2019年9月27日(金)

医療費の抑制 ターゲットは…


「国民1人あたりの医療費、33万7,000円です。
きのう(26日)、国が発表しました。
過去最高になっています。
これを全体でみますと、42兆6千億円。」

有馬
「ここにムダがあるのではないかと、医療現場で検証が始まりました。
ターゲットは薬です。」

“過剰投薬”の実態は 医療現場で検証始まる

63歳の斉藤昭夫さん。
すい臓がんのステージ4と診断され、痛みを取り除く緩和ケアを受けています。
毎日服用している薬は、抗がん剤のほか痛み止め、胃薬、下剤などあわせて17種類。

斉藤昭夫さん
「(薬が)多いのは確かだよね。
体が言うことをきかないから、(薬が)だんだん増えていく。」

薬が増える要因には、医療現場が抱えてきた問題も指摘されています。

たとえば、患者が複数の診療科の医師に診てもらう場合、それぞれの担当医から同じような薬を処方される「重複投与」。

さらに、症状が改善したにも関わらず、投薬が見直されないまま続けられている「漫然投与」も少なくないとみられています。
斉藤さんが入院している病院では、2年前から医師に任せがちだった薬の処方に薬剤師が積極的に関わり、投薬を定期的に見直しています。

医師
「現時点では自覚症状もないので。」

薬剤師
「(胃薬は)段階的に1錠に減らしていくので、いったん終了ということでいいですか?」

医師
「全然問題ないと思います。」

斉藤さんはこの日の見直しの結果、症状が改善しているため、3つの薬を減らすことになりました。

斉藤昭夫さん
「すごいね。
(薬が)減ってるもん。」

薬剤師
「これで様子を見て、よければ段階的に減らすこともできると思います。」

がん患者の緩和ケアにおける薬の投与について薬剤師に聞いたアンケートでは、重複投与や漫然投与などの、不適切な処方があるという回答が75.5%に上っています。
調査を行った学会は…。

日本緩和医療薬学会 塩川満代表理事
「患者は、薬によって自分は症状が良くなっている、守られていると思いがちだが、十何種類も飲んでいると、何が大切な薬で大切な薬でないかが、患者自体も分からなくなってしまう。
本当にそれが適切で適正な薬かというのを、見ていく時代になってきている。」

“減薬で患者にメリット” 認知症 現場の模索

薬を適切に減らすことで、患者にもメリットがあることを実証しようという取り組みも始まっています。
都内で、およそ50の高齢者施設を運営するこの企業。
半年前から東京大学と連携し、認知症の入居者への薬の処方を見直してきました。

施設運営会社「らいふ」 小林司取締役
「この方、入居当初は大声・暴言・はいかい、ほかの入居者の部屋に入っていく。
大変でしたね。」

入居した当初、食事のたびに18錠の薬を服用していた女性です。
医師と薬剤師が薬を3錠に減らしたところ、はいかいや暴言がなくなったといいます。
主治医は、薬の副作用がなくなったためだとみています。

施設運営会社「らいふ」 小林司取締役
「穏やかに車いすに座って話している。
本当に、ご家族もわれわれもびっくり。」

施設では、全体のおよそ6割の患者で投薬を見直すことができるとみて、効果の検証を進めています。
こうした見直しが進めば、年間1,000万円ほどの薬剤費を削減できると試算しています。

施設運営会社「らいふ」 小林司取締役
「高齢者にとってみると薬を飲むことに対する肉体的・精神的負担が、少しは減ったのではないか。
一方、ご家族にしてみると薬代が少し軽減・安くなる。
薬を減らすということが、結果として大きな効果になりつつある。」

問われる医療費抑制 患者の納得を大事に…

こうした取り組みについて、医療経済に詳しい専門家は…。

医療経済に詳しい 東京大学 薬学部 五十嵐中客員准教授
「今の医療費の使い方を、何とかしないといけないというのは当然ある。
医療の質を保ちつつも安くできた。
薬を見直すことができた。
そういうデータを示せれば、医療者・患者も納得して薬の見直しを受け入れてもらえるのでは。」

有馬
「社会保障をめぐる議論は、まさにこれから本格化するわけですけれども、医療費の削減ありき、ではないですよね。
患者に寄り添った抑制のあり方を考えてもらいたいと思います。」

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