2020年1月10日(金)

ホームヘルパーがいない!「訪問介護」厳しい実態

有馬
「介護。
厳しい現実を示す数字が明らかになりました。

桑子
「有効求人倍率です。
すべての職種では、1・46倍。
ただ、介護職を見てみると、3・95倍。
つまり、働き手1人をおよそ4つの事業者で奪い合っている状態なんです。
さらに、これをホームヘルパーなどの『訪問介護』に限った場合、13・1倍になっていることがわかった。

有馬
「訪問介護の深刻な人手不足について、現場からの報告です。」

「訪問介護」厳しい現実 ヘルパーが採用できない

東京都内の訪問介護事業所です。
30人ほどのヘルパーで、月1000件あまりに対応しています。

ヘルパーのシフト担当者
「ヘルパーを必要としている方はすごく多いけれど、朝昼夕と大変混み合っているので、どうしても受けられない。」

人手不足を補おうと繰り返し求人を出していますが、チラシを1000枚ポスティングしても、まったく反応がなかったといいます。

限られた時間の中で、多くのことが求められるヘルパー。

ヘルパー
「おはようございます、体調どうですか?」

体調の確認に、食事の準備。
その間に薬の飲み忘れにも気を配らなければなりません。

深刻な人手不足は、事業者の経営にまで影響を及ぼしています。

去年1年間の介護事業者の倒産は、過去最多にならぶ111件。
このうち半数以上が、訪問介護です。

長年頑張っているヘルパーを表彰し、一時金を出すなど、今いる人材に少しでも長く働き続けてもらえるよう工夫をこらしています。

株式会社ウメザワ 熊谷恵津子統括部長
「ヘルパーが高齢化し、世代交代しないといけない中、若手のヘルパー採用が難しいところでは、ほぼみんな同じような問題を抱えているのではないか。」

「訪問介護」厳しい現実 国の政策が影響か

ヘルパー不足は、なぜ歯止めがかからないのか。
専門家からは、国の政策の影響も大きいという指摘があがっています。

例えば、報酬面です。
介護保険制度発足から7年目の2006年に、限られた財源を有効に活用する必要があるとして、訪問介護のうち、比較的軽度の人たちに行うサービスの報酬を引き下げました。

その後も抜本的な報酬の引き上げは行われず、ホームヘルパーの賃金はすべての職種の平均と比べて、ひと月あたり10万円ほど低くなっています。

その一方で、国は「地域包括ケア」を掲げ、できるだけ住み慣れた地域で長く暮らすことを推進。
また、施設の不足から、特別養護老人ホームの入居を原則、重度の要介護者に限定する施策も開始しました。

家で訪問介護を受ける高齢者が増えたのに対して、ヘルパーなどの数が追いついていない状況が続いてきたのです。

ヘルパー不足について業界団体は。

日本在宅介護協会 森信介副会長
「お客様が望む場所・時間帯にサービスを提供することがますます困難になっていくのではないか。
訪問介護の危機は、待ったなしの状況になっている。」

「訪問介護」厳しい現実 暮らしの維持ぎりぎりに

訪問介護の現場では、深刻な事態が起き始めています。

脳梗塞の後遺症で左半身が動かなくなった75歳の女性です。
要介護5ですが、住み慣れた自宅で過ごしたいと1人で暮らしています。

女性
「ヘルパーさんがいると安心感がある。
トイレに行くのでも、ヘルパーさんがいれば何かあってもすぐに声をかけられる。」

この女性の介護プランをつくるケアマネージャーです。
本来は1日3回必要な訪問介護が、ヘルパー不足で今は1日1回確保するのがやっと。
夜間のトイレなどは1人で行わなければなりません。
さらに、訪問介護を受けられない日が出てくる恐れもあるといいます。

ケアマネージャー
「土曜日は本来なら休みの事業所になんとか入ってもらっている。
一番は、夜間帯の安否確認が心配。」

ヘルパーが来られなくなると、特に心配なのが…。
器具を外しての足のケアです。
毎日洗ってもらわないと、皮膚がただれてしまうからです。

女性
「(この先は)不安ですよね。
今のままヘルパーさんにお世話になって暮らしたい。」

「訪問介護」厳しい現実 専門家“大幅な待遇改善を”

訪問介護を担う人たちの平均年齢は、54.3歳。
およそ7割が非正規雇用です。

専門家は、訪問介護を存続させるには、大幅な待遇改善によって社会的に評価される仕組みが必要だと指摘しています。

東洋大学 ライフデザイン学部 早坂聡久准教授
「訪問介護が、労働者から見放されつつあるという危機感を持っている。
介護労働者の価値を高め、インセンティブをつけて、訪問介護員が集まる仕組みが必要。
きちんとした形で修復しないと、いずれ介護サービスが提供できないような大きな問題になってくる。」

「訪問介護」厳しい現実 負担増かサービス縮小か

桑子
「深刻だなと感じた。
訪問介護は肉体的にも大変な仕事。
それに見合った待遇でないと人は集まらないとは思うが、それにはお金が必要…。」

有馬
「そもそもそれを誰が負担するのか、サービスの範囲をどうするのかという難問も出てきますよね。
いまの介護保険制度は、社会全体で担おうと20年前に始まったわけだが、残念ながら抜本的な対策の議論は深まってこなかった。
もう先送りできないですね。」

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