2018年4月25日(水)

報道の自由賭し 動くプロジェクト

有馬
「今、欧米各国のジャーナリストが、プロジェクトを立ち上げ、ある暗殺事件の真相に迫ろうとしています。」

桑子
「暗殺されたのは、こちらの女性記者。
地中海の島国マルタで、政権の闇を取材していた、ダフネ・カルアナガリチアさん。
去年10月、何者かに車を爆破されて、殺害されました。」

有馬
「今、世界各地で報道の自由が、脅かされている。
その危機感が、ジャーナリストたちを突き動かしています。」

暗殺された女性記者 政権の闇を追うさなかに

リポート:古山彰子(国際部)

大勢の人々が掲げる、1人の女性の写真。
半年前に暗殺された、マルタのジャーナリスト、ダフネ・カルアナガリチアさんです。

「私たちは皆、ダフネの死を悼み、また、報道の自由を守る最前線にいる。
ダフネの遺業を引き継がなければいけない。」

「正義のためにきた。」

「ダフネの記事を、いつも読んでいた。
彼女は真実を語っていた。」

マルタで30年にわたって、調査報道に取り組んできた、ダフネさん。

首相の妻や側近らが、海外に資産を隠していると報道。
政府と犯罪組織との関係も、精力的に、取材していました。
暗殺される直前まで、自身のブログで、政権幹部や、与党への批判を展開していました。

「ダフネさんが殺害された現場です。
半年たった今も、多くの花が添えられています。」

去年10月16日。
ダフネさんの乗用車が、遠隔操作で、爆破されました。

爆発の目撃者
「大きな爆発で、車が炎に包まれた。」

妹のコリンさんに、話を聞くことができました。
ダフネさんは、飼い犬を殺されるなど、数々の脅迫を受け、政治家から訴訟を起こされ、銀行口座を凍結されたこともありました。
それでも、取材の手を緩めることはなかったといいます。

ダフネさんの妹 コリン・ベラさん
「権力者に責任を問う。
疑問の声をあげ、私たちの権利を求める。
だまされないよう声をあげる。
それが姉のやってきたことです。」

暗殺事件から2か月後、警察は、実行犯として3人の男を逮捕。

しかし、裁判では3人とも事件への関与を否定。
政権与党とつながりが深い大手新聞社は…。

政権与党とつながりが深い大手新聞社 編集長
「マルタ政府はすばらしい仕事をした。
それ以上に何ができる?」

政府の対応を擁護し、取材には及び腰です。
事件の背後関係は、今も、闇に包まれたままです。

欧米各国の記者集結 つかんだ新証言とは

そこで立ち上がったのが、「ダフネ・プロジェクト」。
欧米の大手メディアが協力して、取材を始めたのです。
イギリスのガーディアン。
フランスのルモンド。
そしてアメリカのニューヨークタイムズも。

18の報道機関の45人の記者が結集し、ダフネさんの調査報道を引き継ぎ、暗殺事件の真相究明にも乗り出しました。
背景にはヨーロッパ各地で、報道の自由が、脅かされている現状がありました。

スロバキアでは今年(2018年)2月、政権とマフィアの癒着を取材していた記者が、婚約者とともに、暗殺されました。

ハンガリーやポーランドでは、政権が批判的なメディアに圧力をかけ、抗議の声が広がっています。
プロジェクトを主導するのはフランスのジャーナリスト。

「ダフネ・プロジェクト」を主導 ローラン・リシャールさん
「ダフネさんが手がけていた、調査報道を完成させたかった。
ヨーロッパの世論にとっても、大切なことであり、メディアの敵に対する警告でもある。」

記者たちは、半年にわたって、ダフネさんが残した資料を、徹底的に分析。
関係者への取材も積み重ねました。
プロジェクトに参加した、イタリア人記者は。

「ダフネ・プロジェクト」メンバー イタリア人記者
「ヨーロッパ中から報道機関が集まれば、目撃者も証言するのに心強いのだろう。」

そして、たどり付いたのが…。
事件のあと、現政権の経済相が、実行犯とされる男とバーで同席していたという、新証言でした。
実行犯と政権の接点が、初めて浮かび上がったのです。
先週、この疑惑が報じられると、マルタの市民の多くが、警察署に詰めかけ、経済相を捜査するよう訴えました。

暗殺された女性記者 報道の自由を案じて…

調査報道に命をかけた、ダフネさん。
暗殺される6日前、インタビューを受けた際に、こんな言葉を残していました。

ダフネさん(殺害6日前のインタビュー)
「調査報道はとても難しくなっている。
最大の懸念は、私に起きることを人々が見て、報道を続けようと思わなくなることだ。」

ダフネさんの死から、半年。
その思いを受け継ぎ、報道の自由を守ろうとする闘いが、続いています。

桑子
「ダフネさんのインタビューの言葉は、まるで、暗殺されるのを覚悟していたかのようにも思いましたが、それでも取材の手を緩めなかったんですね。」

有馬
「強い言葉でしたね。
この1年、世界の紛争地などで殺害されたジャーナリストは、66人。
投獄されたのは262人にのぼる、というデータがあります。
報道の自由をどう守るのか。
私たちにとっても、重い問いかけです。」

Page Top