2019年5月10日(金)

作品に込めた思いとは

“ミサイル発射音探知!”

「まさか…。」

「初島が占領されたということか!?」


今月(5月)公開される映画『空母いぶき』。
南の離島に国籍不明の武装集団が上陸。
領土を占領された日本が、リアルな武力にどう対峙するのか、24時間の緊迫を描いています。

「自衛隊全部隊に『防衛出動』を命じます。」

この映画の原作者、漫画家のかわぐちかいじさんです。
シリアスな作風で、日本の漫画界をけん引する大ベテランです。

有馬
「かわぐちさんと言えば、こちら。
『沈黙の艦隊』に『ジパング』、そして『空母いぶき』。
いずれも軍事や戦争を題材に、戦後日本のあり方を問うスケールの大きな作品で、シニアから若者まで幅広く読まれています。
そのかわぐちさんは、作品にどんな思いを込めているのか。
じっくり聞いてきました。」

軍事・戦争 描き続けて… 漫画家 かわぐちかいじさん

『空母いぶき』の連載が、6年目に入ったかわぐちさん。
70歳になった今も、時には1日15時間描き続けることもあると言います。

漫画家 かわぐちかいじさん
「初めて見る読者が見た時の感覚を、自分の中で醸しながら見ている。」

「疲れたりはしない?」

漫画家 かわぐちかいじさん
「全然疲れない。
描いているのは放出だから、気持ちいい。」

作品を描く上で、こだわっていることは何か。
こう語ります。

漫画家 かわぐちかいじさん
「僕らもリアルで怖くて、怖くするつもりで書いているので、『怖い』という感覚が一番の劇画の表現の強みだと思うので、怖さがちゃんと伝わる絵にしたい。」

有馬
「怖さ、恐怖にこだわると、そのこだわりとは?」

漫画家 かわぐちかいじさん
「人間の持っている、いろんな破壊的なこととか。
やっぱりそれが戦争につながっていくと思うが、ただ怖いものを怖いままにしておきたくない、というのが本能的にある。
やっぱり戦争って怖いんですよね。
自分の中で。
だからその怖い戦争というものを、自分の中で把握して理解して、納得はたぶんいかないと思うが、そのへんまで自分で安心したいという気持ちがある。」

かわぐちさんの作品で、初めて実写映画になった『空母いぶき』。
戦闘が“戦争”へと拡大することを阻止しようとする自衛隊員の姿を描いています。

「われわれは戦争する力を持っている。
しかし、絶対にやらない。
今もそれを肝に銘じてここにいる。」

「戦わなければ守れないものがある。」

映画の前半、自衛隊が初めて敵の戦闘機を撃墜するシーン。

「射てえーっ!」

「撃墜しました。」

「忘れるな…。
この実感は、忘れずに覚えておけ。」

有馬
「『忘れるな』と声を発する、かわぐちさんの漫画の中でもすごく象徴的なシーンだったと思うが。」

漫画家 かわぐちかいじさん
「あくまでそこのモニターに映った敵の光点・光を相手にして、ほとんどゲーム感覚のような戦闘の現場になっている。
実際、相手が見えない、目の当たりにしないで戦わなきゃいけない怖さを、それを実感することをみんなに知ってほしい気持ちがあった。」

この作品で、空母という装備を題材に選んだのはどんな思いからだったのでしょうか。

漫画家 かわぐちかいじさん
「『武器というものがなんであるか』というテーマ。
武器と人間の関わり方の問題をどうするのかをテーマに、答えが描き込めればいいかなという気持ちがあって、進化する武器にきちんとつきあいながら、それを制御する力を人間がいろいろな形でもっていきたいというのが一番の理想。」

去年(2018年)、政府は自衛隊最大の護衛艦を改修して、事実上の空母にする方針を打ち出しました。

有馬
「現実は空母いぶきのストーリーを追うように、“空母いずも”が防衛大綱にのり、かわぐちさんの世界を現実が追いかけているようになっている。」

漫画家 かわぐちかいじさん
「連載を始める前、その動きはある程度読めていた。
現実を先取りして、それを読者の前に提示して見せたいという気持ちがあった。
『いぶき』という漫画に託して、アメリカと中国の覇権主義みたいなものに対して、日本はどういう立ち位置でいたらいいのかを模索したいなと。
みんなで考えていけば、たぶん道が出てくる。
ところが目を背けて見ないことにしようと、ずっとやっていると答えは出ない。
だから、みんなでどうしたら一番いいのかを考えましょうと。」

外国からの武力攻撃という、極限状況をリアルに描いた『空母いぶき』。
かわぐちさんは今後、どんな思いを込めて作品を描いていくのでしょうか。

漫画家 かわぐちかいじさん
「一番大事なところ、専守防衛をきちっとしているところは失っていないわけで、日本は。
そこは絶対に失って欲しくない、というのが僕の願い。
それが日本が世界に誇れることだろうなと。
やっぱり命を大事にする。
しかも戦わないために戦うということは、実際以上に描き込みたい。
やっぱり大事なことだと思うので。
大事にしていきたいことだと思う。」

有馬
「今回のインタビューで一番印象的だったのは、“怖いという感覚を伝えたい”ということば。
納得はいかなくとも、怖いものはそのままにしないと。」

桑子
「把握して理解することで、安心できるとおっしゃっていましたね。」

有馬
「恐怖の正体を知るというか、正しく恐れる、ということでしょうか。
かわぐちさん、『読者の皆さんに一緒に考えてほしい』と、繰り返しおっしゃっていました。

Page Top