2019年3月28日(木)

ボーイング機墜落 そのとき何が起きた?

ボーイング737MAX。
去年(2018年)10月、インドネシアで墜落し、乗員乗客189人が死亡しました。
今月(3月)10日には、エチオピアでも墜落。
157人が死亡しています。


事故の調査報告書を専門家が分析。
明らかになったのは…。

航空評論家 小林宏之さん
「今までの飛行機の歴史の中では、考えられないこと。」

桑子
「ボーイング737MAX。
おととし(2017年)運航が始まった最新鋭機ですが、半年足らずで2回も墜落しています。」

有馬
「特徴は、エンジンです。
従来の機体より大きく前の方に出ています。
日本の航空会社も導入を計画するこの最新鋭機に、何が起きたのでしょうか。」

最新鋭の旅客機墜落 そのとき何が起きた?

エチオピアでの墜落事故以降、初めて記者会見したボーイングの幹部。

ボーイング シネット副社長
「737は安全だ。
安全な機種だ。
737MAXは、過去約50年の安全という歴史の中で開発された飛行機だ。」

会見後には「737MAX」の主力工場も報道陣に公開。
これも、安全への取り組みをアピールする狙いがあるものとみられています。

2年前から運航が始まった、ボーイング「737MAX」。
航続距離は従来機より最大800キロ余り伸び、燃費も14%向上しました。
LCC=格安航空会社が急激に増える中、近距離や中距離を採算よく運航できる機体は需要が高く、737MAXシリーズの受注数はおよそ5,000機と最も早いペースで売れているといいます。
日本の航空会社でも、全日空が2021年度から30機を順次国内線に導入する計画ですが、事故後、世界中で運航はとりやめられています。

その最新鋭の機体に、何が起きたのか?
インドネシアの墜落事故の調査報告書を基に、日本航空の元機長で航空評論家の小林宏之さんに分析してもらいました。

航空評論家 小林宏之さん
「パイロットは、何が起きているか分からないままに(墜落に)至ってしまったと思う。」

小林さんが注目したのは、機首の上下の向きを制御する水平尾翼です。
飛行機は、尾翼を下げると、機首が下がり。
尾翼を上げると、機首が上がります。
手動で操縦する場合、この尾翼の角度はパイロットが手元で操作して調整します。

航空評論家 小林宏之さん
「基本的に操縦かんについているスイッチで、通常、パイロットが行っている。」

737MAXでは、この操作を補助するため「MCAS(エムキャス)と呼ばれる装置を初めて搭載しました。

その仕組みです。
機体の前方にあるセンサーで、機首の角度を感知。
そのデータを基にMCASが尾翼を操作。
機首が上がりすぎると自動的に機首を下げるのです。

インドネシアの事故では、機首の角度を判断するセンサーが異常な値を示していました。MCASは誤ったデータに基づいて機首を下げる操作を行ったとみられています。
この時、パイロットは、逆に機首を上げようとしていました。

事故調査報告書に掲載されたデータです。
オレンジの線は、MCASが機首を下げる動きを示しています。
一方、上の水色の線はパイロットによる操作。
機首を上げる操作を20回以上行っていることが分かります。
2つを照らし合わせると…。

MCASの操作にあらがうように、パイロットが機首を上げようとする様子が読み取れるのです。
手動操縦に補助のための装置が割り込み、事故を招く。
専門家は、これまでの飛行機の歴史の中では考えられない事態だと指摘します。

航空評論家 小林宏之さん
「飛行機が、最終的には下向きになってしまっている。
パイロットがそれを止めようとして、ある程度こうなったかと思うけど、最終的にはこの飛行機がかなりの下向きの姿勢になって、速度がどんどんついてしまって、そのまま墜落してしまった。
コンピューターがパイロットの知らないところで、あるいは意に反したように、コンピューターが飛行機の姿勢を変えていたということ。
パイロットがそれを十分理解していなかった場合、気づかず終わってしまったという可能性もある。」

事故を防ぐことは、できなかったのでしょうか。

航空評論家 小林宏之さん
「MCASというシステム、トラブルの対処法を十分に周知していたら、事故は防げた可能性がある。
トラブルがあったときの訓練をきちっとしていたら、事故を防げた可能性があるのではないか。」

事故 防げた可能性

では、パイロットへの周知や訓練は十分だったのか。
ボーイングはNHKの取材に対して、「新システムの機能は航空会社側に、マニュアルなどで周知した」と説明してきています。

一方、外国の航空会社に所属する737MAXのパイロットはNHKの取材に対し、「新システムの説明は不十分で、事故が起きて初めて誤作動による危険性を知り、驚いた」と証言しています。
アメリカのテレビは、こう伝えています。

「アメリカン航空の操縦士によると、737MAXを導入した際の訓練は1~2時間足らずのiPadでの訓練で、シミュレータ-や実機訓練ではなかった。」

最新の技術が導入された旅客機での事故。
専門家は。

航空評論家 小林宏之さん
「あくまで主人公は人間である、パイロットであるという考え方が必要。
いかにコンピューター・機材が進歩しても、最後はベーシックなフライト、基本に立ち返る。
そういう意識と対応の訓練を、きちっとやっていく。
1つだけの要因に焦点をあてるのではなく、上流から下流までどこに不具合があったのか。
再発防止策を立てることが、大事になってくるのではないか。」

相次ぐ墜落事故

桑子
「この事故は、人間とコンピューターがいわばケンカをしたような形になったということですね。」

有馬
「そうですね、かみ合わなかったですよね。
もう一度、この737MAXの模型を見ていただきたいのですけれども、特徴はここでしたよね。」

桑子
「エンジンが前の方に出ているのですね。」

有馬
「しかもこのエンジン、従来の737より大型、重いのです。
つまり、同じ737の機体でも、バランスが変わってしまった。
パイロットにとっては操縦の感覚が違ってくる。
そこで、その違和感を自動的に補うために導入されたのが『MCAS』だったわけです。」

桑子
「パイロットをサポートするために導入されたのに、逆に混乱させてしまったという結果ですね。」

有馬
「人とコンピューターはどうあるべきか、その関わり方を考えさせられますし、今開発が進んでいる自動運転車の安全性の問題にも通じるように思う。
今回の事故、重要な教訓を残したと言えそうです。」

Page Top