2019年6月28日(金)

対立激化 アメリカと中国

有馬
「今回のG20、重要なテーマはいくつもありますが、注目はやはり米中の貿易摩擦と言えます。
各国の記者に聞きましても、最大の関心事は米中対立の行方でした。」

“米中貿易戦争” 制裁と報復 深まる対立

アメリカ トランプ大統領(2018年3月)
「1,000億ドル分の貿易赤字を、ただちに削減するよう中国に伝えた。
やられたらやりかえす。」

アメリカ、トランプ政権による中国からの輸入品への関税上乗せに端を発した、米中二大国の対立。
度重なる交渉を経ても、溝はいっこうに埋まらず、先月(5月)、交渉は事実上決裂しました。

この間、互いに関税をかけ合う「制裁と報復」が繰り返されてきました。
アメリカが中国からの輸入品、2,000億ドル分に上乗せしている関税を25%にまで引き上げ。
中国も対抗措置として今月(6月)、アメリカからの600億ドル相当の輸入品に最大25%の関税を上乗せしました。
さらに、アメリカは残る3,000億ドル分の輸入品にも、関税を上乗せする手続きを始めているほか、圧力を関税以外の分野にも拡大。
「安全保障上の脅威だ」として、次世代通信規格5Gの技術で先端を走るとされる、通信機器大手「ファーウェイ」の排除を各国政府に呼びかけ、締め付けを強めています。

アメリカ トランプ大統領(5月)
「(中国は破滅的な影響を受けている。
関税を避け、中国から企業が逃げ出している。」

対する中国も、アメリカが大きく依存する希少資源「レアアース」の輸出規制もちらつかせ、態度をさらに硬化。

習主席が、かつて中国共産党がおよそ1万2,000キロを徒歩で行軍したという故事、「長征」になぞらえて演説を行ったと報じられるなど、長期戦に臨む構えも見せています。

中国中央テレビ(先月放送)
「『“新たな長征”だ。
我々は国内外の対抗勢力を討ち、勝利を勝ち取らなければならない』と習主席が述べた。」

一方、米中の対立は双方の経済に、悪影響を及ぼし始めています。
アメリカでは、中国への大豆の輸出が減少するなど、農家への悪影響が顕著に。
中国でも、企業が生産拠点を東南アジアなどに移す動きもみられ、雇用への影響が出ています。
そして影響は世界経済にも。
IMF(国際通貨基金)は、米中の貿易摩擦がさらに激しくなれば、来年(2020年)の世界全体のGDPが0.5%押し下げられるとする試算を明らかにしています。

IMF ラガルド専務理事
「世界経済の成長が0.5%減少すると、すべての国が影響を受ける。
貿易摩擦解消のため(G20は)何を改善できるか、決定が下せるか、真剣に検討しなければならない。」

どうなる“貿易戦争” アメリカが狙う中国の譲歩

有馬
「ここからは、中国総局の関総局長、ワシントン支局の油井支局長と話を進めていきます。
まず油井さんに伺います。
米中の貿易摩擦が長引いていますが、トランプ大統領としてはそろそろ具体的な成果が欲しいところですよね?」

油井秀樹支局長(ワシントン支局)
「その通りです。
何と言っても、アメリカでは来年の大統領選挙に向けた動きが本格化しています。
これに向けてトランプ大統領は、成果をあげて国民にアピールしたいというのが本音です。」

有馬
「今回、トランプ大統領はどんな成果を具体的に目指しているのでしょうか?」

油井支局長
「米中貿易交渉でトランプ政権が求めているのは、中国に確実に約束を守らせる絶対的な保証です。
具体的には、『中国の法改正』です。」

有馬
「アメリカが『中国の法改正』を望む。
どういうことなんでしょうか?」

油井支局長
「アメリカが要求しているのは、『アメリカの技術を盗むな』、つまり知的財産権の侵害をやめ、アメリカ企業に技術の移転を強要するのはやめろ、ということです。
しかしアメリカには、これまで何度も約束しては破られてきたという、極めて強い不信感があります。
だからこそ今回はこの『中国の法改正』まで求めて、将来にわたる保証を得ようとしているのです。」

有馬
「関さん、これは中国からしてみると、内政干渉にも思えますよね。
習主席は、簡単には応じられないのではないでしょうか?」

関則夫総局長(中国総局長)
「これは中国の主権に関わる問題です。
ですので、この法改正の要求をそのまま、アメリカとの合意文書に盛り込むことは絶対に出来ないと思います。
実は中国はすでに、企業への技術移転の強要を禁止するなど、ある程度の法改正は進めてきました。
習主席としては、国内の対米強硬派の声を抑えつつ、なんとか穏便にまとめようとしてきたわけです。
ところがトランプ大統領は合意に一歩近づくと、『後出しじゃんけん』のように新たな要求を突きつけてきたと、中国はそう感じております。
そうした間に、中国では影響が広がっていて、いまや国全体が協議の行方を固唾をのんで見守っています。
国民からの批判も出かねない状況で、習主席にとってさらなる譲歩は簡単ではありません。
このため今回の会談で、すべての問題で妥結し合意に至る可能性は、ほぼないと思います。」

有馬
「となると、中国、習主席はどう出てくるのでしょうか?」

関総局長
「現時点では『持久戦』です。
中国としては協議の継続で合意し、さらなる追加関税を回避。
そして、持久戦に持ち込みたい考えだと思います。
これには、アメリカ大統領選挙が迫ってくればトランプ大統領に焦りが出て、議論を優位に進めることが出来るのではないか、いう読みがある。
これに対し習主席は共産党一党支配の国、中国の指導者。
選挙や支持率を気にする必要はありません。
この利を活かしてじっくり対峙(たいじ)し、議論を有利に進められる環境が整うのを待つということだと思います。」

北朝鮮 非核化は

有馬
「その習主席、直前に気になる動きがありました。
北朝鮮、平壌を訪問しました。
アメリカと対峙するにあたって、北朝鮮の非核化の問題を、カードにしようとしているのでしょうか?」

関総局長
「そのとおりだと思います。
今回の訪朝は貿易問題でトランプ大統領に押し込まれても、北朝鮮への影響力を誇示することによって、対抗するためのカードにする狙いだったと思います。
ただ中国は、非核化の問題は、まず米朝が話し合うべきという立場です。
現時点では本格的な仲介に乗り出す気はないと思います。」

有馬
「となりますと、カギを握るのはやはりアメリカ、トランプ大統領ということになりますよね。」

油井支局長
「アメリカとしては、まずは非核化に向けた北朝鮮の具体的な行動が先だという、基本的な立場は変わっていません。
ですが、こう着状態が続くなか、政権内部では打開策の一つとして、時間を区切って一時的に制裁の一部を緩和し、その間に北朝鮮の行動を見極めるという案も出ているのです。
ただ、こうした案は政権内では少数派とみられ、依然、強硬な意見も根強いのです。
しかしこの政権、トランプ大統領の判断がすべてです。
大統領は3回目の米朝首脳会談も視野に、最近も親書を交わしたばかりです。
今後、再び動きが活発化する可能性があり、目が離せない状況が続きそうです。」

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