2018年10月1日(月)

沖縄県知事選挙 一票投じた県民の思いは

有馬
「今回の沖縄県知事選挙、翁長知事の路線継承を訴えた玉城氏が幅広い支持を集めました。」

桑子
「こちらはNHKの出口調査です。
玉城氏は、野党の支持層に加え、支持政党がない、いわゆる無党派層のおよそ70%から支持を得ました。

また、普天間基地の名護市辺野古への移設については、『反対』と答えた人が62%で、そのうち80%余りが玉城氏に投票したと答えました。」

有馬
「基地問題や経済振興が争点となった今回の選挙。
県民はどんな思いで一票を投じたのでしょうか。」

沖縄県知事 玉城氏に 県民の選択は…

アメリカ軍普天間基地を抱える、宜野湾市です。
去年(2017年)12月、基地の近くにある保育園の屋根の上から、アメリカ軍機の部品が見つかり…。
1週間もたたないうちに、小学校のグラウンドにアメリカ軍のヘリコプターから窓が落下。
基地の危険性を肌で感じる母親たちは、複雑な思いでこの選挙に臨んでいました。

2人の子どもを持つ、与那城千恵美(よなしろ・ちえみ)さんです。
以前は基地の存在にあまり違和感を持っていませんでしたが、去年12月、娘が通う保育園の屋根でアメリカ軍機の部品が発見され、基地問題に直面しました。
与那城さんたちは署名を集め、政府に対応を求めました。

与那城千恵美さん
「保育園の上空を飛ばないでと言っているだけなので、なんでそれを守らせることがこんなに難しいのか。」

防衛省の担当者
「米側は調査中ということで、調査の結果を待ちたい。」

与那城千恵美さん
「全く同じ返答、『米軍からの回答待ち』『返事待ち』。
すごくショックだった。」

この時、保育園を訪れ、与那城さんたちを気遣ったのが、翁長知事でした。

与那城千恵美さん
「『県としてしっかり対応していく。大変だったでしょう』と励ましの言葉をいただいて、握手してもらった。
とても心強かった。」

与那城さんは、基地が辺野古に移設されても負担のたらい回しにしかならないと、玉城氏を支持しました。

与那城千恵美さん
「子どもの命があって初めて子育て支援だと、今回、娘の事故を受けて身にしみて感じる。」

与那城千恵美さん
「私たちが怖い思いをしたのに、同じような思いをする人がいると思うと絶対考えられない。
もう誰にも同じような思いは絶対させたくない。」

一方、佐喜真氏を支持した友寄泉(ともよせ・いずみ)さん。
ボランティアで遊説を手伝いました。
シングルマザーで、1人娘を育てている友寄さん。
辺野古への移設には複雑な思いもありますが、アメリカ軍の相次ぐトラブルを受け、まずは普天間基地の一刻も早い撤去が必要だと考えるようになりました。

友寄泉さん
「なくなるのが一番ベストだが、なくせますかといったら、なくせないと思う。
今はこれが一番の方法かなと思う。」

そして何より友寄さんが重視したのが、子育て支援など暮らしに身近な政策の充実でした。
政府と協調姿勢を打ち出す佐喜真氏に期待したのです。

友寄泉さん
「習い事もさせたいし、塾にも通わせるような経済は必要。
基地もないのがベストだが、生活水準は上げていかないといけない。」

戦後、アメリカによる統治が長く続いた沖縄。
1人あたりの県民所得や有効求人倍率は、今も全国で最下位。
貧困状態にある子どもの割合も3割に上ります。

こうした中、若者たちの間には、基地問題よりも暮らしを優先させるべきだという声が上がりました。
嘉陽宗一郎(かよう・そういちろう)さん、23歳です。
佐喜真氏の陣営で若者に支持を広げる活動の先頭に立ってきました。

嘉陽宗一郎さん
「10あったら1が基地問題、9はほっぽらかしでいいのか。
10年先、20年先の沖縄をつくっていくのが今回の選挙かなと思う。」

今回の選挙で、高校生や大学生たちとともに若者に支持を広げるための戦略を練ってきた嘉陽さん。

嘉陽宗一郎さん
「君たちが、佐喜真氏を応援するみたいな動画をアップするわけ。
そしたら、『佐喜真氏、いい人じゃん』。」

同世代の若者の多くが、基地問題をめぐって県と政府の対立が続くことに閉塞感を感じていました。

「沖縄の発展を考えると、基地問題は早々に終結するべき。
この先、何年たっても同じような状況が一番いや。」

嘉陽さんたちは、この日、応援演説に集まった人たちに、特に実現してほしい政策を選んでもらいました。
最も多くの支持を集めたのは、「携帯電話料金の4割削減」。
要望は、佐喜真氏から、応援に訪れた菅官房長官に直接渡されました。

嘉陽宗一郎さん
「物心ついたころから基地賛成か反対か二極の沖縄を、対立を超えて、対話を通して、未来をつくっていこうというメッセージが若い世代に刺さるんじゃないかと思う。」

一方、沖縄の戦後を経験してきた世代は、ゆずれない思いを抱いていました。
上間芳子(うえま・よしこ)さん、73歳です。
終戦の直前に生まれた上間さん。
家族や友人には沖縄戦で苦労した人も多く、自分も基地で働いていた経験から、戦争を身近に感じてきたと言います。
普天間基地の辺野古への移設に反対し、抗議活動にも参加してきました。

上間芳子さん
「20万人が死んだ。
沖縄県民も日本の兵隊も、米国の兵隊も含めて、20万人が奪われた。
未来の子どもたちに経験させたくない、だから毎日座っている。」

辺野古への移設工事が進められる中での今回の選挙。
上間さんは、工事を止められる最後のチャンスだと考えていました。

上間芳子さん
「ここも基地だったんだよ。」

若者たちに声を掛けては、沖縄が歩んできた歴史を語りかける上間さん。
1人の若い女性が、上間さんの話を真剣な表情で聞いていました。

女性
「基地がつくられるまでの過程を聞いて、こういう形でつくられたと思うと心が痛い。
年配の方からの話は重みがあって、テレビで聞くよりも自分の心に響くなと。」

上間芳子さん
「基地は最初からあったのだと、戦争の経験もだんだん薄らいでくる。
今だから、ここで負けてはいけないと思う。」

そして昨夜、玉城氏が当選。
落選した佐喜真氏を支持した2人は…。

友寄泉さん
「ショックはショック。
問題は基地だけじゃないので、県民の暮らしも最優先に考えてもらえたら。」

嘉陽宗一郎さん
「年配の方から、基地問題に対して厳しいことも言われたりしたので、そういった意味ではすごく世代間のギャップを感じた。」

一方、玉城さんに一票を投じた上間さん。

上間芳子さん
「これで沖縄県民の意地がちゃんと示せた。」

そして、普天間基地を抱える宜野湾市の与那城さん。
この結果を沖縄からのメッセージとして受け止めてほしいと言います。

与那城千恵美さん
「押しつけられてきたもの、それを沖縄県民はもういやだって強く言った結果が、今回の結果。
沖縄だけの問題ではなく、日本全国で沖縄の問題を考えてほしい。」

県民の選択の“重み”

桑子
「基地問題と経済振興、暮らしについて、母親、若者、戦争を経験した方、それぞれの立場で悩みながら選択した一票、その“重み”を感じました。」

有馬
「そして、これからが大変で大事なんです。
普天間基地の辺野古への移設阻止を訴えた玉城氏は今日(1日)、国との協議に応じる意向を示しました。
しかし菅官房長官は、『早期に辺野古移設を実現したいという考え方に変わりはない』と述べ、接点を見いだすのは簡単ではありません。

基地問題は、沖縄だけの問題ではありません。
宜野湾のお母さん、与那城さんが『沖縄からのメッセージ』と言っていた、『沖縄だけではなく日本全国で考えてほしい』という言葉を重く受けとめなければなりません。」

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