2018年10月9日(火)

60時間 放送続けたラジオ局

桑子
「もし、災害時に停電になったら皆さん、どのようにして情報を得ますでしょうか?
先月、北海道地震で起きた停電では、ラジオが住民の貴重な情報源となりました。」

有馬
「停電した60時間、住民を励まし続けたあるラジオ局の話です。」

大停電の中で 緊急放送 “小さなラジオ局”の60時間

あの日、北海道を襲った地震。
発生から28分後。
震源からおよそ100キロ離れた室蘭市で、コミュニティFMの緊急放送が始まりました。

FMびゅー
「ここでFMびゅーから、地震に関する情報をお伝えします。
北海道胆振地方中東部を震源とする、M6.7の地震が発生しました。」

自治体との協定に基づいて、24時間態勢で災害情報を伝え続けたのです。
北海道全域が停電し、情報が限られる中、アナウンサーが必死に呼びかけました。

FMびゅー
「ただいま、私が先ほど通勤して来たかぎり、室蘭市では停電が発生しています。
道路の信号なども消えている場所が多くなっています。
大変危険ですので、道路などでは、お互いの車でゆずりあって、安全運転を行ってください。」

60時間に及ぶ緊急放送が始まりました。

10年前に地域の人々によって設立された「FMびゅー」。
室蘭市を中心とする、3市3町、およそ19万人の住民に放送を届け、地域での認知度は8割を超えます。
社長の沼田勇也さんです。
東日本大震災の直後、被災地のラジオ局が地域の住民を支える姿を目の当たりにした沼田さん。
室蘭でも、災害報道を強化してきました。

FMびゅー 沼田勇也社長
「いざという時、みなさんの生活や命を守るため、少しでもお手伝いができるのも、もうひとつ大事な使命だと思います。」

ただ従業員は8人。
日々の放送には、ボランティアの協力が欠かません。

ボランティア
「市内でサラリーマンをやっています。
お金ではなくて、自分たちが番組をつくって支えているのがやりがい。」


あの日、FMびゅーでは何が起きていたのか。
地震発生2分後、午前3時10分のスタッフのLINEでは、出社できる人を募る沼田さんに、従業員が「行けます」と反応。
アナウンサーの井川康子さんも、すぐにかけつけました。

アナウンサー 井川康子さん
「今伝えなきゃいけないことで命を守るためにお伝えすべきことは何だろうと考えて、ご案内していた。」


子どもを抱えて出社したスタッフもいたため、午前5時ごろの放送には、子どもの声が。

FMびゅー
「(子どもの声)室蘭市輪西町の市民会館、東町消防本部の防災センター。」

情報源は、スタッフが市の災害対策本部で直接取材した情報。
ラインで共有して、そのまま放送しました。

必要な電力は、発電機を動かして確保。
地元の病院や企業、住民からも情報提供のメールが次々と寄せられ、地域に密着した放送を行います。

FMびゅー
「日鋼記念病院からの情報によりますと、現在、自家発電装置で診療機能を維持しています。
急を要する症状などは救急外来にて対応いたします。」

中には、デマにつながりかねない情報も含まれていましたが、事実かどうか確認してから放送しました。

FMびゅー 沼田勇也社長
「伊達市で10時から3日間、断水すると、近所の方が話していた。
伊達市に確認して、そんなことないと確認して放送した。」

大停電の中で 緊急放送 住民に届けた「安心と元気」

地震発生から丸1日。
住民に不安が募る中、井川さんたちが心がけたのは、生活情報だけではない「心に寄り添う」放送でした。

FMびゅー
「まだ停電していたり、避難所で一夜を明かされたという方もいらっしゃるのではないかと思います。
今いらっしゃる場所、どんな様子でしょうか。
ゆっくりと眠ることができましたでしょうか…。」

そんな井川さんの声に、勇気づけられたという住民がいます。
室蘭市の齋藤眞澄さんです。
停電が続く中、ふだんから聞いていたFMびゅーにチャンネルを合わせました。
すると。

齋藤眞澄さん
「すごいほっとしたのか、目がじわーって。
『井川さんだ!』と思って。
停電して、いつ復旧するかわからない不安の中で、いつもの声が聞こえてきた。
すごい安心したと言ったらなかったです。」

ラジオからは、こんな放送も聞こえてきました。

FMびゅー
「ちょっと心がほっと出来る瞬間も、ラジオで持っていただければという願いも込めて、音楽もお送りしながらご紹介していこうと思っています。
(♫ アンパンマンたいそう)」

地域の人を励ましたい。
井川さんたちの思いが詰まった音楽でした。

FMびゅー
「東日本大震災でこの曲が紹介されて、すごく元気が出たことを覚えています。
お子さんに向けてもそうなんですが、大人もすごく励まされる曲だと思い、紹介しました。」

齋藤眞澄さん
「地震の情報だけじゃなくて、いつもどおりの歌が流れてくる、音楽が流れてくる。
『通常に戻れるんじゃないかこのまま』という、そんな希望が持てるような気持ちになりました。」

被災者の暮らしと気持ちに寄り添い続けた60時間。
その間、FMびゅーのもとには、住民から300通を超えるメッセージが寄せられていました。

(住民からのメッセージ)
「停電中、スマホの充電もなくなり、唯一の情報源がラジオでした。
おかげで、少し安心して眠れました。」

(住民からのメッセージ)
「余震への恐怖で一杯になりそうな時、みなさんの人の声の温かさ・生放送特有の『繋がり』を感じられる、心強さを分けていただきました。」

“生活守るラジオ局を” 広がる「災害FM」

生活を守るラジオ局を増やしたい。
沼田さんは、震度7の揺れを観測した厚真町で町が地震後にスタートさせた「災害FM」の立ち上げに協力しています。

女性アナウンサー
「こちらは、臨時災害放送局、『あつま災害FM』です。
きょうは高気圧に覆われ、晴れる見込みです。」

沼田さんが送ったアドバイスは、情報を住民と同じ目線に立って伝えることの大切さでした。

FMびゅー 沼田勇也社長
「もうちょっと今の状況、日ざし、青空、雲とか、外から来たら寒かった、ちょうど良かった、外に出てみたらどうですか、みたいな今の様子を伝えられるとさらにいいかなと思います。
せっかく生なので、まさに今、『あなたとつながっています』と伝えられる。」

沼田さんは、ラジオがこれからも住民たちの心の支えになってほしいという思いを強くしています。

FMびゅー 沼田勇也社長
「僕もできる限りの情報提供やご協力はしたいとは思うので、そこに向けて引き続き、頑張ってもらえたらと応援しています。」

地域の人たちを守り続けるラジオ。
今日も放送は続いています。

FMびゅー
「このあとも『FMびゅー』におつきあいください。
ここまでのお相手、井川康子でした。」

大停電の中で ラジオ放送 住民に寄り添うために

桑子
「井川さんの放送、あたたかくて温もりのある放送でした。
災害時に、いかに被災された方の目線に近づいて、寄り添った情報を届けられるかというのは、私たちもいつも直面していることですよね。」

有馬
「今日ご紹介した『FMびゅー』、実はその運営、決して楽ではないようです。
スポンサー企業を求めて日々営業活動を続けているということです。」

Page Top