2019年9月9日(月)

仲直りするはずの“握手” かえって深刻な事態に…

桑子
「握手をして仲直りしよう。
学校で、いじめを解決させようと先生が子どもたちに求める握手。
NHKがウェブサイトで紹介したところ、こんな声が寄せられました。
“いじめた子と強制的に握手させられ『これで仲直りな』と言われた”。
“握手で仲直りできるはずもなくいじめは続いた”。」

有馬
「いじめ解決を急ぐ学校の先生が、拙速に『握手』を求め、事態をより深刻化させていることが、経験者たちの証言からわかってきました。」

仲直りの“握手” いじめ終わらず より深刻に

取材:勝又千重子(社会部)

仲直りの握手を経験した28歳の男性です。
あの「握手」がかえって自分を苦しめることになったと過去を振り返りました。

この男性は、殴られたり、蹴られたりして、幼いころからいじめを受けていました。

いじめを受けていた男性(28)
「彼が小学4年生からいじめていた人で。
もともと友だちだった彼が加わるようになった。」

小学5年生の時、勇気を出していじめられていることを先生に訴えた男性。
その時、先生から促されたのは、いじめている同級生と仲直りの握手。
これでいじめがなくなるという希望が持てたと言います。

いじめを受けていた男性(28)
「安どした。
よかったという気持ちだった。」

しかし、いじめはなくなりませんでした。
それどころか、荷担する同級生が増えるなどいじめはさらにエスカレートしていったと言います。

いじめを受けていた男性(28)
「(いじめが)なくなるどころか激しくなっていくというか。
(握手をすれば)これまでの罪は問われないだろうと。
(いじめる側にとっては)免罪符という言葉のとおりだと思う。」

「仲直りの握手」が引き起こす問題。
取材のきっかけは、去年(2018年)仙台市で起きた母親と娘の心中事件でした。
娘はいじめを訴えていました。

母親が残した手記には、いじめの詳細や学校側とのやりとりが克明に記されていました。
中でも目に止まったのは、「仲直りの握手」についてです。

この取材を特集したところ、多くの声が寄せられました。
意外だったのは、全国各地、20代から50代と幅広い年代が同じ経験をしていたことです。

“仲直りできるはずもなくいじめは続いた。”

“握手して一件落着とされた。”

全国の教育現場が長年にわたり、いじめの拙速な解決方法の1つとして行ってきたことが浮き彫りになりました。

「仲直りの握手」は、いじめの解決にならないばかりか、学校や教師への不信感から、より深刻な心の傷につながるケースもありました。
いじめを受けていた20歳の女性とその母親です。
小学1年生の時、握手をさせられた時の、先生に対する不信感は今も忘れられないといいます。

いじめ受けていた女性
「私は握手したくなかった。
先生と加害者の子は謝ったら終わりという納得があったけど、私は置いてきぼりな気持ちになった。」

形だけの解決で、頼りの先生を信頼できなくなった女性。
いじめもなくならず、学校にも通えなくなったのです。
女性は、その後PTSDと診断され、今も信頼できる人としか外出できない状態だといいます。

いじめ受けていた女性
「(先生が)助けてくれなかったという気持ちは強く思っている。
これから先も一生消えることのないものだと思っている。」

女性の母親も、学校の対応が、娘をより苦しめることになったと振り返ります。

母親
「(娘を)追いつめたのは、学校の“握手の会”。
なんで教育現場は変わろうとしないんだろう。
変わろうと思ってほしい。」

教育現場で指導経験もある専門家は、拙速に握手することの危うさに警鐘を鳴らしています。

早稲田大学教職大学院 遠藤真司客員教授
「握手をするというのは、いじめの指導があって解決に向かっていった時の最終の形であって、いじめた側が反省してきちんと謝る、いじめられた側も許してあげる、納得したときに初めて握手をして意味が出てくると思う。
先を急ぎすぎてしまって納得していないのに、握手をさせてしまうことがいちばん問題。」

一方、いじめ解決の難しさについては、こう指摘します。

早稲田大学教職大学院 遠藤真司客員教授
「いじめの問題は基本的には簡単に解決できるものではない。
聴き取りにも膨大な時間がとられることも確か。
現場の先生にとって時間労力という意味では負担になることは確か。」

仲直りの“握手” 子どもたちに寄り添った解決を

桑子
「今回寄せられた声の中には『握手で仲直りできるのはけんかだ。いじめは一方的に相手を傷つけるものだから、けんかと同じ方法で安易に解決してはいけない』という声もありました。」

有馬
「ではなぜ握手を求めるのか。
取材した記者に話を聞くと、加害者と被害者とをはっきりさせずに、なんとなく穏便にいじめ問題を解決したことにしたい、そんな学校側の考えがあるんじゃないかと話していました。
だとすると、まさに拙速。
いじめを受けている子どもの気持ちに立った解決、ぜひそちらに寄り添って、学校は考えていって欲しいと思います。」

Page Top