2019年5月9日(木)

“学校の当たり前”を見直す

有馬
「こちら、東京のど真ん中にある千代田区立麹町中学校です。」

桑子
「この学校が今、“型破りな改革”に取り組んで、注目を集めているんです。
例えば、定期テストや宿題、学級の担任、普通にどこにもあるように思いますが、これをすべて廃止したんです。」

有馬
「公立中学校にあって当たり前のこうしたものを見直す取り組み、なぜ今、進められているのでしょうか。
そして、麹町中学校の改革が投げかけているものとは何でしょうか。」

“型破り”改革で注目 千代田区 麹町中学校

400人余りの生徒が通う千代田区立麹町中学校。
その授業風景は、一風変わっています。

こちらは1年生の数学の授業。
教員は教壇に立ちません。
生徒たちはタブレット端末で習熟度に応じた問題を、それぞれのペースで学習します。

麹町中学校 工藤勇一校長
「自分の課題で進んでいるから、待つ必要がない。
普通の授業なら教員が話している間、思考停止している。」

これまでのような一斉に行う授業よりも、質問を活発にする生徒が増えたと言います。

さらに、生徒に一冊ずつ配布されているのは、ビジネス手帳。
生徒は自分で学習計画を立て、進捗をチェックし、自発的な学習に役立てています。

生徒
「自習時間を書いて、どんどん足して、ここに週のトータルの自習時間を書いてある。
いつ何の勉強をしたらいいかわかりやすくなった。」

こうした取り組みを先頭に立って進めてきたのが、5年前に就任した工藤勇一校長です。
元は数学の教師だった工藤さん。
今の公立学校は、前例にこだわって型にはまりすぎていることで、生徒の「自律」を妨げているのではないかと考えてきました。

麹町中学校 工藤勇一校長
「手をかけて手をかけて、自分でやる意思とか気持ちを奪い取っていく。
奪われた子どもは失敗すると、必ず人のせいにする。
自分が勉強できないのはあの先生の教え方が悪かった、そういった子どもにしているのは、実は大人自身だってこと。
大人自身が転ばないように転ばないように手をかけようとすると、そのうち子どもが自分で歩くことをだんだんやめてくる。」

改革で注目 麹町中学校 カギは教員の意識

麹町中学校の取り組みは全国から注目を集め、関係者による視察は年100回以上に上ります。
この取り組みのカギを握ったのは、教員の意識が変わるかどうか。
教師歴40年のベテラン、音楽担当の小林弘美教諭です。
麹町中学校に勤務して14年になる小林さんは、当初、定期テストの廃止に抵抗感を持ったといいます。

音楽科担当 小林弘美教諭
「一番最初はあり得ないと思った。
絶対嫌だと思っていた。
ペーパーテストをやらないと、評価に結びつけられないのかなと。」

その後、工藤校長と対話を重ねた小林さん。
工藤校長の取り組みによって「当たり前」とされてきたものが見直され、生徒にもいい影響がもたらされていると実感して、考え方が変わったと言います。

音楽科担当 小林弘美教諭
「新しいことをやるのにすごい抵抗がある場合が多いが、やっぱり音楽を楽しむことが目的の一番と思って。
誰のために学校があって、誰のために授業やるといったら、子どもたちのためで。」

改革で注目 麹町中学校 “全員担任制”

そしてこの春、工藤校長が着手したのが、すべての学年での「全員担任制の導入」です。
先月(4月)中旬の朝、職員室で打ち合わせをしていたのは、1年生を担当する8人の教員たち。

150人の生徒を1つのチームとしてきめ細かく指導します。
通常、中学校ではクラスごとに担任が決められ、クラスの運営が1人の教員にゆだねられます。
責任と権限が明確になるというメリットの一方で、担任の善し悪しによってクラスに優劣が生まれてしまう弊害もあると、工藤さんは見ていました。
「全員担任制」にすれば、生徒間のトラブル解決や保護者への対応など、それぞれの教員が得意な分野で迅速に対応できると考えました。

麹町中学校 工藤勇一校長
「1人の力では限度がある。
どれだけ頑張っても。
うまくコミュニケーションをとれる教員は、子どものいろんなサインを読み取る力が優れている。
見過ごされていた子どもたちがきちんと拾われるようになった。
それもチームで。」

教員たちは毎朝、生徒の情報を共有。
問題に応じて、誰がどの役割を担うのか決めています。

教員
「今週、この子と深めた方がチャンスだと思う(子はいますか?)」

教員
「私はどこでもいいので、逆に男性の先生から見て、あの子は女の先生と深めた方がいいと感じられるならそこに入ります。」

1年生 学年主任 加藤智博教諭
「試行錯誤しながらだが、いろいろな教員のアイデアが、当事者意識が生まれるので、力を合わせてひとつの学年を見ていくぞ、という姿勢が整いつつあると思う。」

改革で注目 麹町中学校 “学校は何のために”

改革に取り組み始めて5年。
工藤校長は、今こそ「学校は何のためにあるのか」を問い直すべきだと言います。

麹町中学校 工藤勇一校長
「定期テストをやめますとか、学級担任制をやめて全員担任制しますとか、そのことが目的じゃない。
子どもが社会の中でよりよく生きていくために学校がある。
その目的を達成するために、よりこの学校に適したものとして変えていくということ。」

改革で注目 麹町中学校

桑子
「“学校は何のためにあるのか”。
工藤先生、本当に試行錯誤してここまでやってこられて、確かに変わってきているという実感を表情から感じました。」

有馬
「日本の義務教育は世界的にも高く評価されてきたんですけれども、今、さらなる変革を求められているということなのでしょうか。
こうした取り組み、これからどう広がっていくのか注目していきたいと思います。」

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