2019年3月6日(水)

東日本大震災から8年 生かされない教訓

8年前の東日本大震災。
当時、避難所で過ごさず被災した自宅にとどまる人が数多くいました。
こうした人たちは「在宅被災者」と呼ばれました。



あれから8年。
復興が進む被災地ですが…。

はがれたままの壁紙。
段ボールの床。
国の支援から取り残され、いまだに住宅の再建が進まない在宅被災者は少なくありません。

庄司恵子さん
「置いてきぼりにされたかな。」

将来起こりうる首都直下地震、そして南海トラフ巨大地震。
特に、都市部では多くの人が避難所に入れず「在宅被災者」になる可能性が高いというのです。

桑子
「『在宅被災者』、東日本大震災で大きな問題となりましたが、実は8か月前の西日本豪雨でも繰り返されていました。」

有馬
「なぜ、その教訓が生かされなかったのでしょうか。」

西日本豪雨から8か月 在宅被災者の今…

西日本豪雨で甚大な被害を受けた、岡山県倉敷市真備町。
浸水した住宅は、およそ5,400棟に上ります。

完全に修復できていない住宅で暮らし続ける「在宅被災者」がいます。
自宅の1階が浸水した鈴木さん夫婦です。

鈴木知子さん
「ちょうど障子のここ(まで水が)。
障子(張り)替えてないんですよ。」

風呂やトイレも水につかり「半壊」と判定され、今も大部分が修理できていません。

体が不自由で杖がないと1人で歩けない正夫さん。
豪雨の後、いったんは避難所に向かいましたが、周りの人に迷惑がかかると思い、翌日、水につかった自宅に戻りました。
しかし自宅では、避難所のように食べ物や支援物資を受け取ることができませんでした。

鈴木知子さん
「水が出ないから洗濯もできない、雑巾を洗うこともできない。
コンビニも品物はなかった。
空っぽだった。」

宮城県内だけでも24万棟が全半壊した東日本大震災。
8年たった今も「在宅被災者」の多くが、自宅の再建を果たせずにいることが分かってきました。

佐藤金一郎さん
「はい、置きます。」

大きく傾いたままの床。
勝手に閉まるドア。
この家に暮らす佐藤金一郎さんです。
自宅の1階が津波の被害を受け、「大規模半壊」と判定されました。

家を直すため国から受け取った支援金は、およそ150万円。
貯金などもあわせて、500万円かけましたが、一部しか直せませんでした。

佐藤金一郎さん
「地震があるたびにいくらか傾いているので不安。」

NHKは、津波の被害を受けた宮城県内沿岸で、震災前からの自宅に住む350世帯にアンケートを実施。
その結果、2人に1人が、8年たった今も「自宅で修理できていないところがある」と回答。
その理由については「資金が足りない」人が61%、「高齢で直す気力がない」人が16%に上りました。

“家がある”在宅被災者 国の支援制度で差が…

在宅被災者の住宅再建がなかなか進まない理由。
それは「単線型」と指摘される国の支援制度にあります。

家の被害によって支援に差がつく国の制度。
家を失った人は避難所に行き、物資などの支援を受けるほか、1戸あたり500万円以上かけてつくられる仮設住宅や、災害公営住宅が整備されるなど、住まいが保障されます。

一方、在宅被災者は「家がある」と見なされ、この支援の流れに乗れません。
修理に使える補助金は、最大で250万円ほどです。

庄司恵子さん
「地震と津波で全部落ちてしまって。」

避難所に行かなかったために情報が得られず、その後の生活再建が進まなかった在宅被災者もいます。
仙台市に暮らす庄司恵子さんです。

庄司恵子さん
「ここで1年、暮らした。
電気だけしかなくて。」

自宅の1階が津波で被害を受け、2階の物置で過ごした庄司さん。
避難所に行けなかったのは、がんで寝たきりだった夫の二千夫さんを介護するためです。

水や食料を運び入れるため、1日何十回も階段を上り下りして、夫の介護を続けました。

庄司恵子さん
「ペットボトルに水を入れて、4本か5本持ってきて、使ったらまた下でくんで持ってきて。
1回の食事に往復5回ぐらい上り下りして。」

平屋の仮設住宅に入れば介護が楽になると考え、震災の年の11月、区役所に相談に行きました。
しかし、断られたといいます。
避難所には伝わっていた仮設住宅の募集の情報。
自宅に居続けたため、すでに7月に締め切られていたことを知ることができなかったのです。

夫の二千夫さんは、自宅の再建を果たせないまま、震災の3年後に死亡しました。

震災から8年。
庄司さんは避難所優先の支援のあり方に疑問をもっています。

庄司恵子さん
「(避難所に行けない)事情が皆それぞれ違う。
事情にあった生活をどうしても選んでしまう。
選んでしまったんですけどね、ちょっと置いてきぼりにされたかな。」

取り残される在宅被災者 “支援制度 見直すべき”

在宅被災者が取り残される今の支援制度。
専門家は…。

兵庫県立大学 減災復興政策研究科 室﨑益輝研究科長
「避難所に来ないと支援しないとか、仮設に入った人だけ支援するとか、いわゆる単線型の仕組みではなくて、もっと複線型、いろんな道筋を認めていくような制度に切り替えないといけない。」

その上で、首都直下地震など大都市で災害が起きた場合、人口に対して避難所が全く足りず、在宅被災者の問題がさらに深刻化するといいます。

兵庫県立大学 減災復興政策研究科 室﨑益輝研究科長
「次の南海トラフ、首都直下地震になると、主流は在宅避難。
自分の家修理したり、空き家を自分で探したりする人、圧倒的に多くなる。
次に来る巨大災害を頭におき、自力で修理をしたり自力で再建する人たちの力を引き出し、応援するような仕組みづくりが必要。
在宅避難に対する支援の制度を手厚くしないといけない。」

取り残される在宅被災者 生かされない教訓

桑子
「国は去年(2018年)からこうした『在宅被災者』の支援のあり方について調査を始めています。」

有馬
「災害はいつ起こるか、本当に分かりません。
目を背けず、できるだけ早く対策を考えていく必要があります。」

Page Top