2019年9月19日(木)

原発事故 無罪判決 遺族の思い かなわず

有馬
「東京電力の旧経営陣の刑事責任が問われた裁判。
勝俣元会長に、無罪。
武黒元副社長に、無罪。
そして、武藤元副社長にも、無罪。
3人全員に『無罪』が言い渡されました。」


「今回の裁判は、『強制起訴』という異例の展開をたどりましたが、司法に託した遺族の思いはかないませんでした。」

原発事故 無罪判決 東電旧経営陣の責任認めず

硬い表情でテレビを見つめる女性。
保延ミツ子さんです。
夫の欣司さんは、原発事故で過酷な避難を強いられ、亡くなりました。
あの日から8年半。

夫を過酷な避難で亡くす 保延ミツ子さん
「やっぱりな。」

「罪を償ってほしい」。
その思いは届きませんでした。

夫を過酷な避難で亡くす 保延ミツ子さん
「どうすることもできない。
残念というよりほかに、言葉で言い表すことができない。」

「とんでもない判決を出しました。」

判決直後の裁判所前。

「全員が無罪という判決です。」

裁判所前には原発事故で避難を余儀なくされている人などが集まり、憤りの声をあげました。

新潟県に避難している女性
「とても悔しい。」

北海道に避難している男性
「腹の底から怒りを感じている。」

判決が出される1時間ほど前、裁判所に入った東京電力の旧経営陣3人。
福島県の入院患者など44人を死亡させたなどとして、業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴されました。

世界最悪レベルの原発事故をめぐる東京電力・旧経営陣の刑事責任。
その追及は、遺族や被害者たちの強い思いを受けて異例の展開をたどりました。

きっかけは、福島県の住民などによる告訴や告発。
東京地検はこれを不起訴としました。

住民グループから申し立てを受けた検察審査会は、2度にわたり「起訴すべき」と議決したことから、3人は業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴され、刑事裁判が開かれることになったのです。

裁判の最大の争点。
それは、原発事故を引き起こすような巨大津波を予測できたか。
そして、国が平成14年に公表した巨大地震の予測=長期評価に基づいて津波対策をとっていれば、事故を防ぐことができたか、も焦点となりました。

検察官役の指定弁護士は、禁錮5年を求刑したのに対し、東京電力の旧経営陣3人はいずれも無罪を主張していました。

なぜ、無罪判決となったのか。

きょう(19日)の判決で東京地裁の永渕健一裁判長は、大きな争点となった巨大津波の発生を予測できたかについて、「予測できる可能性がまったくなかったとは言いがたい。
しかし、原発の運転を停止する義務を課すほど、予測できる可能性があったとは認められない」と指摘しました。

また、国の巨大地震の予測=長期評価に基づいて津波対策をとっていれば、事故を防げたかどうかについては、「当時、原発の安全対策を考えるのにあたって取り入れるべき知見だという評価を受けていたわけではない」と指摘しました。

その上で、「当時の法令上の規制や国の審査は、絶対的な安全性の確保までを前提としておらず、3人が責任を伴う立場にあったからといって刑事責任を負うことにはならない」と結論づけました。

判決を受けて、旧経営陣3人はコメントを発表しました。
このうち、勝俣恒久元会長(79)は、「福島第一原子力発電所の事故により多大な迷惑をおかけした社会の皆様に対し、東京電力の社長・会長を務めていた者として、大変申し訳なく、改めてお詫び申し上げます」としています。

判決に、福島の人たちは。

福島第一原発が立地する大熊町の住民
「人災だ。
納得いかない。
まだ家近くにあるけど帰れない。」

福島浪江町から避難
「人生狂わせておいて責任がない、無罪、そんなのありえるはずがない。
少しでも(対策を)取っていればこんなに大きな事故は起きなかったはず。
責任はきちんと取ってもらいたい。」

双葉病院から避難余儀なくされた父親を亡くす 菅野正克さん
「どなたが責任をとってくれるのか。
きょうの判決なんか受け入れられる判決ではない。
法の壁、越えられない壁があったのか。
こんなばかげた判決を許していたら。
許しがたい。」

検察官役の指定弁護士は、判決をどのように受けとめたのか。

検察官役の指定弁護士 石田省三郎弁護士
「国の原子力行政を忖度した判決である、そういうふうに言わざるをえない。
絶対的な安全性まで求められていない、そういう判断はありえないと思う。
万が一でも起こってはいけないという具体的な発想があれば、あのような判決にはならない。」

一方、専門家は。

過失の刑事責任に詳しい 明治大学法科大学院 大塚裕史教授
「裁判所の従来の判例の考え方の枠組みに沿ったもの。
(原発の)危険性を考慮して、少し従来の枠組みとは違う考え方をとって、有罪という判断を期待していたむきもあるかもしれないが、人を刑罰を使って処罰するという観点に立った時に、この事案だから特別扱いをするということはできない、というのが裁判所の考え方。」

夫を亡くした保延ミツ子さんは、判決を聞いたあと。

夫を過酷な避難で亡くす 保延ミツ子さん
「裁判いま終わった。
お偉い方3人みんな無罪になって。
悔しいよな、じいちゃん。」

夫を過酷な避難で亡くす 保延ミツ子さん
「誰かの責任ではあるわけ。
かわいそうな亡くなり方をした。
双葉病院だけでなく、亡くなった方が大勢いる。
どうすることもできないから、諦めるよりしょうがない。」


「検察官役の指定弁護士は、控訴するか、今後、検討していくということです。」

有馬
「今回、旧経営陣の刑事責任はないとされたわけですけれども、国会や政府などの事故調査で、東京電力の対応は厳しく批判されています。
万一、事故を起こした場合、取り返しのつかない、甚大な被害があると言うことを、肝に銘じてもらわなければなりません。」

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