2019年6月24日(月)

中学受験が重圧 心を病む子どもたち

桑子
「『家で暴れたり、大きな声を出したりする』『塾のテストを逃げ出した』。
今、中学受験のストレスを理由に心療内科を訪れる小学生が相次いでいます。」

有馬
「こう呼ぶ専門家がいるそうです。
『教育虐待』。
教育に熱心な親が子どもを過度に追い詰めてしまう実態を取材しました。」

中学受験が引き金に “教育虐待”に陥る家族

世田谷区にある心療内科のクリニックです。

クリニック川畑 川畑友二院長
「家庭内暴力のケース。
勉強が嫌で嫌で逃げ出した、家出までした。
やらされていることに反発して、もう嫌だって、全部投げ出しちゃった。」

相談に訪れたのは、小学3年生から中学1年生までで、去年(2018年)1年間だけでも18人に上ります。

クリニック川畑 川畑友二院長
「心身ともに疲れるし、自律神経も狂ってしまう。
憂鬱な気持ち、さみしい気持ちになったり、精神的に不安定になる。」

中学受験に臨み、子どもを過度に追い詰めてしまったと語る親子です。
父親は40代、子どもは現在中学1年生です。
父親は、最初はいい経験になるからと子どもに受験を勧めました。

40代 父親
「大きな理由があったわけではない。
最初は軽い気持ち。
高校受験からでもいいが、経験しておけば、中学に入ってから楽だろうと。」

息子も親の意見に納得し、受験をしてみたいと思いました。
小学3年生の時でした。

息子(中学1年生)
「親から提案があって、気軽に『いいよ』と始めた。」

首都圏では、中学受験の準備は小学3年生の2月から始まります。
都内の公立小学校の子どもたちが私立中学に進学する割合です。
都心部に向け、その割合は高くなっていきます。

この杉並区の公立小学校では、6年生の6割ほどが受験するといいます。

杉並区立永福小学校 八尋崇校長
「昨年度の卒業生、このへんは全部受験した子。
このクラスのだいたい6割近く、半分以上。」

受験を目指す子どもの中には、勉強に追われ、ストレスを抱えるケースもあるといいます。

杉並区立永福小学校 八尋崇校長
「イライラをどう表現していいかわからない子が多い。
その子が何がつらいのかくみ取ってあげて、話を聞いたりする場面が必要。」

最初は気軽に受験を体験させるはずだった父親の気持ちは少しずつ変化していきました。
問題がなかなか解けない息子の様子を見て…。

40代 父親
「なぜここでつまずくんだろうと感じていた。
だんだんエスカレートしていった。」

実は父親には、かつて中学受験を経験し、難関校に合格した経験がありました。

40代 父親
「子どもは自分とよく似た人間で、“分身”みたいなイメージがあった。
ところが子どもは、私が想像していたほどではなかった。」

父親は、成績を上げるために平日は4時間、休日は8時間、勉強をするよう時間を管理し始めました。
できないと水をかけたり、声を荒げることもあったといいます。

40代 父親
「これぐらいのことができなくて将来どうするんだという焦りと、悔しさ。」

勉強が好きだった息子。
しかられるうちに、父親の機嫌を損ねないことだけが勉強の目的になっていきました。

息子(中学1年生)
「俺が変わらないとと思い、いっそう勉強に集中した。
父の理想にあっていない自分はだめだと思って。」

こうした日々が続き、息子はとうとう心も体も疲れ切ってしまいました。

父親が寝室にいくと、うなだれた息子がいました。
「もう無理」とつぶやきます。
その後、息子は、外に出ることが怖くなり不登校になりました。
小学5年生の秋のことでした。

何が父親をここまで駆り立てたのか。
中学受験が本格化し、10%を超えるようになったのは平成に入ってから。
専門家は、この親のような40代の世代が「社会で成功するためには中学受験は不可欠だ」と考え、子どもにも受験させるケースが増えているといいます。

専門家は、中学受験では、親が自覚なく子どもに価値観を押しつけかねないと警告します。

東京家政大学 心理カウンセリング学科 相馬誠一教授
「過剰なまで(親の決めた)体制の中に自分の子どもを落とし込めると、もう虐待。
親に聞くと“子どもが望んでいるから”と言うが、親が望むから子どもが従わざるを得ない。
少し立ち止まって考えてみることが必要。」

子どもが不登校になった父親。
息子との会話を大切にし、その考えを尊重するようになりました。
親子でカウンセリングに通った結果、少しずつ理解し合うようになったといいます。

40代 父親
「昔は(言葉の)キャッチボールがなかった。
彼が何か話しかけてきても、結論を即座に言い返して会話が終わりとか。
明らかにそこは変化した。」

息子はその後、中学受験をしないで地元の公立中学校に進学しました。
現在も元気に通っています。

息子(中学1年生)
「本当に子どもからみて、してほしいことは、親からの応援と、わからないことがあったら普通に教えてほしいこと。」

中学受験 もう一度親子で話そう

有馬
「『普通に教えてほしい、応援してほしい』という息子さんの言葉、お父さんに届いたんですよね。」

桑子
「よかったですね。
これから東京では、中学受験をする子どもたちがもっと増えていく傾向にあるとみられています。
初めは子どもも前向きに受験勉強を始めたとしても、そうでなくなる場合ってありますよね。
お子さんのちょっとした変化に気付いてあげられるといいな、と思います。」

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