2019年6月17日(月)

“子どもがいない人生”を歩む 不妊治療 夫婦の“その後”

桑子
「こちらは先月(5月)、都内で開かれたイベントです。
時折、笑顔ものぞかせているんですけれども、実は女性たちが打ち明けているのは、長い不妊治療を経ても子どもを授かることができず、これまでずっと抱えてきた悩みなんです。
今、こうした催しが全国各地で開かれています。」

※会を主催した「マダネプロジェクト」は、子どもがいない女性を応援するプロジェクトで、不妊治療の経験者以外の方も幅広く参加しています。


有馬
「不妊治療をやめて、子どもがいない人生を歩み始めた夫婦を取材しました。」

“子どもがいない人生” それぞれの選択

大阪・豊中市に住む堀田敬子さんと倫生さん夫婦です。
20代で結婚した2人。
子どもがなかなかできず、敬子さんが30歳の時に、不妊治療を始めました。

35歳の時に一度は妊娠したものの流産。
このことが、敬子さんの子どもへの思いを強めることになっていきます。

堀田敬子さん
「妊娠してすごくうれしかったし、すごくそのときに思った。
私ってこんなに(子どもが)ほしかったんだって。」

流産したあと、敬子さんは勤めていた会社を退職。
やりがいを感じていた仕事を諦め、不妊治療に専念することにしました。
その後、体外受精を10回以上繰り返すなど、不妊治療に500万円以上つぎ込んできました。
しかし、再び妊娠することはありませんでした。

堀田敬子さん
「“ここまでやって、なんでダメだったんだろう”という思いが、もう本当にそのたびにダメだしされるようで。
結局、私のどこが悪いんだろうって自分を責めることになってしまって。」

そして敬子さんが40歳になったとき、夫婦は話し合い、10年間続けた不妊治療をやめることを決めました。

夫 倫生さん
「大変だったよなって、大変な思いさせたよなと。
(子どもがほしいからではなく)結婚したくて結婚したというのがあったので。
もうこれ以上(敬子さんが)傷つくのは見たくない。」

「子どものいない人生」をどう歩んでいくのか。
敬子さんがたどりついたのは、不妊に悩む女性たちに寄り添うカウンセラーの仕事でした。
各地で講演を行うなど、忙しい毎日を送っています。

堀田敬子さん
「喪失感が不妊カウンセラーになることで埋められた…埋められたのかな。
それ(不妊の経験)を生かすことができる、無駄にしないで済むことができるのは、私にはすごく力になった。
力を与えてもらった。
“ただでは起きない”って皆に言われる、自分でもそう思う。
でもそれってすごく豊かなことだと思いませんか。」

子どものいない人生を受け入れたことで、2人の時間を大切にできるようになったという夫婦もいます。
神奈川県に住む吹田真司さん、香苗さん夫婦です。
夫婦で5年間続けた不妊治療。

香苗さんは薬の副作用で日常的に頭痛や倦怠感に襲われ、精神的にも追い込まれていったと言います。

吹田香苗さん
「気持ちが悪かったり、吐き気がしたり、体調すぐれないのがずっと続いた。
気持ち的にもう限界かなというのがあった。」

夫 真司さん
「できれば(子どもは)ほしかった。
でも必要以上に彼女に対してそれを求めるのはしてはいけないかなと。
苦しみながら、ずっと痛いと言いながら頑張っているのに、もっと頑張れなんて決して言えない。」

香苗さんは治療を断念したときの苦悩を日記につづっていました。

「夫を父親にしてあげられない」、「自分への情けなさ、怒り」。
「離婚」のふた文字が脳裏をよぎりました。

吹田香苗さん
「私と結婚していなかったら、もしかしたら違う人との子どもができて父親になっていたかもしれない、という思いがずっとあった。
申し訳ないなと。
女である私が妊娠できなかったというのは、すごく大きなことだと思っている。」

不妊治療をやめて家にこもるようになった香苗さんを支えたのは、真司さんでした。
香苗さんを外に連れだそうと、ローンを組んで大型バイクを購入したのです。

吹田香苗さん
「でかくてびっくりした。
乗り降りできるか、そっちのほうが不安で。」

月に一度はバイクに乗って遠出するようになった2人。

夫 真司さん
「2人の距離感がすごく物理的にも近い。
見える感覚とか、周りの空気・風とか、同じものを感じとることができる。」

つらい時期をともに過ごしたからこそ、互いを思い合える夫婦になれたと感じています。

夫 真司さん
「あのときは泣いてばかりでしたからね。
これからはどんどん笑っているような、笑顔が多いような、本当の意味で笑顔が多い家庭を築いていけないかなと。」

吹田香苗さん
「2人でのんびりと、ゆっくりと時間が流れるような感じがして、すごく穏やかに暮らしていけるなって。
一緒にこれからの人生、楽しく生きていきたい。」

不妊治療 孤立しない“場”を

桑子
「香苗さん、不妊治療を断念して家の中に閉じこもってしまう時期もあったそうなんですよね。
冒頭に紹介した女性たちの集まりに参加をして、悩みを共有することで、少しずつ気持ちが前に向けるようになっていった、ということなんですよね。
今、不妊治療、年間45万件近く行われているということです。
そういった皆さんが、率直に胸の内を打ち明けられる場というのが大事ですし、これからどんどん充実していったらいいな、ということを感じました。」

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