さらに本好きのすそ野を広げようと、出版業界が切り札として力を入れているのが、「電子書籍」です。
売り上げは、この7年間で4倍に増加しています。
電子書籍の多くは、スマホやタブレットのアプリに出版社が作品を掲載する仕組みです。
作品が売れるたびに、出版社にはアプリの課金の一部が入ります。
2か月前にサービスを始めたこの会社。
アプリには現在13の出版社が参加。
読者数はすでに20万人を突破しました。
出版社
「ユーザーの中で、どれくらい話を読み進めるためにお金を払っているか。」
売れる作品を模索する中、電子書籍ならではの新しい形態も生み出されました。
スマートフォンで読みやすいよう文章は横書きにし、一文は短くします。
1話3000文字程度と短く分割し、1話ごと販売。
さらに次がどうしても読みたくなるように、1話の終わり方にこだわります。
新潮社 文庫出版部 髙橋裕介さん
「投稿作品を見ると、紙の本とは書き方も違う。
これが広がっていったら、小説も変わっていく。」
電子書籍は、作家の作風にも変化を及ぼしています。
このアプリに作品を提供する、中村航さんです。
電子書籍では、ダイレクトに読者の声が届くため、従来の小説にはない新しい手法に挑戦できるのも魅力だと考えています。
作家 中村航さん
「読者の声を手がかりに、小説の展開も変わっていく。
読者を編集者の代わりに信じて話を作る書き方も、ウェブアプリとかだったらできる。」
電子書籍は、新たな効果も生んでいます。
紀伊国屋書店 新宿本店 吉野裕司次長
「こちらの棚、ほぼ全部そうです。」
電子書籍で人気の作品の多くは、紙の書籍として販売したところ、売り上げが伸びているのです。
気に入った作品は手元に置いておきたいという読者のニーズをうまく掘り起こしたのです。
紀伊国屋書店 新宿本店 吉野裕司次長
「新しいお客さんをウェブからリアルの店舗に誘導できるので、ぜひつなげていきたい。
(こうしたジャンルが)出版の一つの柱となっていけばいい。」
作家の中村さんは、電子書籍は出版業界を立て直すチャンスになると期待を寄せています。
作家 中村航さん
「“活字離れ”と言っても文字離れはしていなくて、昔よりテキストに触れている時間は増えている。
小説ってすごくおもしろいと思う。
それをどうやって伝えていくかを考え続けていきたい。」
桑子
「私の周りでも電子書籍を読んでいる人が増えてきました。
有馬さんはいかがですか?」
有馬
「断然、紙がいいですねえ…。」
桑子
「実は、電子書籍がすでに一つのジャンルとして定着している国が、韓国なんです。
ウェブ上なら小説家になりたいという人が、20万人に上るとも言われています。
素人でも気軽にブログ感覚で掲載できる点が人気のようです。」
有馬
「活字と紙の味わいが大好きという私のような読み手も、変わっていくんでしょうか。」