2019年5月14日(火)

移送計画 なぜ“水没する島”に

桑子
「ミャンマーで迫害を受け、隣国のバングラデシュで難民として暮らすロヒンギャの人たち。
難民キャンプは90万人に膨れ上がり、世界最大と言われています。」

有馬
「今、その難民の一部を、無人島に移す計画が始まろうとしています。
その島がこちらなんですけれども…。
雨季になると、このように水没してしまう島なのです。
なぜ、そんな計画が今進められているのでしょうか。」

“水没する島”への移送計画 ロヒンギャの難民に何が

報告:杉本織江(アジア総局)

バングラデシュ南部、コックスバザールにある大規模な難民キャンプ。
暮らしているのは、隣国のミャンマーから逃げてきた少数派のイスラム教徒、ロヒンギャの人たちです。

杉本織江(アジア総局)
「キャンプの入り口の通りです。
両側にロヒンギャの人たちが営む、いろいろな店が建ち並んでいます。」

青果店や理髪店など数多くの商店が並び、1つの“街”を形成しています。

「その肉をもらうよ。」

こちらは、去年(2018年)撮影された難民キャンプです。
住宅の間には、まだ余地が残されています。

それが今では、住宅が地面を埋め尽くすほどに。
身を寄せる人は90万人に膨れ上がり、“世界最大の難民キャンプ”と言われています。

もともとミャンマー西部、ラカイン州に暮らしていたロヒンギャの人たち。
そこでは国籍を認められず、長年にわたって抑圧されてきました。
おととし(2017年)には、ミャンマー軍主導の治安部隊が、ロヒンギャの武装勢力に対する掃討作戦を実行。
無関係の住民も、大勢が殺害されたり暴行を受けたりしたとされています。

迫害を受けた住民は膨大な数の難民となって、バングラデシュに流れ込んだのです。
難民の流入は、もとから住んでいたバングラデシュの人たちの暮らしを脅かすようになりました。
以前、この一帯の人口はおよそ50万人。
そこに90万人が加わった結果、物価は高騰しました。

店主
「畑が難民キャンプになってしまい、収穫量が減った。
野菜の価格は約2倍になった。」

地域住民
「物価はかなり高騰した。
生活が立ちゆかない。」

治安も悪化しているといいます。
こちらの女性の家族は、住む場所を追われました。

地域住民
「あそこは家族の土地だった。」

家が難民のテントに取り囲まれてしまい、引っ越しを余儀なくされたというのです。

地域住民
「最初は同情したが、今は怖いだけ。」

バングラデシュの政府は、対応を迫られました。

バングラデシュ ハシナ首相
「食料・教育・住宅・医療を提供してきた。
これ以上の数は受け入れられない。」

そこで、難民の一部を別の場所に移送することにしたのです。
移送先は、難民キャンプからおよそ150キロ離れた、ベンガル湾のバサンチャール島。
河口にたまった土砂で、20年ほど前にできた無人島です。

島にはすでに、赤い屋根の建物が立ち並んでいるのが分かります。
バングラデシュ政府が建設した、住宅や公共施設。
これを10万人の難民に提供する計画です。
ところが…。

"モンスーンの季節には、島の60%が浸水する。”

ベンガル語で『浮島』という意味のこの島。
低地のため、サイクロンなどによって水没するおそれがあり、国連などが移住計画に懸念を示しているのです。

国連 イ・ヤンヒ(李亮喜)特別報告者
「この島に人が住めるのか、疑問が残る。
計画性のない移住を、難民の同意なく行えば“新たな危機”を生み出す。」

これに対しバングラデシュ政府は、避難棟や堤防の建設といった浸水対策を行ったとした上で、“ほかに選択肢はない”と説明しています。

バングラデシュ政府 ロヒンギャ支援担当
「高潮への対策は行っており、島に住むことはできる。
我々は、早急に問題を解決する必要がある。」

国連との調整が続いているこの移送計画は、ロヒンギャの人たちには正式には伝えられていません。
多くの人が、かつてのようにミャンマーで暮らすことを望んでいますが、再び迫害されることを恐れて帰れずにいます。
おととし、キャンプに逃れてきた一家に話を聞きました。

ミャンマーから避難
「義理の息子やその父親、家族がみんな殺された。
銃で撃たれ、家を焼かれた。
大勢が殺された。
私は銃弾で傷を負ったが、なんとか逃れてきた。」

男性の娘は夫を殺され、自分も暴行されたといいます。
顔を出さないという条件で、話を聞かせてくれました。

ミャンマーから避難
「ミャンマーに帰りたい。
ここは私たちの国ではない。
私たちは、ただふるさとを求めているだけだ。」

桑子
「バングラデシュ政府は、国連の理解を得て9月には移送計画を実施したいとしていますが、島の安全対策が本当に十分なのかということを、しっかり確認してほしいと思います。」

有馬
「ミャンマーの指導者は、ノーベル平和賞受賞のあのアウン・サン・スー・チーさんです。
スー・チーさんは『この問題の解決には時間がかかる』と繰り返し釈明してきましたが、状況はどんどん悪くなっています。
難民たちには時間がありません。
そろそろ、強い指導力を見せて欲しいと思います。」

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