2019年12月3日(火)

NATO表面化する軋轢 直面する課題

桑子
「いまからちょうど30年前、アメリカとソビエトの首脳が東西冷戦の終結を宣言した、マルタ会談。
世界が平和の道へと踏み出したかに見えた瞬間でした。
その後、ヨーロッパを防衛し、その安定につなげてきたのがアメリカが主導する軍事同盟、NATOです。」

有馬
「そのNATOの行方を決める首脳会議が、日本時間あす(4日)始まります。
しかし、“NATOは脳死状態”といわれるほど、加盟国の軋轢が表面化しています。」

冷戦終結から30年 “NATO脳死” 直面する課題

日本時間あすから、NATOの首脳会議が始まるロンドン。
加盟29か国の首脳らが集まります。
世界がその言動に注目するのが、アメリカのトランプ大統領。
NATOを率いる立場でありながら、NATOを繰り返し批判してきました。

トランプ大統領
「負担は公平でなければならない。」

「アメリカの負担はあまりにも大きい。」

「われわれにとって平等ではない。」

アメリカが支出する国防費の額に対し、各国の支出額が著しく少ないと主張。
増額を要求しています。
さらにはNATOの必要性に疑問を呈し、離脱が可能か政府高官らに何度も問い合わせたと伝えられるなど、アメリカの“NATO離れ”が指摘されています。
首脳会議を前に、ストルテンベルグ事務総長と会談した際には…。

トランプ大統領
「NATOの役割はすばらしいが、我々にとって不公平。
ひどく大きな出費をしている。」

ストルテンベルグ事務総長
「NATOは世界の変化に対応し、成功してきた。
そして、今も取り組んでいる。」

東西冷戦の終結から30年。
NATOはこの間、かつてソビエトの影響下にあった国々を次々に取り込み、東方に拡大。
アメリカ主導の、国際秩序の基盤となってきました。

しかし、この「東方拡大」が「新たな冷戦」へとつながりました。
その象徴となったのが、ウクライナを巡る米ロの対立です。
NATOがウクライナとの関係強化を進めたのに対し、ロシアは5年前、南部のクリミアを併合。
背景には、NATOに対するプーチン大統領の強い警戒感があったとされ、NATO拡大はロシアの封じ込めだと、繰り返し懸念を表明してきました。

ロシア プーチン大統領
「NATOが拡大し、ロシア国境に近づいていることを警戒している。
NATOはアメリカの外交の道具だ。」

いま、米ロの関係は冷戦の終結後、最悪と言われ、双方が核戦力の増強を図り軍拡競争が再燃しています。

こうした中、加盟国フランスのマクロン大統領の発言が波紋を呼びました。

“NATOは脳死状態に陥っている。”

念頭にあったのが、加盟国トルコがNATOの反対を押し切って強行した、隣国シリアでの軍事作戦です。

懸念を強めるヨーロッパに対し、トランプ大統領ひとりがこれを事実上、黙認。
アメリカとヨーロッパの溝が、ここでも露呈しました。
さらに、マクロン大統領の“脳死”発言にエルドアン大統領が反発。
非難の応酬となりました。

トルコ エルドアン大統領
「君こそ、自分が脳死していないか調べてもらえ。」

そのトルコは今、NATOと対立するロシアに接近。
最新鋭ミサイルシステム、「S400」の導入に踏み切りました。
この動きにアメリカが激しく反発。
各国と進めてきた最新鋭ステルス戦闘機F35の開発計画から、トルコを排除すると決定しました。
NATO内部の軋轢と加盟国のロシア接近。
NATOは今、根底から揺れています。

NATO 直面する課題

有馬
「アメリカ大統領が“離脱”という言葉を口にする。
フランス大統領が“脳死状態だ”と表現する。
このような状態で「新冷戦」と呼ばれる事態にNATOは対処できるのかと、こう思ってしまいます。
中継で聞きます。
ロンドンで取材している、工藤記者です。
冷戦の終結から30年、NATOの内部からの綻びがこんなに出てきている中で、再び結束することは可能なのでしょうか?」

工藤祥記者(ブリュッセル支局)
「問題の根は深く、容易ではないというのが現状です。
NATOはこれまでアメリカ、イギリス、フランス、ドイツの4か国が中核を担ってきました。
その軸となるアメリカが内向きの姿勢を強め、さまざまな安全保障上の問題で4か国の間でさえ、認識の共有をはかれていないと指摘されています。
NATOのストルテンベルグ事務総長は、29もの加盟国があって意見の違いがあるのは当然だ、と繰り返し釈明していますが、現実にはこの足並みの乱れでトルコの軍事作戦を止められなかったというわけなのです。
各国の協調が乱れるほど紛争を抑え込む力は弱まり、国際情勢を不安定にさせる、その懸念が現実になったともいえ、NATOは大きな課題に直面しています。」

桑子
「そうしたなかで、NATOの首脳会議があす始まります。
会議の最大の焦点は、ずばり何でしょうか?」

工藤記者
「まずはNATO創設以来の最大の使命といえる、ロシアへの対応です。
5年前の、ロシアによるクリミア併合を止められなかったことは、NATOの大きなトラウマとなっています。
そのロシアは今、アメリカの空白を突くようにして軍事的な存在感を高め、ロシアと接するポーランドやバルト3国といったヨーロッパの国々は警戒感を強めています。
そして今回もう1つ、重要な議題となっているのが中国です。」

工藤記者
「中国はヨーロッパの玄関口となる、バルカン半島の国々や北極圏に巨額の投資をし、影響力の拡大を図っています。
さらに宇宙やサイバー空間、そして最先端技術など地理的な拡大にとどまらない、さまざまな分野で脅威になり得ると、NATOは警戒しているのです。
その中国は今、ロシアと軍事・経済両面で、かつてなく関係を深めています。
NATOが内部に重い課題を抱えるなかで、欧米対中国、ロシアという対立軸もまた浮き彫りになっていまして、国際情勢の行方は不透明さを増しています。」

桑子
「冷戦の終結から30年たって、いまNATOが直面する新たな冷戦というのは、ずいぶん変化しているんですね。」

有馬
「対立軸に中国が加わって、構図はより複雑になりました。
そして対立は宇宙、サイバー、それに5Gの世界と多岐にわたるわけです。
NATOはこの変化に対応できるのでしょうか。
そしてその点は、日本を含む国際社会も問われているように思います。」

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