2019年6月5日(水)

「ここにいてはダメ」ハザードマップに困惑 異例の呼びかけ 危機感が

桑子
「こちら、東京・江戸川区が新たに作った水害のハザードマップ、つまり被害を予測する地図なんですけれども、ここを見ていただきたいんですね。
『ここにいてはダメ』とあるんです。」


有馬
「どきっとしましたね。
江戸川区にいてはダメ!
そんな意味だとすれば、これずいぶん強い表現ですよね。」

桑子
「さまざまな反応が出ているんです。
ツイッター上には、“江戸川区内には居場所はないのか?” ですとか、“まさか自分が住んでる区から『どっか行け』って言われるとは…” などなど、困惑の声が続々と投稿されているんです。」

有馬
「住民の皆さんにとってみますと、戸惑うというか、ショックを覚えますよね。」

桑子
「この強い表現をあえて使った背景には、それだけの危機感があるんです。」

「ここにいてはダメ」 異例の呼びかけ 真意は…

深川仁志リポーター
「今回、江戸川区が発表したハザードマップ。
住民の皆さんへの説明会が行われます。」

昨夜から始まった住民説明会。
なぜ、「ここにいてはダメです」という異例の表現を使ったのか。
江戸川区の防災担当者が強調したのは、大規模水害時に区が置かれる厳しい状況でした。

江戸川区の防災担当者
「ひとたびとんでもない豪雨や台風に襲われたなら、とても深く水につかり、水も2週間もひかないなど、区民の命を脅かす事態となってしまう。」

ただ、住民からは戸惑いの声が。

住民
「『区外に逃げなさい』と言われてもどうしたらいいのか。」

住民
「『個人で逃げなさい』と(ハザードマップ)作りましたから、こうなるから『逃げなさい』と言っても、まずうまくいかないだろう。」

70万人が住む江戸川区。
西に荒川、東に江戸川、南に東京湾と、水に囲まれています。
しかも、区内の7割が海水面より低い「海抜ゼロメートル地帯」です。

今、心配されているのが、地球温暖化による台風の巨大化です。
猛烈な台風が江戸川区を襲ったらどうなるのか。
想定される最大規模の豪雨や高潮が発生した場合、江戸川区のほぼ全域が浸水。
中には、建物の3階から4階にあたる5メートル以上の浸水が発生するとされた地域も。
区内の広い範囲で1週間から2週間以上の浸水が続くとされています。

さらに、被害は周辺にも及びます。
江戸川区を含む荒川流域の5つの区の被災者は、最大250万人にも上ると想定されているのです。

このハザードマップ。
過去には、想定とほぼ同じ被害が発生したケースが多くあります。
去年(2018年)の西日本豪雨で51人が死亡した岡山県倉敷市真備町。
市が豪雨の前に発表していたハザードマップでは、こちらの赤いエリアで浸水が想定されていました。
実際の浸水範囲を重ねてみると、ほぼ一致していたことが分かります。

では、江戸川区に暮らす70万人はどのようにして区の外に避難すればいいのか。
区が打ち出しているのは、早期の避難です。
氾濫が予想される72時間前から、周辺の区とともに住民の避難についての検討を開始。
48時間前には、避難の呼びかけを開始します。
避難先は、神奈川県や茨城県なども想定。
その上で、避難場所は親戚や知人の家、宿泊施設、さらには勤め先など、それぞれ各自で確保してほしいというのです。

自治体が避難場所を設定せずに、他の自治体への避難を求めるのは異例のことです。

江戸川区 防災危機管理課 本多吉成統括課長
「行政が避難場所を指定していないことに、お叱りの言葉をいただくこともあるが、区民の命を守ることが優先される。
今から自身で避難場所について、家族で考えながら、検討してもらいたい。」

「ここにいてはダメ」とまで訴えるハザードマップ。
危機感を募らせているのが、住民の避難を支援する役割を担う自治会です。
およそ4,000人が加入する、東松一丁目町会の関口孟利会長です。

江戸川区 東松一丁目町会 関口孟利会長
「道路が低いでしょう。」

深川リポーター
「低いですよね。」

江戸川区 東松一丁目町会 関口孟利会長
「土手の下の道路が、(川の)水よりも低いところを走っている。」

深川リポーター
「これ水よりも低いんですか。」

江戸川区 東松一丁目町会 関口孟利会長
「低いです、この道路は。」

自治会では年に1、2回防災訓練を実施してきましたが、いずれも地震や火事などを想定したもの。
浸水による広域避難は想定しておらず、何から手をつけていいかわからないと言います。

江戸川区 東松一丁目町会 関口孟利会長
「いつ我々の町に(大規模水害が)起こるか分からない、危険は常にある。
そのときに地域住民をどう誘導して避難させたらいいのか、大変危機感は強く持っている。」

今回のハザードマップ発表を受け、関口さんは早速、自治会のメンバーを招集。
課題を話し合いました。

「皆さん安易に考えている。
行政がなんとかしてくれると皆さん思っているから。」

「正直言って私も田舎が遠い。
いざそこへ行けと言われても、何代か続いていた親戚関係も薄くなっている。
そこへ避難させてくれとなかなか言いにくい。」

「自力で避難が難しい方が(いる)。
これは本当に1つの課題。」

江戸川区 東松一丁目町会 関口孟利会長
「やはり自分の命は自分で守る。
日頃みんな言っていることなんだけど、こういうの(ハザードマップ)見てると “一体誰が助けてくれるの?” って、そんなことばっかりしか考えない。
それじゃダメ。」

江戸川区のハザードマップ作りに関わった専門家は、避難所の確保など行政の対応には限界があり、おのおのが水害に備える必要があると指摘します。

東京大学大学院 片田敏孝特任教授
「ここにいてはダメだ、という状況あるときに、避難先まですべて行政が準備しきってから伝えることになると、いつまでたってもできないと思う。
各自の努力の中で、自ら身を寄せる場所を確保する努力もしなければいけないというのが実態。
大事なことは“どんな状況にあっても、このような事態を迎えたとき、命を失わないこと”。」

「ここにいてはダメ」 異例の呼びかけ

桑子
「受け身ではだめなんだっていうお話ですけど、それにしても、70万人が全員区の外に避難するっていうのは、経験はもちろんないですし、大変なことですよね。」

有馬
「大変なことなんですけど、実は、この広域避難を実際にやっている国ってあるんですよね。
アメリカなんですけれども、映像は、一昨年(2017年)フロリダを襲ったハリケーンの『イルマ』の時のものなんですけれども、これ見てください。」

桑子
「車の行列がすごいですね。」

有馬
「そうなんですよ。
ハリケーンが上陸する前に、このように650万人が一斉に避難したんですね。
その移動距離、人によりますと、1,000キロ以上という人もいたんですね。
どういうことかというと、東京から北海道までの距離を避難した人もいたということなんですよね。」

桑子
「相当な距離、しかも650万人。
でも、実際に皆さん避難したわけですよね。
そこから私たちが学べることがありそうですよね。」

有馬
「そのためにはまず、どこにどうやって避難するのか、私たち、自分が、今のうちから備えて考えておくこと、これがやはり重要ですよね。」

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