2019年10月22日(火)

日本と関係深いオランダ国王/広く慕われるスウェーデン王室

有馬
「おことばでも繰り返し『世界の平和』を願われた天皇陛下、外国との結びつきを本当に大切にされてきました。
こちら、平成になってからお立ち寄りも含めて訪問された国々です。」

桑子
「その数、世界41か国にのぼります。
ヨーロッパをはじめ、アジア、南北アメリカなど。
各国の王室とも交流を深められてきました。
海外の王室も世代交代が進み、この10年あまりの間にはオランダのウィレム・アレキサンダー国王、ベルギーのフィリップ国王、そして、スペインのフェリペ6世。
さらに、アジアではタイのワチラロンコン国王、ブータンのワンチュク国王らが即位しています。
ヨーロッパの3国王は天皇陛下と同じ50代の国王です。
中でも、天皇陛下が『ある共通のテーマ』を通じて関係を深められてきたのがオランダ国王です。」

天皇陛下とオランダ国王 深まる交流の礎は

星麻琴リポーター
「アムステルダムから車で北へおよそ1時間のところにやってきました。
私が来ているのは、全長およそ32キロの『締切大堤防』と呼ばれる堤防です。」

国土の4分の1が海抜0メートル以下のオランダ。
90年前、荒波から沿岸部を守るためにつくられた巨大な堤防です。
そこに記されているのは。

星リポーター
「“水との闘いは人類のための闘い”と書かれています。」

こうした歴史的背景から水に強く関心を寄せたのが、ウィレム・アレキサンダー国王です。
皇太子時代には、国連で水問題の諮問委員会の議長に就任。
多くの国を訪問し、取り組みを進めてきました。

ウィレム・アレキサンダー国王
「オランダは千年以上にわたって治水を行ってきた歴史があり、洪水対策が必要なあらゆる国と協力している。」

以前、国王の教師を務めた研究者は、水問題の専門家としての国王について、こう話します。

デルフト工科大学 名誉教授 ヒューベルト・サフェナイェ氏
「彼のアフリカ南部での『水ネットワーク』設立支援が最も誇らしい。
世界的に大きな影響を与えた。」

ともに歩む「水問題」

そのオランダ国王と同じく天皇陛下もまた、水をめぐる問題に長年、取り組まれてきました。
「水問題」という共通項が日本の皇室とオランダ王室をつないでいます。

大学時代、「水上交通」をテーマに水にまつわる研究を始められた天皇陛下。
平成15年に京都で開かれた「世界水フォーラム」。
各国の専門家と交流する中で、水をめぐる問題が環境や衛生など多方面にわたることを知り、この問題に関わり続けたいと考えられるようになりました。
平成19年には、国連の水問題の諮問委員会の名誉総裁に就任されました。

「水災害への備えは、国際社会が緊急に取り組むべき最重要課題だ。」

天皇陛下とオランダ国王。
世界の水問題という共通の課題への取り組みを通じ、交流はより深まっていきました。
国土交通省で水害対策などを手がけた廣木謙三さん。
天皇陛下とオランダ国王の水問題への取り組みを近くで見てきました。

政策研究大学院大学 廣木謙三教授
「オランダの国王陛下、天皇陛下と一緒に皇太子時代に10年近く、世界の水の大切さ・行動を呼びかけてきた、ある意味、仕事仲間。
そういう関係があるからこそ、今の天皇陛下の密なネットワークができていると思う。」

オランダは、ヨーロッパの中でも、日本と長い歴史的関係を持ち、今年(2019年)は通商が始まって410年を迎えています。
その関係が、さらに深まることを期待しているという人を訪ねました。
ヨーリス・ファン・ニスペンさん。
日本の伝統文化に魅了され、小学校の古い校舎を買い取って華道や茶の湯、古武術などを教える拠点を整備しました。

日本の皇室とオランダの王室が、現代的な面でも結びつきを強めていくことを望んでいます。

ヨーリス・ファン・ニスペンさん
「新しい天皇には、日本の現代的な面にも伝統的な面にも深い理解を示してほしい。
次の時代も両国の関係が良好であり続けると望む。」

天皇陛下とオランダ国王

有馬
「水問題という共通の課題があるわけなんですけれども、君塚さん、天皇陛下とオランダ国王の関係をどうご覧になるかなんですけれども、かつてわだかまりがオランダ側にはありましたよね?」

関東学院大学教授 君塚直隆さん
「江戸時代から日本とオランダ、いわゆる日蘭関係はずっと続いてきた。
それが一時的に悪化したのが第二次世界大戦です。
このときオランダ領、現在のインドネシアに日本軍が攻めて、そこで捕虜虐待問題と呼ばれる問題がありました。
これは戦後、オランダでかなりのしこりとして残りました。
昭和天皇に対するアレルギーというものがオランダ国内でずっと長く続いたんですけれども、1953年ぐらいから上皇陛下が、63年にはベアトリクス女王がそれぞれ国賓対応でお互いの国を行くようになったけれども、やっぱりまだだめ。
1971年に昭和天皇がヨーロッパ歴訪、このときも国賓としてはオランダに迎えられない、お立ち寄り。
しかも、そのときアムステルダムで魔法瓶を投げつけられて、陛下の乗った車のフロントガラスを割るなんていう状況でした。
1989年2月24日の昭和天皇の大喪の礼、このときも結局お隣のベルギーやルクセンブルクはそれぞれ国王夫妻、あるいは大公夫妻が参列されたんですが、オランダは駐日大使だけ。
その翌年の上皇陛下の即位の礼のときも結局、女王はいらっしゃらないという状況だった。
これがようやくベアトリクス女王、そして今の上皇陛下の時代になって、ようやく国賓として訪問できるようになった。
といっても、お2人はまだ戦争世代です。
ですから、やっぱり国内のいろいろなしこりというものを象徴しないといけない。
そういった面では、戦後世代である今の天皇陛下とウィレム・アレキサンダー国王、このお2人はより自由に、より発展的に未来に対して関係を築ける。
そんなときにちょうど水という共通の問題で重なれた。
プラスそれぞれの奥方同士、雅子皇后、それからマキシマ王妃。
雅子皇后が皇太子妃だった時代に、いろいろと苦労をされた。
ウィレム・アレキサンダー皇太子と結婚されるときのマキシマ王妃も大変でした。
お互いの心がよくわかる。
それが2013年、ウィレム・アレキサンダー国王夫妻の即位式のときに11年ぶりについに雅子皇后が行く。
そのときに1本の電話があったらしいです。
本当は最初、逡巡されていたと、久しぶりの海外ですから。
ところが、マキシマ王妃からの電話で『是非来てほしい』と。
それで背中を押されて行かれた。
翌年、今度、国王夫妻が国賓として日本に来日されたとき、これまた11年ぶりに雅子皇后が宮中晩さん会に出られる。
このお2人の関係、男性同士、女性同士の関係もこうやって結びついて蓄積されて、それが本日の天皇皇后両陛下の晴れの日にご夫妻でオランダからいらしてくださると。
ようやく普通の関係になれたんじゃないかと思います。」

天皇陛下 “水”研究への思い

桑子
「話を聞くと感慨深くなりますね。
天皇陛下は特に水に対して強い思いをもってらっしゃいますけど、山口さん、どうして水に対する強い思いがおありなんでしょうか?」

山口満記者(社会部)
「天皇陛下は大学時代、『水上交通』をテーマに水をめぐる研究を始められたんですけれども、その陛下の研究に大きな影響を与える経験がありました。
昭和62年に天皇陛下がネパールを訪問された際、ご自身で撮影された写真です。

そこでは多くの女性が、水を得るための労働から解放されず、地位の向上を阻まれていました。
また、子どもたちも水くみに時間をとられて学校に通うことができないなど、開発途上国の現実を目の当たりにされたんです。
天皇陛下は、水が貧困や社会的弱者、地球環境の問題など、国際社会が抱えるさまざまな課題につながっていると考えて、研究の幅を広げられてきたんです。」

天皇陛下とオランダ国王

有馬
「磯田さん、まさに水問題は国際課題ですよね。
これに共通して取り組まれるお2人の関係、どうご覧になりますか?」

歴史学者 磯田道史さん
「世代を感じます。
天皇陛下もオランダ国王も、親世代、祖父世代は国と国、人間と人間が争う戦争の世代を生きたわけです。
その子孫たちは、今の時代、21世紀はもっと違う課題に我々は直面しています。
例えば、水災害とか環境問題だとか、こういう自然相手のものは国境を越えて我々を襲ってくる人類共通の問題です。
その共通の課題を王室同士が手を携えて取り組む。
21世紀型の王室、帝室の姿があるような気がします。
国の枠を越えてということがとても大事なところで、水問題だとか災害、あるいはウイルスだとか細菌とか、そういったことまで国境を越えてきますから、こういう問題について王室が先取りするかたちでやってくださっているということを見ているんじゃないですかね。」

桑子
「続いては、スウェーデンの王室をご覧いただきます。
国民の身近な課題に取り組むことで広く慕われています。」

スウェーデンで感じた“国民と共にある王室”

スウェーデンの首都で、北欧最大の都市、ストックホルム。

星リポーター
「王宮の前のみやげ物店なんですが、ここには王室の皆さんのポストカードが売られているんです。」

街のあちこちに、王室を感じられる場所がありました。
「王の通り」に「王の公園」。
大勢の市民が買い物を楽しむこの場所は、「女王の通り」と名づけられています。

星リポーター
「王室についてどう思う?」

市民
「大好きです。」

市民
「すばらしい人たちだと思います。
家族のように感じるわ。」

市民
「王室のメンバーを街でよく見かけます。」

市民に広く親しまれている創業96年のチョコレート店です。
王室の皆さんが店に直接、買い求めに訪れることもあるそうです。

星リポーター
「国王はチョコがお好きですか?」

王室御用達 チョコレート店 リンダ・アーデベックさん
「もちろん、みんな好きです。」

星リポーター
「お気に入りをこっそり教えてくれませんか?」

王室御用達 チョコレート店 リンダ・アーデベックさん
「ごめんなさい、言えないんです。」

“みずからの経験を共有” スウェーデン 王室の模索

王室の中でも人気の高い、シルビア王妃。
自身の生い立ちや経験、人々に寄り添い続ける姿が国民から広く支持されています。

スウェーデン シルビア王妃
「人と触れ合う上で自然体で自分らしくありたいのです。」

王室の結婚相手は貴族から選ばれるのが当然だった時代、ドイツの一般家庭から王室に入ったシルビア王妃。
結婚式の前夜祭では、国民に人気のポップグループ「ABBA」が初めて、「ダンシング・クイーン」を披露、王妃に贈りました。
結婚後、王妃が熱心に取り組んできたのが慈善活動です。

星リポーター
「ストックホルムの郊外に来ています。
『シルビアホーム』とシルビア王妃のお名前が書かれているんです。」

活動を代表する場所を訪ねました。
王妃の発案で設立された認知症患者のデイケア施設です。

シルビアホーム CEO ヴィルヘルミーナ・ホフマン医師
「王妃は認知症のケアに積極的で、ここにも来られます。」

母親が認知症になった経験からこの施設を作った王妃。
みずから頻繁に施設を訪れているといいます。

シルビアホーム CEO ヴィルヘルミーナ・ホフマン医師
「王妃の立場にある人が(家族の)病気を公にすることはなかった。
でも王妃は心から誠実にそれをなさった。
王妃の活動はとても大切で、多くの扉が開かれた。」

シルビア王妃の思いは、次の世代にも引き継がれています。
一般人の夫と結婚した、長女、ビクトリア皇太子。
夫妻で熱心に取り組んでいるのが、子どもの健康や孤立をなくすための活動です。
結婚を機に財団を設立しました。
子どもたちに運動や食事の大切さを伝えようと絵本も作りました。

夫妻と共に活動する マリー・ハーディングさん
「夫妻はさまざまな問題に光をあて関心を集めてくれる、特別な存在です。」

ビクトリア皇太子は、若いころに摂食障害を患っていたことを公表しています。
40歳を前にしたインタビューでは、同じ立場の人たちへ、こう、メッセージを送りました。

スウェーデン ビクトリア皇太子
「私にはとても複雑な悩みだったので、支援を受けることが大事だった。
悩みを話すことを怖がらず、我慢しないで自分が元気になれると信じてほしい。」

王室メンバーを取材してきたジャーナリストは、スウェーデン王室は自分たちの役割をうまく見いだしながら、今の時代に適応していると指摘します。

王室ジャーナリスト エバ・フォン・シドウさん
「皇太子はかつての摂食障害を、王妃は認知症の家系であることと明かし、前向きな活動につなげている。
常に王室の一員としての新たな役割を見いだしている。」

天皇陛下 即位を宣言

桑子
「みずからの経験や生きざまをありのまま語ってらっしゃって、国民と近い感じがしますけれど、スウェーデンの王室がこうした取り組みをされるのはどうしてなんでしょうか?」

関東学院大学教授 君塚直隆さん
「晩さん会で雅子皇后とお話されていたカール16世グスタフの時代、ちょうどスウェーデンで憲法改正があり、王様の権限がだいぶ弱まった。
その分、一般の人たちにどんどん寄り添って、絵はがきなんかも売っていましたが、ああいうスタイルが確立された。
もう1つは、外国人であるシルビア王妃が、特に王侯貴族の出身ではなくて、一般のご家庭から入って、一般の庶民、国民にどういうことが必要か。
先ほど認知症の方のホームの話がありましたが、今からちょうど20年前、1999年には一方で児童に対する性的虐待だとか、そういったものを阻止するような団体、世界子ども財団を作っているんです。
昨年(2018年)10月9日に皇后陛下が誕生日にコメントを寄せられた。
皇后陛下もそういった子どもの問題、貧困、虐待といったものに非常に関心を持たれている。
シルビア王妃の財団はすぐにヨーロッパ中の女王、あるいは王妃、皇太子たちにどんどん広がって、今、世界的な女性王族ネットワークもできています。
そういったところに新しい皇后陛下はコミットできるんじゃないかと思います。」

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