2019年10月24日(木)

“車上生活”知られざる実態

桑子
「今年(2019年)8月にお伝えした、このニュース。」

「家族3人で車で生活していた58歳の女が、死体遺棄の疑いで逮捕されました。」

桑子
「母親の遺体を車に放置したとして逮捕された58歳の女性。
家族と一緒に1年にわたって車で生活していました。」

有馬
「実は、この家族のほかにも全国各地で、車の中で生活を送る人たちが少なくないことが分かってきました。
その実態を取材しました。」

“車上生活”知られざる実態 夜の「道の駅」で…

車上生活する人たちがいるという情報を聞いて、東北地方へ向かいました。
宮城県石巻市にある道の駅。
コンビニやガソリンスタンドに加え、日帰り温泉や無料の休憩室も備えています。
夜9時にすべての店が閉店したあとも、道の駅の駐車場には10台以上の車が…。
車内で寝泊まりする人たちです。

なぜここにとどまるのか、たずねました。

「今日、このあとは?」

女性
「車中泊ですけど。」

車の中にいたのは、若い女性。

女性
「(会社の寮を)事情があって出なきゃいけなくて、家がない。」

新しい住まいが見つかるまで、車で生活しながら、職場に通うと言います。

「今日はこちらにずっと?」

60代男性
「そう、ずっといる。」

この60代の男性は、地域の特産品を仕入れ、スーパーなどで販売する仕事をしていると話してくれました。
案内された車内には、布団が敷かれ、ティッシュなどの生活用品も。

男性は収入が乏しく、家賃を払えないため、売り上げをガソリン代や食費にあてながら、車上生活を続けてきたといいます。

60代男性
「だんだん売り上げが落ちてくれば、なるべく経費はかけられない。
ホテルに泊まっていたら生活していけなくなる。
誰だって車の中でなんか寝たくない。」

支援団体の危機感

なぜ、多くの人たちが車上生活を送っているのか。
こうした人たちを支援しているという静岡県内のNPO法人をたずねました。
事務局長の鈴木和樹さんは、最近、支援対象となる車上生活者が増えていると感じています。
仕事や住まいを失った人たちが、生活保護ぎりぎりのところで踏みとどまり、道の駅などに集まるようになったのではないかと言います。

NPO法人POPOLO事務局長 鈴木和樹さん
「派遣切りで寮を追い出されたりとか、仕事を失うことがきっかけのひとつとなるのが一番多い。
車中泊・車上生活の方は生活保護を受けたくないから、そこで暮らすという人が多い。」

鈴木さんたちが定期的に行っている道の駅での夜回り。
ここにも店が閉まったあと車の中で食事を取ったり、トイレで歯を磨いたりする人たちの姿が…。

NPO法人POPOLO事務局長 鈴木和樹さん
「家がないとか仕事が続かないとか、何でも相談やっているので。」

チラシや声かけによって支援につなげようとしていますが、路上生活者と違って移動してしまうため、実態把握すら難しいといいます。

NPO法人POPOLO事務局長 鈴木和樹さん
「ある日突然いなくなってしまった、もう会うことができない状態。
別の県に行ってまた支援員が回ったとしても、またすぐ行ってしまうから現状がつかみにくい。
街なかや駅にいるホームレスと違い、見えにくい状況ではある。」

台風が迫る中も…

支援団体が夜回りをしている静岡県内の道の駅です。
台風19号が近づく中、1人車中にとどまっている男性に出会いました。

「今日、来たんですか?」

男性
「いや、だいぶ前です。
1か月くらい前じゃないかな。」

建設業の仕事をしていた60代の男性。
今年8月に派遣切りにあい、住んでいた寮も追い出され、1か月ほど前から車上生活を送っているといいます。
ここで孤立しているのは危険だと呼びかけましたが、応じてくれません。

「ここ(台風が)上陸しますよ。」

男性
「別にここにいたって死んじゃえば分からないよ。」

風と雨が強まってきたため、近くの避難所に移動するよう何度も勧めましたが、男性は動こうとはしませんでした。

翌朝、道の駅で男性に会うことができました。

男性
「雨がすごかった。
ほとんど寝てない。」

なぜ、車上生活を続けるのか。
私たちの問いかけに男性は多くを語りませんでした。

「また仕事をやりたくなる?」

男性
「ありますよ。
布団で寝たい。
布団で死にたい、やっぱり最期は。
歳だね。」

車に戻った男性は、何度も涙をぬぐっていました。
誰にも頼らず、車の中で暮らす人たちの「見えない貧困」。

「見えない貧困」をどうするか

夜回りを続ける鈴木さんは、定期的に声をかけることで信頼関係を築き、支援につなげたいと考えています。

NPO法人POPOLO事務局長 鈴木和樹さん
「ぎりぎりまで助けてと言わないケースが多いので、私たちに来る時には車のガソリンもつきているとか、本当にぎりぎりの状態で来るので。
早めに声をかけることで、次のところに行く前に助けてと言ってもらえるよう心がけてはいる。」

“車上生活”知られざる実態

桑子
「取材班が出会った多くの人たちが誰にも迷惑をかけたくない、誰にも頼りたくないと車上生活を続けていたということです。」

有馬
「一度つまずくと、なかなか這い上がることができない、という今の社会の孤独が浮き彫りになったようにも感じました。
そして、支援されていた鈴木さんの『問題がつかみにくい、見えにくい』という言葉が心に刺さりました。
まずは実態の把握が必要ではないでしょうか。」

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