2018年8月8日(水)

戦争遺跡 PR方法めぐり議論が

桑子
「こちらのマスコットキャラクター。
これ、軍隊のパイロットをイメージしているんです。
熊本県のある自治体で、地元に残る戦争の遺跡を広く知ってもらおうと使われています。」

有馬
「子どもたちに関心を持ってもらおうと、かわいらしいキャラクターなんですけれども、戦争の遺跡について、こうしたPRが適切なのか議論になっているんです。」

戦跡の“観光地化” 巨大地下ごう「基地の跡」

「みなさん、電気消してください。」

熊本県錦町、旧日本海軍が戦時中に作った巨大な地下ごう「人吉海軍航空基地」の跡です。
太平洋戦争末期、アメリカ軍との本土決戦に備えて作られました。

学芸員
「兵隊が寝泊まりするために掘られた地下ごう。」

「何人ぐらい寝泊まりしていた?」

学芸員
「その時期、残っていたのは200人ぐらい。」

「あんなに狭いのに、暑いんだろうなと、耐えきれない。」

1万平方メートルにわたって、今も残る地下ごう。
アメリカ軍に提出された軍事資料がきっかけになり、3年前にその全貌が明らかになりました。
こうした戦争遺跡は、全国におよそ5万件あるといわれています。
しかし、その多くは、戦後73年が経つ中で老朽化したり、開発によって壊されたりして存続が危ぶまれています。

集客へ あの手この手

そこで、町は今月(8月)地下ごうの上に戦争資料館をオープンさせました。
その名も「ひみつ基地ミュージアム」。
戦争遺跡を町の観光地として売り出すことを狙いにしています。
館内では、マスコットキャラクターのグッズも販売することにしました。
さらに、町のホームページでは…。

基地の歴史をアニメで紹介。
子どもたちにも抵抗がないよう、戦争のリアルな描写は抑えています。

訪れた女性
「子どもたちも、そんなに怖がらず、子どもにとってもいいと思う。
身近に来られそうな雰囲気がいい。」

こうした演出に加えて、資料館には、戦争の悲惨さを具体的に知る展示もそろっています。
ここまで工夫が必要なのは、戦争遺跡の維持に、ばく大な費用がかかるからです。
町は観光地として知名度を上げることでたくさんの人を呼び込み、保存の機運を高めたいと考えています。

熊本県錦町企画観光課 学芸員 手柴智晴さん
「保存するにあたって、どうしても金銭的に必要がある。
立場によって捉え方は違うと思うが、私は人が来ることによって、ここの大事さを町民の方が知っていただければと思う。」

地元では懸念の声も

リポート:藤島温実(NHK熊本)

町が推し進める戦争遺跡の観光地化に、地元の市民団体からは疑問の声が上がっています。

市民団体のメンバー
「観光に重点を置かれていることに、非常に疑問を持っている。」

親しみやすさを強調するあまり、戦争の悲惨さが伝わらないのではないかと懸念を示しています。

指摘した1つが、戦争遺跡をPRするために、かつて使われていたパンフレットです。
特攻隊員の遺書にキャラクターが重ねられていることに違和感があるといいます。

市民団体のメンバー
「少なくとも遺書の上にキャラクターを載せるのは、本当、僕は冒とくしていると思う。
これは誤解を受けるとずっと指摘している。」

市民団体のメンバー
「そもそも戦争遺跡は楽しい所ではないはず。
とにかく人を集めさえすればいいという視点しかないのかという気がして、心配。」

理解示す戦争体験者も

一方で、「観光地化」に理解を示す人もいます。

語り部 平山信子さん
「ここに逃げ込んだ。
空襲の様子をずっと見ていた。」

平山信子さんです。
戦時中、基地の建設に動員された語り部の1人です。
90歳を前に、後世の人に平和の尊さを理解してもらうには、まず現場に足を運んでもらうことが大切だと考えています。

語り部 平山信子さん
「いっぱい、とにかく人に来てもらうことが一番だと思う。
戦争遺跡にしても観光にしても、人が集まってくれないことには話にならない。」

体験談を録画した映像を資料館に提供するなど、観光地化を後押ししています。

語り部 平山信子さん
「本当に戦争のことを知ってほしい。
少しでも感じてもらいたいし、この施設を見てもらうことが一番大事。」

戦争の悲惨さを伝えることと、関心を持ってもらうための新しい工夫。
戦争遺跡を残すための模索が続いています。

戦跡の“観光地化”

桑子
「全国で5万件ある戦争遺跡をどう維持するのかということですね。
今ご紹介した錦町以外でもマスコットキャラクターを考えたり、あとは、においで当時の様子を伝えたりと、各地で模索が始まっています。」

有馬
「いろんな工夫があるんですね。
VTRで平山さんがおっしゃっていましたけど、まずはそこを訪ねて見ること、そして感じて、過去から学ぶ。
これが一気通貫で全てできるようなアイディアを、みんなで出し合っていけるといいと思うんですよね。」

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