500ミリリットルの缶を1日8本飲んでいました。

『アルコール依存症』の男性
「30分かからないくらいで1本空けて、仕事行っている時間と寝てる時間以外は、すべてアルコールを飲んでいる時間。」

次第にアルコールなしでは、仕事も手に付かなくなった男性。
現在は会社を休職しているといいます。
アルコール専門外来の医師は、口当たりも良く、価格も安い気軽さが、依存症を引き起こす要因の1つになっていると指摘します。

アルコール専門外来 中田千尋院長
「(ストロング系は)自分で意識せずとも、かなりたくさんのアルコールを入れていることに。
非常に危険、さまざまな臓器障害を起こす可能性もある。
ちょっと立ち止まって考えてもらうということ。」

孤独や不安をツイッターに書き込む人たちの“よりどころ”となっているストロング系缶酎ハイ。

社会学者・詩人 水無田気流さん
「コンビニに置いてあって、日常と地続き、誰もが手に入りやすくて、日常からほんのちょっとの“逸脱”であるところがポイント。
思い切った冒険や逸脱が難しくなってきている。
『安全な範囲でちょっとだけ冒険・逸脱を楽しみたい』、そういう時代の気分が出てきているようにも思う。
ダメな部分を容認してくれる場が、それだけ乏しいということではないか。」

“ストロング文学”

有馬
「“孤独を枕にして飲む”。
ちょっと寂しいんですけど、確かに文学的なつぶやきでしたね。
1人で飲む寂しさを、あのようにつぶやいているんだなと思いました。
ただ、飲み過ぎには気をつけたいですね。」

桑子
「そのとおりですよね。
水無田さんは“見た目のライトさに反して内実がヘビーだということは自覚した方がいい”ともおっしゃっていました。
お酒を飲む機会が多いこの季節、特に注意が必要です。」

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