2019年9月11日(水)

米同時多発テロから18年 9.11博物館 記憶をどう語り継ぐ

有馬
「およそ3,000人が犠牲となったアメリカの同時多発テロ。
あの日から、きょう(11日)で18年です。」

桑子
「そしてこちらは、テロの現場となったニューヨークの世界貿易センタービル跡地のいまの様子です。
まもなくこの場所で追悼式が始まります。」

桑子
「日本人24人を含む犠牲者1人1人の名前が読み上げられる予定です。
この場所にあるのが、テロの悲劇を後世に伝える『9.11メモリアル博物館』です。
倒壊したビルの一部、そして犠牲になった人々の遺品や遺影などが展示されています。
博物館では、テロから18年が経過する中で記憶をどう伝えていくのかが、課題になっています。
この博物館の副館長が、先週、広島の原爆資料館を訪れました。
今後の展示を考える上でのヒントを探ろうとしたのです。
ことし(2019年)28年ぶりにリニューアルされた原爆資料館で、何を感じたのか。
広島で聞きました。」

9.11から18年 記憶をどう語り継ぐ

クリフォード・チャニンさん。
ニューヨークの同時多発テロの現場に建てられた博物館の副館長です。
あの日から18年。
博物館の展示の総責任者としてテロの後のアメリカの変化を見続けてきました。

桑子
「アメリカの人々の、テロに対する受け止めは?」

9.11メモリアル博物館 クリフォード・チャニン副館長
「アメリカの人々は、テロの事をまだよく覚えている。
それは私たちの国があのテロのせいで戦争に巻き込まれる事になったからだ。
この結果『9.11』の後も多くの人が犠牲になった。
一方で、博物館で働く私にとって驚きは、あの日から18年たったことで『9.11』の記憶のない世代が生まれ育っているこだ。
テロを鮮明に覚えている私たちと若者の間で、テロの衝撃の大きさの違いに驚いている。」

5年前に開館した「9.11メモリアル博物館」。
「同時多発テロの現場で何が起きたのか。」
生々しい痕跡を残す犠牲者の遺品。
3,000人近い遺影を展示し、追悼の意をささげています。

桑子
「今も心に傷を負う遺族がたくさんいる中で、遺族の方が展示をみてどう感じるか意識する?」

9.11メモリアル博物館 クリフォード・チャニン副館長
「リアルでありのまま展示することと、トラウマにならない展示にすることの線引きは難しい。
中には悲劇を伝えるために、あえて見るのもつらい物も入れてほしいと主張する人もいる。
来館者にできるだけ強いインパクトを与えたいと願っているからだ。
両方の意見があるのでバランスが重要。
私たちの展示は、行きすぎにならない程度に、力強い形で悲劇を伝えようと決めている。」

そして、テロの悲劇を伝える上で特に大切な存在が、あの日の生々しい体験を語ることができるボランティアの存在だといいます。

9.11メモリアル博物館 クリフォード・チャニン副館長
「私たちが特に大事にしているのは、“当事者の声”。
博物館にはテロの生還者や遺族、現場に駆けつけた人、近所に住む人たちもいる。
若い世代にとって『9.11』の体験者から直接話を聞くことほど力強いものはない。」

次の世代に記憶を伝えるために、「当事者の声」を大切にしてきた博物館。
チャニンさんは、広島の原爆資料館で確かめたいことがありました。
広島では被爆者がみずからの体験を語ってきましたが、その平均年齢は83歳を超え、あの日のことを語ることができる人が少なくなっています。

そうした中で、どのようにして若い世代に戦争の記憶を伝えようとしているのか。
今年28年ぶりにリニューアルされた資料館の姿から、ヒントを探ろうとしたのです。

新たに展示された被爆者の遺品や写真。
資料館では、そのひとつひとつのエピソードを調査し、展示していました。
戦争を知らない世代にも、遺品に宿る物語を通じて、あの日を追体験できるようにしたのです。

9.11メモリアル博物館 クリフォード・チャニン副館長
「新たな展示は、原爆で何が起きたか、そして人間への影響の大きさを強く訴えている。
原爆資料館の展示には、一見すると日常生活の中にあるありふれた物もある。
しかし、その背景を知り犠牲者にとって重要なものだと分かると、全く印象が変わる。
資料館では背後に物語の広がる遺品を集め、来館者の心に衝撃を残していたのが印象的だった。」

原爆投下から74年。
戦争の記憶を伝え続けてきた原爆資料館。
その経験は、将来アメリカでも、テロを知る世代が少なくなったときに生きてくると考えています。

9.11メモリアル博物館 クリフォード・チャニン副館長
「博物館はみな、同じ課題を抱えている。
『過去をどうとらえ、現代にどう提示し、未来にどう伝えるか?』。
原爆資料館は私たちが経験したことのない変更を重ねてきた。
それは何か、学ばなければならない。
原爆資料館がこれまで伝えてきた経験は価値のあるものだ。」

桑子
「広島は74年たっても、『戦争は終わっていない』と言う。
これから博物館はさらに変化続ける?」

9.11メモリアル博物館 クリフォード・チャニン副館長
「ニューヨークや広島の博物館は“生き物”。
時代と共に新たな情報・見方・疑問も出てくる。
広島のような戦争を伝える博物館の果たすべき責務は、過去の歴史に忠実であり敬意を払い、どのような時代となっても“いま”を生きる人たちに単に歴史ではなく、なぜ今“過去の悲劇”を知ることが重要かを理解できるようにすることだ。」

9.11から18年 博物館 記憶をどう語り継ぐ

有馬
「博物館は『生き物』という言葉、とても印象的でしたね。
単に史実を伝えるだけではなくて、その意味がわかるように、博物館が変わっていかなければいけない、という話。
伝えることの『覚悟』のようなものを感じました。」

桑子
「あの日起きた出来事は変わらないですけれども、時は流れて知らない世代が増えます。
しかも、時代の空気は変わっていきます。
いまで言うと、世界が内向きになって、分断が広がっている印象もあります。
そんな中でどう歴史の意味を伝えるのか。
博物館に求められる役割はますます大きくなるな、と感じました。」

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