2019年7月25日(木)

相模原 障害者殺傷事件 “内なる差別”を乗り越えたい

有馬
「相模原市の知的障害者施設『津久井やまゆり園』で19人が殺害された事件から、あす(26日)で3年です。
NHKの特設サイトには、今も事件のことを許せないという声が後を絶ちません。」

桑子
「一方で、自分の中にある障害者への差別的な感情を拭いきれない、という投稿も見られます。
こうした、心の中の『内なる差別』を乗り越えようと踏み出した人たちを取材しました。」

“内なる差別”と向き合って 障害者家族の思い

リポート:山下由起子・三浦佑一(首都圏放送センター 社会部)

投稿を寄せた1人、みふゆさんです。
19人の命を奪った被告の言葉を引用して、こう書き込みました。

“「障害者はいない方が幸せだ」このような思考に、私自身も思いをはせた時期があります”

進行性の脳の障害のため、意思疎通できなかった弟の勲さん。
みふゆさんはその存在を人に隠してきました。

みふゆさん
「この状態で、弟が生きていると言えるのか、(自分が)人として最低だなということと、いない方が幸せなのかなという気持ちと、長いこと葛藤していた中で(被告の)あのセリフがあって、じゃあ私も一緒なのかな。」

事件とちょうど同じ時期に亡くなった勲さん。
みふゆさんは、長年続けてきた詩の創作で弟のことをつづるようになりました。
避けてきたはずの弟。
しかし、浮かんできたのは、勲さんが楽しそうにしていた思い出でした。

“君が好きな電車
開かずの踏切前
じっとたたずむ
目の前を通り過ぎていく
電車を指さして”

詩を書き続けることで、懸命に生きていた弟の姿に思いをはせるようになりました。

みふゆさん
「弟のことが好きだったんだなと、最近思えるようになってきた。
何もしていないけれども、生きていくことがどれだけ大変なことか、そこにいるだけで肯定される存在である。
自分の姿を通して、彼はきちんと生涯をかけて教えてくれていたように思う。」

自分の心の中にある「内なる差別」を乗り越えようと今も模索している人もいます。
岩本佳子さんです。
39歳になる息子の次郎さんには、脳性まひがあります。
精神的にも不安定で暴れることが多くなり、16年前から施設で暮らしています。

岩本佳子さん
「暴力がすごい。
夜寝ても自分(息子)が寝られなかったら(私も)一緒に起きていろ、そういうことがずっと続いて。
自分の生活が成り立たないことって、想像できないかもしれないけど。」

事件を起こした被告の言葉を聞いたとき、自分の中にある次郎さんへの負の感情を意識せざるを得なかったと言います。

岩本佳子さん
「あなたは人に迷惑かけるから、親より先に逝ったほうが幸せというのは、おかしい。
おかしいけど、そうなんじゃないかという気持ち、拭いされない。」

先週、岩本さんは障害のある人やその家族などが集まる対話集会に参加しました。

世田谷一家殺害事件の被害者遺族 入江杏さん
「今日は、やまゆり園を考える会。」

この日のテーマは3年前の障害者殺傷事件。
岩本さんが口を開きます。

岩本佳子さん
「やまゆり園の話を聞いた時に、すごく自分で恥ずかしいような、親より先に逝ってほしいという気持ちはちょっとある。」

自閉症の息子亡くした女性
「将来が心配ということの裏返しですよね。
自分がいなくなったあと、この子は幸せかどうかが心配だから、その前に亡くなったほうが、というのは。」

岩本さんに語りかけたのは、5年前に自閉症の息子を自殺で亡くした女性でした。

自閉症の息子亡くした女性
「(息子が死んだ時は)本当につらくて。
子どもが死んでしまったという。
今は気持ちが落ち着いているけど。
死んでいい命なんてない。
線引きも出来ないし、みんな大事に生きている。」

岩本さんは、これまで苦労をさせられながらも、家族に愛され笑顔を見せていた息子のことを思い返していました。
こうした対話を続け、向き合っていこうと考えています。

岩本佳子さん
「子どもを置いていくのは非常に不安。
できることなら子どものあとに。
そういう気持ちはあるが、そういう気持ちにならない世の中になるよう、私たちも努力しなくてはいけないし、すべての命が生きているだけでいい、そういう気持ちになりたい。」

障害者殺傷事件から3年 遺族からの手紙

障害者殺傷事件から3年。
娘を亡くした母親からNHKに寄せられた手紙です。

“娘は多くの人々に安らぎをあたえてくれ、たくさんの人たちに愛されていて、大切な大切な娘だったのに、もう会う事ができないなんてあまりにもひどいです。
たとえ重度の障がいがあっても、一生懸命生きている。
その存在を無理やり奪う事は絶対に許されない。”

相模原 障害者殺傷事件

桑子
「遺族から届いた手紙の全文は、NHKの特設サイト『19のいのち』に掲載しています。」

有馬
「事件の初公判は、来年(2020年)1月に予定されています。」

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