2019年7月5日(金)

“見えない圧力”強まるなかで

武装した警察に、激しく抗議する女性。
拘束された夫を返せと訴える妻たち。
いまから10年前の7月、中国西部、新疆ウイグル自治区で起きた政府への抗議デモです。
中国政府の姿勢が抑圧的だとして、少数民族ウイグル族の怒りが爆発。
これに対し当局は次々に人々を拘束し、抑え込みました。
ウイグル族に反感を抱く、漢族の一部も住民と衝突。
この暴動で多くの死者が出ました。

以降、中国政府は「テロ対策」だとして、ウイグル族に対する締め付けを強化。
ウイグル族のイスラム教信仰への制限も強めています。

あれから10年。
巨大なスクリーンに映し出されるのは、習近平国家主席の姿。
武装した警察や兵士たちが、厳重な警戒態勢を敷き、監視を強めています。

桑子
「当局の圧力に、抗議活動を抑え込まれてきたウイグルの人たち。
彼らを取り巻く状況は、いっそう厳しさを増しています。」

有馬
「暴動から10年目の今日(5日)。
ここ日本で再び声をあげた人たちも、“見えない圧力”にさらされていることがわかりました。」

“暴動”から10年 いま再びウイグル族の訴え

取材:篁慶一(国際部)

「家族を返せ!」

「ウイグルに自由を!」

今日、東京の中国大使館前。
集まったのは、日本で暮らすウイグル族の人たちです。
声明を読み上げた、アフメット・レテプさん。

アフメット・レテプさん
「罪の無いウイグル人を再教育センターという収容所から、ただちに釈放せよ!」

アフメット・レテプさん
「せめて自由な日本で、声だけでもはっきりあげて『家族を返せ』と。」

25歳の時に来日し、大学院を卒業した後、都内の会社に就職したアフメットさん。
10年前、市民のデモが鎮圧される様子に強い衝撃を受けました。
当時は抗議活動に参加しましたが、その後、故郷の家族に危険が及ぶことを恐れ、表だった行動は控えてきました。
そのアフメットさんが、再び声を上げたのには“ある理由”がありました。
故郷で暮らす父と弟をはじめ、親族12人がおととし(2017年)当局に拘束され、母親とも連絡が取れなくなったのです。
去年、そのアフメットさんのもとに、拘束されている父親の映像が送られてきました。

送り主は「地元公安当局」を名乗る人物でした。
映像の中の父親は、いつもかぶっていた伝統の帽子を脱ぎ、イスラム教徒の高齢男性が生やすひげもそり落としていました。
そして予想もしていなかったことばを語りました。

アフメットさんの父親
「長く連絡出来なかったが、施設で勉強に励んでいる。
体も健康です。
君が我が国の利益を最優先し、積極的に協力すれば私たちも安心できる。」

アフメット・レテプさん
「私が知っているお父さんじゃない。
全然違う。
別人になっている。」

ウイグル族に、いま何が起きているのか。
これは、中国当局がウイグル族の職業訓練のために設けたとする施設です。

海外メディアに公開されたのは中国語や料理、絵画などを学ぶ様子。
しかし、こうした教育の裏で徹底した思想教育が行われ、人権侵害が横行しているという報告が相次いでおり、国際社会は非難を強めています。

これに対し、中国政府は激しく反発。
基本的な人権は最大限、保障されていると主張しています。
父親の映像を受けとったアフメットさん。
家族の身を強く案じています。

アフメット・レテプさん
「これを見ていちばんつらかったのが、目や顔に、お父さんらしい光が全くない。
人間を、完全に共産党のロボットにしようという試みだ。
それに従わない者は容赦なく、拷問などで命を奪っていく。」

映像を受け取った1か月後、アフメットさんのもとに同じ人物からメッセージが届きました。

メッセージの音声
「日本の(ウイグル人)組織について、直接参加しないにせよ、あなたも状況は把握しているはずだ。
わが国の立場に立ち、われわれと協力すれば、あなたの家族の問題を解決するのはたやすい。
私の言っている意味が、わかりますよね?」

家族を人質に「スパイ活動」を要求されたと受けとめたアフメットさん。
苦渋の決断を迫られました。

アフメット・レテプさん
「テロリストが人質をとって映像を相手に送り、要求を出してきたのと全く同じ。
断れば、家族がさらに迫害受けるこのは明らかだが、協力すれば自分自身が人間として許せない。」

先週末、大阪で開催されたG20サミット。
市民が開いた集会に、アフメットさんの姿がありました。

アフメット・レテプさん
「お父さん、弟、親戚を含め12人が、2年前から強制収容されている。」

要求を拒み、ウイグル族の声を国際社会に訴える道を選んだのです。

アフメット・レテプさん
「日本のすぐそば、すぐ隣の中国で、人類史上最悪の強制収容が行われている。
親に電話一本出来ないまま、3年目に入ろうとしている。
これが、いま起きている現実だ。」

再び声を上げ始めたアフメットさん。
しかし中国政府は今も人々の拘束を続け、家族が戻ってくる見通しは立っていません。

桑子
「自分の家族の身を案じながらも、こうして声を上げて取材にも応じてくださること、とても切実さが伝わってきました。
それと同時に、いま香港で高まっている中国の影響力に対し、デモが起きていることも思い起こしました。」

有馬
「ウイグル族に対する締めつけ強化も、なんとしてでも一つの中国を守ろうという当局の危機感の裏返しだと思います。
しかしその強大な力の行使は、あまりに一方的にも見えます。
私たちは、声なき声をしっかり伝えていきたいと思います。」

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